第四話 炎鬼、紅蓮寺焔羅
### 前書き
鳴神雷華が抱えていた過去。
それを知った黒嶺轟羅と星熊勇儀は、鬼王を巡る戦いに協力することを決めた。
だが、その直後。
地底の奥から現れた一人の鬼――紅蓮寺焔羅。
彼女は鬼王を恐れているわけでも、封印を守る使命を背負っているわけでもない。
ただ、自分より強い鬼と戦うことを求めていた。
轟羅と焔羅。
二人の戦闘狂が出会った時、地底に再び鬼の拳が轟く。
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# 東方Project 二次創作 外伝 鬼の大戦鬼
## 第四話 炎鬼、紅蓮寺焔羅
赤い光が、洞窟を染めていた。
紅蓮寺焔羅。
その全身から、炎が噴き出している。
しかし、その炎は周囲の岩を燃やしてはいなかった。
焔羅自身が炎を完全に制御しているからだ。
「……強そうだな」
黒嶺轟羅が笑った。
「お前もだ」
焔羅も笑う。
互いに一歩ずつ前へ出る。
「轟羅」
雷華が声をかける。
「何だ?」
「今は戦う必要はない」
「そうか?」
轟羅は焔羅を見る。
「私はあると思うが」
「同感だね」
星熊勇儀が笑った。
「こういう奴を見て戦わずにいられるほど、私たちは大人しくないだろう?」
「勇儀まで……」
雷華がため息をつく。
焔羅が拳を握った。
「鳴神雷華」
「何だ?」
「お前は鬼王を止めるために、この二人を集めたんだろう?」
「ああ」
「なら、私も確かめたい」
「何を?」
焔羅の炎が強くなる。
「この地底で、今一番強い鬼が誰なのかを」
轟羅の口元が吊り上がる。
「面白い」
「なら、拳で決めよう」
轟羅と焔羅。
二人が同時に構えた。
雷華が叫ぶ。
「二人とも、封印を壊すなよ!」
「分かっている!」
「善処する!」
「善処じゃ駄目だ!」
勇儀が笑う。
「はははは!」
次の瞬間。
轟羅が地面を蹴った。
――ドンッ!!
巨体が一瞬で間合いを詰める。
「まずは――!」
轟羅の右拳。
「一発だ!」
焔羅も拳を突き出した。
「こっちもだ!」
――ドォンッ!!
二つの拳が激突した。
炎と妖力が爆発する。
洞窟の壁が揺れる。
轟羅は吹き飛ばされる。
しかし――。
空中で身体を捻り、両足で壁を蹴った。
「いい拳だ!」
「そっちもな!」
再び突撃。
焔羅の拳に炎が集まる。
「――紅蓮拳!」
轟羅は拳を受け止める。
炎が轟羅の腕を包む。
だが轟羅は退かない。
「熱いな!」
「それだけか!」
「まだだ!」
轟羅が拳を振り抜く。
焔羅が腕で受ける。
――ズドン!!
焔羅の身体が後方へ飛ぶ。
地面を何度も転がる。
しかし、焔羅はすぐに立ち上がった。
「……なるほど」
口元から血を拭う。
「聞いていた以上だ」
轟羅は拳を見る。
皮膚が少し焼けている。
「お前の炎もな」
「なら――」
焔羅の両拳に炎が集まる。
「もっと熱くする!」
炎が一気に膨れ上がる。
その瞬間。
「待て!」
雷華が二人の間に入った。
雷が爆発する。
「ここは鬼王の封印の前だ!」
「これ以上やれば、封印が持たない!」
轟羅と焔羅は止まった。
焔羅が舌打ちする。
「……仕方ない」
炎が消えていく。
「続きは後だ」
「私もそう思っていた」
轟羅が笑う。
勇儀が肩を叩く。
「二人とも、本当に鬼らしいねぇ」
雷華は頭を抱えた。
「……私は先が思いやられる」
焔羅が雷華を見る。
「それで?」
「何だ?」
「鬼王の話だ」
雷華の表情が変わる。
「お前も知っているのか?」
「詳しくは知らない」
焔羅は答えた。
「だが、最近この地底の炎がおかしい」
「炎が?」
「私の炎は地底の妖気に反応する」
焔羅は手のひらを開いた。
小さな炎が浮かぶ。
「最近、炎の流れが乱れている」
「まるで、地面の奥から何かが燃え上がろうとしているようにな」
雷華は目を細める。
「それを感じて、ここへ来たのか?」
「最初はそうだった」
「だが途中で――」
焔羅は轟羅を見る。
「こいつの妖気を感じた」
「だから先にこっちへ来た」
轟羅が笑う。
「なるほど」
勇儀が言う。
「焔羅も地底の異常を感じていたわけか」
「ああ」
雷華は考える。
雷。
炎。
そして――轟羅の能力。
それぞれ違う方法で、同じ異変へ導かれていた。
「……偶然じゃない」
雷華が呟く。
「何?」
勇儀が聞く。
「私たちは、それぞれ違う場所から、この場所へ導かれている」
雷華は石碑を見る。
「鬼王の封印が弱まったことで、地底全体の妖気が変化している」
「その変化を、私たちがそれぞれ感じ取ったんだ」
焔羅が腕を組む。
「つまり?」
「鬼王が目覚め始めたことで――」
雷華はゆっくり言った。
「鬼たちが集まり始めている」
その言葉と同時に。
――ドン。
また地面が震えた。
今度は先ほどより強い。
石碑の亀裂が広がる。
「まずい!」
雷華が走る。
轟羅と勇儀も続く。
焔羅も石碑を見る。
「……これは」
石碑の表面に、新しい文字が浮かび上がっていた。
雷華が読む。
「『五つの鬼印』……?」
「五つ?」
勇儀が尋ねる。
「古い記録にあった」
雷華は続ける。
「鬼王の封印を維持するには、五つの鬼の力が必要だった」
「五つの……」
轟羅が呟く。
「つまり、五人の強い鬼が必要なのか?」
「違う」
雷華は首を横に振る。
「五人の大戦鬼だ」
焔羅が目を見開く。
「大戦鬼……?」
「ああ」
雷華は石碑を見る。
「かつて鬼王を封じた時、五人の大戦鬼がその力を一つにした」
「その五人が、鬼王を封じるための鍵だった」
轟羅が笑う。
「だったら――」
拳を握る。
「私たちも、その五人を集めればいい」
雷華は答えない。
「どうした?」
「……記録には続きがある」
雷華の顔が険しくなる。
「五人の大戦鬼は――」
石碑の文字が変化する。
古代文字が、一つずつ浮かび上がっていく。
「鬼王を封じた五人のうち――」
「四人は鬼王との戦いで命を落とした」
勇儀の表情が変わる。
「……四人?」
「ああ」
焔羅が呟く。
「じゃあ、最後の一人は?」
雷華は沈黙した。
そして、答えた。
「行方不明」
「生きているのか、死んでいるのか」
「それすら分からない」
轟羅は石碑を見る。
「つまり――」
「私たちが集めるべき鬼は、まだ三人以上いる」
雷華が頷く。
「そういうことになる」
焔羅が笑う。
「だったら探せばいい」
「簡単な話だ」
雷華が焔羅を見る。
「お前も協力するのか?」
「さあな」
焔羅は笑った。
「ただ――」
炎が再び拳に灯る。
「強い鬼が集まるというなら、面白そうじゃないか」
轟羅も笑う。
「同感だ」
勇儀が笑う。
「決まりだね」
雷華は三人を見る。
そして、初めて少しだけ笑った。
「……分かった」
「ならば、探そう」
「残りの大戦鬼を」
その瞬間。
石碑の奥から――。
巨大な妖気が噴き出した。
四人の鬼が同時に振り返る。
そして、遠く離れた地底のどこかで――。
誰かが目を開いた。
青白い瞳。
長い沈黙。
そして――。
「……鳴神雷華」
誰かが雷華の名を呟いた。
「……まだ、鬼王を追っているのか」
その声の主は――。
五人目の大戦鬼を知る者だった。
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### 後書き
第四話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、**紅蓮寺・焔羅との初対面**を描きました。
轟羅と焔羅は非常に相性の良い……いや、非常に危険な二人です。
どちらも強者との戦いを好むため、出会った瞬間に拳を交えることになりました。
しかし、焔羅にも地底の異変を感じ取る能力があり、彼女が偶然この場所へ来たわけではないことが判明しました。
そして今回、新たに重要な設定が明らかになりました。
かつて鬼王を封じたのは――
**五人の「鬼族の大戦鬼」。**
しかし、その五人のうち四人は鬼王との戦いで命を落とし、残る一人は行方不明。
つまり現在の轟羅たちは、かつて鬼王と戦った大戦鬼たちの後継者ともいえる存在です。
さらに最後には、謎の鬼が登場しました。
彼は「五人目の大戦鬼」について何かを知っているようです。
次回からは、いよいよ**鬼族の大戦鬼たちを探す旅**が始まります。
そして、鬼王の封印を巡る過去と現在が少しずつ繋がっていきます。




