怨念
ふと、勇輝は優弥がしばらく学校に来ていないことに気づく。
勇輝は、拓実に尋ねる。
「あの人、最近見ないね。」
「アイツ、怖い先輩に捕まって、ヤバイことしてるみたいだよ。」
「大丈夫かな?」
「何言ってんの?人に散々酷いことしたんだから、ザマァ見ろだよ。悪いことしたら、怨念にやられるってことだよ。」
「念を送ったの?」
「ああ、橋の下で猫に会ったよ。その次の日、アイツが、怖そうな先輩にペコペコしてるの見たから、やられろって念を送ったんだ。そしたら、ホントにボコボコにやられてさ、いいように使われてやんの。ホントにスゲェな、あの猫の力。」
「そうかもしれないけど、悪いことに使って大丈夫なのかな?」
「何言ってんだよ。同じ目に合わせただけじゃん。」
「そうだけど…」
勇輝は、イヤな予感がして橋の下に向かったが、あの猫と会うことはできなかった。
しばらくして、優弥が学校にやってきて、拓実を見つけると連れ去った。
それから、拓実は学校に来なくなった。
夜中、勇輝の携帯が鳴る。
「今、家の下にいる。助けてくれ。」
電話は、拓実だった。
勇輝は、そっと家を出て、拓実の元に行く。
「どうしたの?」
「アイツに連れられて、強盗に入ったんだ。そしたら、じいさんが出てきて、アイツ、じいさんをハンマーで殴ったんだ。」
「おじいさん、大丈夫なの?」
「知るわけないだろ。スキ見て、逃げてきた。」
「おじいさんが死んだら大変だよ。救急車呼んだ方がいいよ。」
「そんなことできるわけないだろ。オレも共犯になるじゃん。」
「人殺しの共犯にされちゃうよ。このままじゃ、あの人に次は何されるかわかんないし、拓実くんに罪を被せるかもしれない、救急車呼んで、警察に全部話した方がいいよ。」
拓実は、震える拳を握り締め、うつむいたままだ。
「オレが、証言するよ、あの人に脅されてたって、警察に行かずにあの人に捕まる方が怖い気がする。」
拓実は、しばらく黙ってから、勇輝に尋ねる。
「あの猫知らねぇ?あれから、何度も探してんだけど、会えないんだよ。」
「オレも、何度か探しに行ったけど、どこにもいないんだ。」
「もしかしてオマエ、オマエの代わりにオレがアイツにやられるよう、あの猫に頼んだのか?元々オレがオマエを追いかけてたからアイツにぶつかったんだもんな、オレを恨んでるんだろ。」
「そんなこと、考えたこともないよ。オレは、あの人がただ、オレの前を通り過ぎることだけを念じただけだよ。」
「オレを警察に突き出そうとするオマエは信じられねぇ。」
そういうと、拓実は去っていった。




