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リクルーター  作者: 海星
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八十四話

 かなり階段を上ってきた。

 体力的には問題ない。

 でもかなり面倒臭かった。

 もう呪いを仕掛けたヤツの頭をスパーンと叩かないと気持ちがおさまらない。

 「この部屋から糸が出ているわ」

 「ここから『運命の赤い糸』が伸びてるって事はここに呪いを仕掛けたヤツがいるって事だよな?」と俺。

 「『運命の赤い糸』じゃないわよ。

 赤くないし」とナオミ。

 「ふーん。

 俺はその糸を見ることが出来ないからね。

 何色なの?」

 「異世界じゃ『₩¢€色』って言うんだけどね。

 『₩¢€』自体、日本には無いものだから。

 ほら、日本で『柿色』って言えば日本人はすぐに思い浮かぶけど、柿をよく知らない民族は『何の事を言っているかわからない』と思うでしょ?

 ・・・そうね、敢えて日本語に当てはめるなら『黄土色』かしら?」

 「糸ってウンコ色に光輝いてるの!?」

 「『敢えて言うなら』よ!

 別に濁った色な訳じゃないからね!

 杏奈だって『₩¢€』は知ってるでしょう?」

 知ってるよ、ナスみたいなズッキーニみたいな味のアレの事だろ?

 でもあれ、細長いヘチマみたいにぶら下がってて、見た目が排泄物にしか見えなくて嫌なんだよな。

 だから俺の家の食卓では『₩¢€は禁止』になっている。

 いや、見た目は大事じゃん。

 『₩¢€の素焼き』なんて、ホカホカの湯気があがってる一本◯にしか見えない。


 扉をガチャガチャと開けようとする。

 「開かないな、鍵がかかってるみたい」と俺。

 良く考えたら何らかの罠が仕掛けられてるかも知れない。

 もう少し慎重になった方が良かったかな?

 「どうするの?」と有末。

 「フフフ・・・こんな事もあろうかと。

 『異世界のピッキングツール』を持って来たんだよ!」

 「そんなモノ良く手に入ったわね!」

 「?普通に道具屋で手に入るよ?」

 「そんなモノ売ってたら泥棒に入り放題じゃない!」

 「異世界の一般家庭の鍵って、もっと原始的なんだよ。

 『(かんぬき)』とか。

 『ピッキングツール』を使うのは『ダンジョンの中の扉』とか『ダンジョンの中の宝箱』だけ。

 つまり冒険者御用達なんだよ。

 しかも『ピッキングツール』を使うには熟練の技術が必要なんだ」

 「あ、そうなんだ。

 って事は杏奈は『ピッキングツール』を使えるのよね?」

 「・・・・・」

 「もしかして使えないとか?

 あ、もしかして何も知らなかった時に『ピッキングツールがあれば色んな事が出来る!』って買ったは良いけど、使えないし、使い途がないし、で、今までアイテムボックスの中で眠らせてた感じ?」

 「言ってはならない事を!」

 「別に言っても良い事だとは思うけど・・・」

 「異世界に行ったら日本の知識で大金持ち、って憧れるじゃん?

 俺は悟ったね。

 『金が欲しかったら真面目に働け!』ってね」

 「良い話風にまとめたのは良いけど、どうすんのよ?

 杏奈、『ピッキングツール』使えないんでしょ?

 それで『ピッキングツール』を使える人もいない」

 「知ってる?

 こういった場合、追い詰められて『火事場のくそ力』が発動するんだよ。

 今までは使えなかったかも知れない。

 でも、今、このタイミングなら俺は『ピッキングツール』を使えるかも知れない!」

 俺は鍵穴にピッキングツールを差し込む。

 何がどういう仕組みなのかはサッパリわからない。

 わからないが、横開きのスライドドアに手をかける。俺は鍵がかかっていてスライドドアが開かない事を再確認する。

 うん、開かないな。

 俺はスライドドアを蹴破り中に入る。

 「ふう、ピッキング成功・・・」

 「どこがだ!」

 俺は部屋の中で腰を抜かしていた男に突っ込まれる。


 部屋の中には祭壇のようなモノがある。

 祭壇は四隅を注連縄(しめなわ)のような縄で囲んでいる。

 だがこれは『注連縄を模したモノ』であって『注連縄』では有り得ない。

 そんな神聖なものじゃないのは祭壇から伝わって来るおどろおどろしい雰囲気からもわかる。


 「お久しぶりです、伯父様」とナオミが腰を抜かしているナイスミドルに話し掛ける。

 ちくしょう、良い男っていうのは腰を抜かしていても絵になりやがる。

 「良い男はいつもウンコ漏らしてれば良いのに」俺はつい本心を呟く。

 「お、お前は何を言っているんだ!?」と男。

 あ、今コイツ、俺が呟いた『良い男』っていうのを瞬時に自分の事だと思いやがった。

 俺は男を『イヤな野郎』認定した。 

 「無視するとはつれないですね。

 久しぶりに会ったのに」とナオミ。

 「ひ、久しぶりでもないだろう?

 先代の13回忌で会ったばかりじゃないか。

 会話は交わさなかったがな!」

 「その時に会ったのは私です。

 姉はあの時、入院していましたので・・・」と綾美が横から口を挟む。

 「と言う事はお前は直美!

 退院したとは聞いていたが。

 しかし何故だ?

 直美にも呪いをかけていたはずだが・・・」

 「やっぱり。

 いくら病院でも悪霊がそんなに集まる訳がないと思っていました。

 死んだ人、全てが悪霊になる訳じゃないし。

 今まで悪霊や地縛霊に祟られたショックで入院する事は何度かはあった。

 でも、そのまま意識不明が長く続く事は初めてだったのよ。

 『これは誰かに呪われてたのかな?』なんて思わないでもなかった。

 でもまさか身内に呪いをかけられていたとはね」

 「ふ、ふん!

 呪いに気付いていただと?

 そんな訳がなかろう?

 この日本で誰が呪いの話を信じる?

 誰が呪いを裁く?」男が焦りながらも笑う。

 「誰も信じないでしょうね。

 日本なら、ね。

 でも『呪い』という概念が固定された世界、異世界なら簡単に裁きが下るでしょうね」

 「ここは日本だ!

 そんな『異世界』とかいうファンタジーな世界じゃない!」

 「そうね、ここは日本、異世界じゃない。

 でも私は異世界で『呪い』の報復方法を学んで来たのよ。

 伯父様は私の大切な父親を亡き者にしようとした。

 だから、伯父様が報復を受けるのは当然ですよね?

 しかも私にも呪いをかけていたんですよね?」

 「き、貴様ごときに何が出来るというのか!?」

 「私は単に『呪いをお返しする』だけですよ。

 先程伯父様も言っていた通り、現代日本において『呪い』なんて非科学的でオカルトなモノを取り締まる法はございません。

 伯父様は自分に返ってきた『呪い』を存分に堪能して下さい」

 「な、何をする気だ!?

 やめろ!」

 「何もいたしません。

 『呪い返し』なんて、言ってみれば『呪いで遊んだ子供を懲らしめるためのもの』です。

 『人を呪わば穴二つ』

 子供に教訓を教えるためのモノという側面が強い。

 ・・・でも伯父様は『リボ払い』というモノをご存知でしょうか?

 『リボ払い』は担保無しで負債が背負えます。

 その代わり、利子が払い切れないぐらい莫大になるんです。

 伯父様は『呪いの壺』に生け贄無し、担保無しで、呪いの依頼をしましたよね?

 担保無しでの呪いの依頼の利子は凄まじい事になっています。

 それこそ、本社建物にいる人間全ての命では足りずに、ここら辺一帯の人間の命全てが呪いの代償になるくらいに。

 ・・・ですから、その呪いの全てを伯父様に背負っていただこうと考えております」

 「ま、待ってくれ!」

 「何をそんなに慌てているんですか?

 『この世界に呪いを裁ける者はいない』んじゃなかったですか?

 でも私も正直、気分が悪い。

 伯父様が私の父親を殺そうとした事。

 自分の欲望に多くの人間を命ごと巻き込もうとした事。

 呪具の多くは『こっくりさん』みたいな規模の小さい子供の遊び程度のモノなのに、伯父様の取り出した呪具であるこの壺は本当にシャレにならない。

 モンスター化した壺をテイム出来る人がいたから良いようなモノの、もしこのまま放置していたらどうなったか。

 少なくとも川越市は消滅していたでしょうね」


 「ちょっと待ってよ。

 ナオミさんも呪いをかけられてたんだよね?

 何で綾美さんは呪いをかけられなかったの?」と俺がナオミさんを呼び止める。

 「多分、かけられてたわよ。

 でも、綾美に呪いは効かなかった。

 杏奈も見たでしょう?

 綾美が瘴気を跳ね返すところを。

 綾美には多少の呪いも瘴気も無効なのよ。

 そういう体質なのよ」

 「綾美さんが多少の呪いは跳ね返す事はわかった。

 つまり呪いは小さかったんだね?

 で、ナオミさんは何でその小さな呪いで死にそうになったのさ?」

 「住んでいたところは事故物件で強力な地縛霊がついていたって話はしたわよね?

 ・・・で、元々霊媒体質で霊魂を集める体質だ、と。

 そこで病院にいる霊魂を悪霊もまとめて背負い込んでしまったのよ。

 それで既にキャパシティオーバー気味。

 『かなり体調悪いなぁ』って感じね。

 それプラス伯父様の呪いを背負い込んでしまったのよ。

 おそらく呪いは私の霊媒体質を増幅するものね。

 普通の人であれば『0.1×10=1』ぐらいの呪いよ。

 でも私の場合は『3000×10=30000』位の呪いを背負ってしまった訳よ。

 そりゃ、死にそうにもなるわよ。

 まぁ、その呪いの事は別にどうこう言う気はないのよ。

 呪いは私を体調不良にして、後継者争いから追い落とそうとする程度のモノだったろうし、呪いが効きすぎちゃったのは私の体質で、意図したモノじゃなかったろうし。

 問題はこの『壺』よ。

 これは伯父様の手には余るモノよ。

 子供の遊びで済む話じゃない。

 現にこの『壺』は過去に沢山の人の魂を喰らっている。

 しかも、伯父様は

おそらく壺への報酬となる魂を満足に準備出来ていない。

 おそらく埼玉県全域を巻き込む惨劇が起こっていた。

 伯父様にこの『壺』を渡したヤツは多分惨劇が起こるのを知っていた。

 いや『惨劇を望んでいた』」

 「この『壺』がそんなに大量の魂を喰らおうとしていたの?

 その割りに今はカナの支配下でおとなしくしているけど」と俺。

 「魂の量はレベルアップでしか増えないのよ。

 他のステータスは『補正値』として少しずつ増えるんだけどね。

 『(+◯◯)』ってヤツね。

 カナはレベルアップで魂の数量が格段に増えているのよ。

 それでもカナは『壺に生気を吸われてだるい』って言ってたわ。

 それに『ここら辺の人々の生気全て』は伯父様が勝手に差し出した呪いの代償であって、その生気全てが『壺にとって必要な生気』という訳じゃないのよ。

 言ってみれば『暴飲暴食』に近いわね。

 壺にとって『生娘の生気』はキャビアみたいなモノで、『ここら辺の人々の生気』はオカラみたいなモノなのよ。

 だから『カナの生気』は『キャビア一匙分』で『ここら辺の人々の生気』は『うまい棒30本入り一袋』ってところね」


 「何をブツブツ言っているのだ!」放ったらかしにしていた男が怒鳴る。

 「ごめんなさい。

 それじゃあ『呪い返し』を行うわね」とナオミ。

 「ちょっと待て!」と男が慌てて言う。

 まさに『雉も鳴かずば』なんとやら、だ。

 

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