群馬県は秘境の地?
「おい。じいさん達」
小犬丸さんが駿河復活の儀の準備をするおじいさん二人に話しかけている。
綺麗にアイロンをかけられた忍び装束だ。
忍びに憧れているっていうのは本当らしいね。
あ……
防虫剤の匂いがする。
ウメちゃんと同じ防虫剤を使っているみたいだ。
この忍び装束もタンスに大切にしまっていたのかな?
「……!? 誰だ!?」
「ここには誰もいないはずなのに!」
おじいさん二人がかなり慌てている。
黒い頭巾を被っているからよくは分からないけど、どこにでもいる普通のおじいさんに見えるような……
「ははは。俺は小犬丸だ。ここから少し離れた所に住んでる群馬県民だなぁ」
小犬丸さんがニコニコ笑いながら話している。
突然話しかけられたおじいさん達はかなり動揺しているみたいだ。
「群馬県民……毎日コンニャクだけを貪るように食べる秘境の地の住民」
「まさか服を着ているとは……」
うわ……
群馬をどんな場所だと思っているんだろう……
「……おいおい。そりゃどんな生き物だ……ヘンテコなネット情報を信じると大変な目に遭うぞ。ちなみに群馬県民は意外とコンニャクを食わねぇんだ」
小犬丸さんはあんな事を言われたのに全然怒っていないみたいだ。
群馬県民は他県から変な事を言われても怒らないって聞いた事があるけど本当だったんだね。
「何!? じゃあ……あれは!? まんじゅうを棒に刺して味噌を塗って焼いて食べるという、まんじゅうに対する鬼畜の所業……赦せんっ!」
「そうだ! まんじゅうに味噌を塗ってしかも焼くなんてあり得ない! こいつはまんじゅう屋なんだぞ! まんじゅうに謝れ!」
「んん? そりゃ焼きまんじゅうか? ありゃあ一回食った方がいい。甘じょっぱい味噌のタレをフカフカのパンみてぇなまんじゅうに塗って香ばしく焼くんだ。普通のまんじゅうを想像しながら食うと脳が追いつかねぇぞ」
「……脳が追いつかない?」
「やはり群馬県民は尋常ではないな」
「おいおい。お前らは群馬を何だと思ってるんだ……」
「県境がある長野に『この先危険につき関係者以外立入禁止』と書かれてあるように、かなり危険な地だ。隣県が看板にまでするなら間違いない!」
「群馬県……それはネットやテレビさえ無い未開の地! パスポートを持たない侵入者は見つかったら最後、生きては帰れな……はっ! しまった! 群馬県民に見つかってしまった!」
すごい言われようだね……
「……お前ら大丈夫か? 群馬は日本だからパスポートは、いらねぇだろ」
小犬丸さんも呆れているみたいだ。
「かわいい孫に言われたんだ! 馬の絵が描かれたパスポートがあると! 群馬は独自の帝国を築いているからむやみに立ち入ったら大変な目に遭うんだっ!」
「そうだ! 動画とやらも観せられた! まるで縄文時代のようだった!」
「は? 孫? ああ、そういう事か。そのかわいい孫は群馬に来たくねぇからヘンテコなネット情報を教えたんだなぁ。……馬の絵が描かれたパスポート? そりゃスタンプラリーをしながら群馬を楽しむ事ができる物だ。外国に行く為のパスポートじゃねぇぞ」
「俺の孫をバカにするのか!?」
「確かに嫌がりはしたが、ここまで送ってくれた優しい孫だ!」
この忍び装束のおじいさん達……
孫の言葉を信じ過ぎでしょ……




