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第19話:勝利の凱旋と、至宝の「神変」

アイゼンシュタット帝国の皇都は、今、歴史上かつてないほどの輝きに包まれていた。


 聖教国という「世界の中心」を実質的な属領とし、皇帝レオンハルトが連れ帰ったのは、世界を救った真実の聖女――エルセ。

 彼女を乗せた白鯨の飛行艦が帝国の空を横切るたび、その影が落ちた大地からは七色の花が吹き出し、病に伏せっていた民衆は一瞬にして健康を取り戻す。


 もはやそれは、魔法という概念を超えた「奇跡」そのものだった。


「――エルセ、あまり外を見てはいけない。お前のその清らかな瞳に、これ以上この俗世の光景を映させるのは忍びない」


 移動中の豪華な特別船室。

 レオンハルトは、窓の外を眺めていたエルセを背後から力任せに抱き寄せ、その首筋に深く顔を埋めた。

 彼の「漆黒」の魔力は、エルセの「無色」と完全に溶け合ったことで、かつての破壊的な荒々しさは鳴りを潜めている。だが、その代わりにエルセに対する執着心だけが、ドロドロとした黒い蜜のように純度を増していた。


「陛下……。でも、民衆の方々があんなに喜んでくださっていますわ。少しだけでも、お顔を見せて差し上げないと……」


「不要だ。彼らはお前の放つ光の残滓を浴びるだけで十分すぎるほど幸福なのだ。……お前のその微笑みも、その柔らかな肌も、すべて私だけのものだ。一ミリたりとも、他人に分け与えるつもりはない」


 レオンハルトはエルセの肩を抱き、彼女を無理やりソファへと押し倒した。

 見上げるレオンハルトの瞳には、かつてないほどの「渇望」が渦巻いている。


 その時だった。


「……あ……っ」


 エルセの胸元が、ポゥと淡い真珠色の光を放った。

 それは彼女が感情を高ぶらせた時だけに見せる輝きだったが、今の光はいつもと違っていた。


 彼女の白銀の髪が、毛先からじわりと「透明」へと透け始め、その指先からは、小さな白い蝶のような魔力の結晶が次々と生まれ、部屋の中を舞い始めたのだ。


「エルセ……!? これは……」


「わかりませんわ、陛下……。体が、とても温かくて……なんだか、自分が自分じゃなくなっていくような……」


 エルセの瞳が、アメジストの色を通り越し、宇宙の深淵を映したような「星空の色彩」へと変貌していく。

 神の呪縛を解き、自らの意志で『世界の心臓』としての力を受け入れたことで、彼女の肉体そのものが「神域」へと昇華し始めていたのだ。


 レオンハルトの顔が、驚愕と、そして底知れぬ恐怖に歪んだ。


「……お前が、遠くへ行ってしまう。……人間であることをやめ、本当の神として、私の手の届かない天上へと昇ってしまうのか……?」


「陛下……? 私、どこにも行きませんわ……」


「嘘だ! お前のこの肌が、透き通っていくのが見える! 嫌だ、絶対に許さない! お前が神になるというなら、私はその翼を捥いででも、私の隣に繋ぎ止めてやる!」


 レオンハルトは狂ったように、エルセの体に自分の魔力を流し込んだ。

 彼女が「光」として霧散してしまわないよう、自分の「漆黒」で塗りつぶし、物理的な愛で繋ぎ止めようとする。

 

 彼はエルセの唇を、血が滲むほどに強く、そして必死に奪った。

 それは皇帝としての命令ではなく、一人の男としての、醜くも切実な「懇願」だった。


「……愛している、エルセ。神になどなるな。私のための、ただの女でいてくれ……っ!」


 エルセは、陛下の震える背中に腕を回し、優しくその愛を受け止めた。

 

   ◆


 その頃。

 滅びゆくソラリア王国の国境。

 

 泥水を啜り、這いつくばって逃げ延びてきたジュリアン王子は、帝国の空から降り注ぐ「真珠色の雪」を見上げていた。

 

 それは、エルセの魔力が溢れ出し、世界を浄化している証。

 その雪が一粒、ジュリアンの頬に触れた瞬間――。

 

「ぎゃあああああああ!! 痛い、痛い、痛いぃぃっ!!」

 

 彼がこれまで溜め込んできた「悪意」と「傲慢」が、エルセのあまりに清浄な光に反応し、彼の肌を内側から焼き焦がした。

 

 彼女の慈悲は、正しい者には祝福を、濁った者には絶叫を与える。

 

 かつて自分が「泥」と呼んだ少女は、今や触れることさえ許されない「審判の光」となっていた。

 ジュリアンは、自分の顔が焼けただれる苦痛にのた打ち回りながら、二度と戻れない過去を呪い、意識を失うのだった。

いかがでしたか? 第19話。

エルセ様の「神変(神格化)」が始まり、レオンハルト陛下がかつてないほどの狼狽とデレを見せる回でしたわ!

「お前が神になるなら翼を捥ぐ」という陛下のセリフ……。これぞ私の真骨頂、究極の独占欲です。


そして、王国側のジュリアン。

エルセ様の「優しさ」さえも、今の彼にとっては「焼き尽くす毒」でしかないという皮肉。

自業自得のカタルシス、楽しんでいただけましたでしょうか?


「陛下、必死すぎて尊い!」「エルセ様、どこまで美しくなるの……?」

そんな風に思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価(★★★★★)】をお願いいたします!

皆様の応援が、エルセ様の「人としての絆」を繋ぎ止める力となります。


次回、第20話。

ついに帝国の皇都に到着。

凱旋パレードの最中、エルセの「神としての奇跡」が、全世界の王侯貴族を戦慄させることに!

どうぞ、お楽しみに!

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