闇落ち
しばらくして、警察が学校に来た。
数人が別室に呼ばれる。
その生徒の話から、ニュースで話題になっている、少年グループ連続強盗致傷事件に優弥と拓実が関わっていて、拓実と仲良くしていたものが、別室に呼ばれたらしい。
孤立していた勇輝が呼ばれることはなかった。
拓実と仲良くしていた者は、拓実が優弥に絡まれるようになってから距離を置いていたから、犯罪に絡んでしまった拓実の状況を詳しくは知らなくても、優弥に脅されていたのではないかという想像はつくだろう。
勇輝は、久しぶりに橋の下に向かった。
腰を下ろしてしばらくすると、あの猫が近寄ってきた。
「どこにいたの?探してたんだよ。」
勇輝は、猫の頭を撫でる。
猫は、
「ニャー」
と、鳴く。
「拓実くんの念に力を貸したのはキミ?」
猫は、足で頭を掻く。
「悪い念を送ったら、悪いことが起こるの?なんで、拓実くんは、あんなことになったの?」
「あの子は、心が恨みに侵されていたからね。その闇に引きずり込まれただけだよ。」
猫は、言った。
「でも、あの人にイヤな思いをさせられたから仕方ないよ。なのに、拓実くんまで闇に落ちるって残酷じゃない?もう、助けられないの?」
「ぼくは、念に力を貸すだけで何もしてない。」
「オレが、拓実くんが幸せになれるよう念を送ったら、拓実くんは救われる?」
「拓実に、それに応える器があるかだね。」
猫は、そう言うと、しっぽを振って草むらに消えた。
拓実は、保護観察処分となったが、学校に戻ることはなく、高校に進学せず、その2年後、少年院に入ったと噂が流れた。
噂によると、拓実はたびたび家で暴れていたらしい。
そして、拓実の暴力に疲れ果てた両親が、母の骨折を機に警察に通報した。
勇輝は、思う。
あの時、優弥に対して、拓実のような念を送っていたら、自分も闇に包まれていたのだろうか。




