転嫁
勇輝は、次の日も優弥に絡まれないよう念じ、難を逃れた。
しかし、優弥に怯える日々は続く。
また、いつ絡まれるかわからない。
優弥から、逃れられるようになっても、同級生が勇輝に近づくことはない。
勇輝は、学校では変わらず、なるべく人のいないところを気配を消して歩く。
優弥の声が聞こえ身を潜める。
「金は?」
そこには、優弥の仲間に囲まれた拓実がいた。
すでに、何発か殴られている。
(最近、オレに絡んでこないのは、ターゲットが拓実に変わっただけか。)
拓実は、勇輝が優弥に絡まれるきっかけになった時、勇輝を追いかけていた。
そして、優弥に捕まり殴られる勇輝を見るだけで何もしなかった。
拓実は優弥に絡まれるようになった勇輝を避けるようになり、勇輝はひとりぼっちになった。
勇輝も、優弥に脅される拓実を見て、もちろん何もしない。
拓実を助ける力はない。
そして拓実は、苦しんでいる勇輝を助けようとすることもなければ、心配して声をかけるどころか、他の仲間と勇輝をムシした人間だからだ。
拓実が午後の授業に遅れて教室に入る。
制服が汚れている。
教師は、授業に遅れたことを叱責するが、制服が汚れている拓実を心配しない。
勇輝の時もそうだった。
自ら、教師に優弥にお金を要求され、要求に応えないと暴力を振るわれることを訴える勇気はなかったが、教師に察してほしいと願っていた。
クラスメートも何かあることは気づいているが、みんな距離を置く。
そんな状況が、2週間続いた。
放課後、校門を出る拓実は、足を引きずっていた。
勇輝は、距離をとって拓実のあとをつけた。
拓実が、川の橋を渡る時、周りに誰もいないことを確かめて、勇輝は拓実に声をかける。
「大丈夫か?」
拓実は振り向き、勇輝を確認するとため息をついて言った。
「オマエはあいつから解放されてよかったな。」
「オレ、念を送ったんだ。」
「念?」
「オレに気づくな、近寄るなって。」
「そんなのいつも思ってるよ。」
勇輝は、猫を思い出す。
「信じてもらえないかもしれないけど、この橋の下で、シルバーで青い目の猫に、念を強く持てば通じるって言われた次の日、その念が通じたんだ。」
拓実は、何も返事をせず、帰路についた。




