念じる
勇輝が、中学に入学してしばらく経った頃だった。
休憩時間に友達とふざけているところ、3年の優弥にぶつかり、優弥の持っていた炭酸飲料が溢れ、優弥の制服を汚してしまったことがイジメの始まりだった。
制服を汚された優弥は、何度も勇輝を殴る。
恐ろしさに謝る勇輝。
「弁償しろよ。」
勇輝は、財布を出す。
いつもは、小銭程度しか入っていない財布に、その日は、祖母からもらったお小遣い5千円が入っていた。
優弥は、勇輝の財布から全てのお金を抜いた。
それからだった。
優弥は、勇輝を呼び出しては、ジュースを買わせる。
それは、次第にエスカレートし、Tシャツやスニーカーなど、徐々に高額な物へとなっていった。
勇輝は、その度、母に欲しいものがあるとお金をもらっていたが、買った様子がないことに気づかれ、母からは、お金をもらえなくなった。
優弥の要求に応えないと殴られる。
勇輝は、祖母にも無心したが、それも母にバレる。
優弥の要求に応えられなくなった勇輝は、優弥の視界に入るたびに、暴力を振るわれ続け、同級生は、勇輝に近寄らず、優弥に暴力を受ける恐怖と孤独に耐える日々を送っていた。
河原でネコと話した次の朝、勇輝は、今日も学校に向かう。
角を曲がれば学校というところで、優弥の気配を感じた。
(オレに構うな。)
勇輝は、とっさに強く念じた。
優弥は、何もせず、スッと勇輝の横を通り過ぎた。
(念が通じたのか?)
勇輝は、学校帰りに河原に向かう。
河原に腰掛けていると、あのネコが近寄ってきた。
「念が通じたみたい。今日は、アイツから逃げられた。」
そう言って、ネコの頭を撫でると、ネコは
「ニャー」
と、鳴くだけで、昨日のような会話はなかった。
(オレ、昨日はおかしかったのかな。
今日、アイツに絡まれなかったのは、たまたま?)




