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リクルーター  作者: 海星
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七十九話

 「しかし瘴気があれだけたまった理由はなんだろう?

 あそこにナオミさん以上の霊媒体質の人でもいるのかな?」と俺。

 「私以上の霊媒体質の人間なんてそうそういないわよ。

 いたとしても、そんなに長く生きていけないし」

 「どういう事?」

 「私ですら意識不明で死にかけてたのよ?

 杏奈やベガに会わなかったら今は生きていないでしょうね。

 私以上の霊媒体質の人なんていたとしても、まともに活動出来てる訳がないのよ」

 「あの瘴気のたまり方は一体どういう事?

 偶然瘴気が一ヶ所にたまるモノなの?」

 「有り得ないわ。

 あの瘴気のたまり方は意図的に仕組まれたモノでしょうね。

 『岡田コンツェルンの誰かを陥れようとしている誰か』によって」そう言うナオミさんは静かに怒っている。

 当然か、実の父親が何者かによって命を狙われているのだから。


 「じゃあ杏奈、『岡田コンツェルン』の会議室にワープ出来るかしら?」とナオミ。

 「会議室に行った事がある人がいるなら。

 俺は行った事ない所にはワープ出来ないんだよ」

 「それなら私と綾美は会議室に行った事があるわ。

 コンツェルン創立の70周年パーティには社長をはじめ、役員の家族も招かれてたから。

 パーティは会議室で行われたのよ」

 「それなら行けるはず。

 でも大丈夫なの?

 瘴気が漂う岡田コンツェルンの本社ビルのど真ん中にある会議室に行って。

 瘴気を吸った人らは昏倒したんじゃないの?

 俺らも瘴気を吸ったら昏倒しちゃうんじゃないの?」

 「大丈夫。

 ここにいる女の子らはみんなレベル高いから。

 昏倒した人達はおそらくみんなレベル1だから。

 悪霊は生気を削って、瘴気は精神力を削るのよ。

 ここにいる女の子らだったら一時間以上は瘴気の中で正気を保てるはず。

 綾美はレベル1だけど『エクソシスト』が適職なら悪霊や瘴気に耐性があるはず。

 簡単に瘴気に飲まれるエクソシストなんている訳ないからね」とナオミ。

 『我が瘴気を吸い尽くそう』といつの間にかアクアが話に加わっている。

 「こらアクア、呼び出してもいないのに勝手に出て来ないの!」とケイがアクアを咎める。

 『ふん、瘴気を吸い付くそうにも我以外の適任者がいるのか?

 他の獣達は部屋に入りきれないほどの大きさであろう?

 我ならば今みたい人サイズに変化出来る。

 だいたい人は軟弱なのだ。

 瘴気ごとき吸い尽くせばどうという事はない!』

 突然現れたアクアを見て、綾美は混乱している。

 しかも綾美はアクアが言っている内容が全く理解出来ない。

 「仮に瘴気で昏倒しそうになる人が出ても精神力の回復薬、『気付け薬』があるから大丈夫よ」とベガ。

 「じゃあ、瘴気なんて恐れるに足りず、だね!

 ・・・でも異世界って、モンスターの肉食べるよね?

 瘴気が人の身体に毒なら、食べたらまずいんじゃないの?」

 「モンスター達が瘴気をため込むのは肝臓なのよ。

 だから肝臓を食べなきゃ大丈夫なのよ。

 ホラ、フグと同じよ。

 フグって血と肝臓さえ接種しなきゃ食べても平気でしょ?」とナオミ。

 「なるほど・・・ってそんな事言ってる場合じゃなかったね。

 じゃあ、『会議室』にワープしようか?」


 手を繋いで、岡田コンツェルンの会議室にワープする。

 カナはあんまり戦力にはならない。

 いや、レベリングはしているから地球ではかなりの身体能力だろう。

 でもこの中ではベガを除いて戦力にはならないだろう。

 ベガはいくらレベルを上げても全然強くならない。

 絶望的なまでに、戦闘の資質がないんだろう。

 でもベガかベガでやらなきゃいけない事がある。

 ある意味、瘴気の中ではベガの『気付け薬』頼みのところがある。

 しかしカナは正直足手まといだ。

 連れて行っても『気付け薬』を余分に消費するだけだ。

 だが、カナが「私もついていく」と言って聞かない。

 何でも「ナミちゃんに『何があってもついていくように』言われている」との事だ。

 ナミか。

 実は俺はあの娘は苦手だ。

 そんなに絡んだ事はない。

 でもあの娘は何かを隠している。

 何故わかるか?

 俺自身が『元男であること』『日本から来たこと』を隠していて、それとナミから同じようなモノを感じるからだ。

 カナは「ここに残れ」と言っても「イヤだ!」の一点張りだ。

 ここで押し問答していて余計な時間を食う訳にはいかない。

 「ある程度、自分の身は自分で守るように」とカナに言い聞かせてある。


 会議室にワープする。

 会議室には何人かの岡田コンツェルンの社員達が倒れている。

 何にも言わなくてもベガが倒れている人々に何やら液体を飲ませている。

 普通、意識のない人に液体を飲ませる、なんて事は出来ない。

 気管に液体が入ってしまうからだ。

 でも、ベガは慣れた手つきで意識を失っている人達にシリンダーに入った液体を飲ませている。

 シリンダーはガラス製じゃない。

 シリンダーは黄緑がかった透明な細長い容器だ。

 これは食虫植物の虫を捕まえる部分らしい。

 ナオミは『ウツボカズラみたいなものね』と言っていたが、俺には何の事だかわからない。

 何度も説明をうけて、『パックンフラワーの顔の部分をシリンダーにしているようなモノ』という事で無理矢理解釈した。

 「これでしばらくは大丈夫」とベガ。

 「大丈夫、とは?」と俺。

 「元々、人の身体は瘴気に耐えられるようにはなってはいない。

 瘴気の大元を叩かないと、またこの人達は命の危機に陥るわ」

 そうか、モンスターは身体に瘴気をため込める。

 獣は瘴気に耐えられるように、身体を変質させられる。

 でも人は瘴気に耐えられないのか。

 『心配するな。

 充満している瘴気は我が吸う』とアクア。

 「アクアは瘴気を吸って大丈夫なの?」

 『ここ数千年は瘴気で身体が変質する事はなかった。

 今回も大丈夫だろう』

 「そうか。

 それじゃあ頼む」

 そうアクアに言うと、アクアは大きく息を吸い込んだ。

 霊感のない俺にもハッキリと見える。

 みるみると、藤色のネトっとした空気がアクアに吸い込まれていく。

 しかし凄い吸引力だ。

 まるでダイソン。

 これでしばらく普通に活動出来る。

 ハッ!しまった!

 俺達はそこそこレベルが高いから精神力も高いし昏倒する事もないが、綾美は違う。

 綾美はここに倒れている人達みたいに昏倒してしまうんじゃないか?

 ・・・と思ったが、綾美はケロリとしている。

 むしろ他の人達は『ウゲっ!この空気は何だろうか?超気持ち悪い』とげっそりした顔をしていたが、綾美だけは何事もなかったように平然としている。

 それもそのはず。

 瘴気が綾美の周りだけ霧散して浄化されていた。

 どうやら綾美は瘴気を消す体質みたいだ。

 エクソシストが適職だから?

 生まれながらのエクソシストだから?

 わからんし、綾美自体に自覚がないなら確かめようがない。


 だいぶ周辺の瘴気が薄くなってきた。

 「うん、これなら何とか動けるかな?」と俺。

 「無茶はしないでね?

 精神力が削れたらすぐに『気付け薬』を飲んでね?」とベガ。

 やはりベガは母性愛の塊だ。

 男に(うつつ)をぬかしてた女とは思えない。

 「でもやっぱりこんなに瘴気がたまるのは不自然だ。

 誰かが意図的に瘴気を流したとしか思えない。

 油断しないでね、どこかに敵が潜んでいるかも知れないわ」とナオミ。

 『瘴気を消さなきゃいけないなら、瘴気が流れて来る方向に行かなきゃどうしようもなかろう?

 ナオミの父親を救うつもりなのだろう?』とアクア。

 そうだった。

 対決は避けられないのかも知れない。

 『しかしコレは"霊障"と言うよりは"呪怨"だな。

 しかも大規模に仕組まれたモノだ。

 ナオミの父親は余程恨まれているのか?』とアクア。

 あ、バカ。

 誰もが思っていながら聞けなかった事だ。

 「お前の親父、みんなに恨まれててたんだなー」なんて人として言えないだろうが。

 アクアは人じゃないのか、龍なのか。

 「そうね、商売敵は多かったと思う。

 手広くやっていたみたいだし。

 子供の頃に公園で遊んでたら『お嬢ちゃん、君の父親は鬼だ』って無精髭の男に肩を掴まれた事があったわ」とナオミ。

 そうか、誰でも外を歩けば七人の敵がいる、とか言うけどナオミさんの親父さんにとったら敵は七十人どころじゃなさそうだ。


 「そんな事を言ってるより、その"呪怨"の正体の方へ向かいましょう。

 これだけの瘴気が充満してるなら大量の怨霊、悪霊の類いがいる、と思ってたら今のところ一匹も見てない。

 もしかしたら私達は大きな勘違いをしていたかも知れない。

 ここに悪霊なんていないのかも知れない」とナオミ。

 「じゃあ、今から向かうところに何があるのさ?」と俺。

 「それはわからないけど・・・」

 「わかんないのかい!」

 『行けばわかるさ』とアクア。

 「猪木か!」と俺。

 『?』

 アクアには通じなかったようだ。


 『瘴気はここから出ているな』とアクアが指差す。

 俺達が瘴気を辿って来たのは給湯室。

 給湯室の隅に段ボール箱が置いてある。

 段ボール箱はかなりの大きさだ。

 家電で言えば、大型の洗濯機が入る位の大きさか。

 アクアが指差す方向にその大型の段ボール箱がある。

 何者かが業者に偽装してこの段ボール箱を置いたのか?

 とにかく中のモノを確認しないと話は始まらない。

 俺が箱を開けようと近付こうとする。

 『待て。

 箱の中に何かおるぞ!

 簡単に近付こうとするな!』

 「とは言っても、中を確認して瘴気を止めないと何をしにきたかわからないよ」と俺。

 『我々が箱を開けるまでもない。

 向こうの方から箱の外へ這い出してきた!』

 「何だ!?

 アイツは!?」俺は思わず悲鳴じみた叫び声を上げた。

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