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リクルーター  作者: 海星
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六十四話

 西の泉までワープしてきた。

 面子は俺、山神さん、ケイ、そして山賊に捕らえられていた女の子五人。

 売り払われるために連れ去られた女の子達なので、元々容姿は悪くない。

 レベリングで『美しさ』のパラメーターが上がって、更に美しくなっている。

 異世界人で醜い人が少ないのは、レベルアップで『美しさ』のパラメーターが上がるからかも知れない。

 その中でも少女達は群を抜いて美しい。

 「あの子達、可愛いよね」俺が山神さんに呟く。

 「それ、杏奈が言わない方が良いわよ?

 嫌味に聞こえちゃうから」と山神さん。

 「何で?」

 「自覚してないんだ」山神さんがため息をつきながら言う。

 「?」何を言ってるんだ?


 森はベガの行動範囲内には強いモンスターがわかないように薬品が撒かれている。

 どういう薬品なのか、仕組みはよくわからない。

 『熊よけスプレー』『虫よけ』みたいなモノだと俺は認識している。

 とにかくベガの生活圏には強いモンスターがわかない。

 弱いモンスターであれば、ベガは薬品で撃退出来る。

 そうやって、ベガは森の中で生き抜いてきたらしい。

 しかし『西の泉』はベガの生活圏から遠く離れている。

 モンスターの唸り声が響く。

「ケイ、頼んだ。

 この娘達を守って!

 俺じゃ守るどころかモンスターを倒せるかどうかもわからない」と俺。

 「わかったけど、大丈夫だと思うよ」

 「何が?」

 「この娘らそんなに弱くないよ?

 それ以上に杏奈、そこら辺のモンスターじゃ相手にならないくらいの腕前だけど、自分じゃ気付いてないの?」

 ふと女の子達の方を向くと、女の子達が武装している。

 山神さんも恥ずかしがりながら俺が渡した布が少なく透け透けな『踊り子の服』を装備している。

 「でも万が一、って事もあるし。

 もし、強敵が現れたら・・・」

 「ないよ。

 そんな強い敵の巣窟なら、ここに来た女の子がいるわけないじゃない」とケイ。

 「でもここはモンスター達が水場にしてるみたいです。

 だからここに集まるモンスターの強さは本当にマチマチで運が悪かったら超強力なモンスターと出会っちゃう、ってお父さんが言ってました」

 と『西の泉に行った事がある』と言っていた少女が言う。

 なるほど。

 誘蛾灯に危険な毒虫や蜂が集まって来てしまうように、泉に来るモンスターもランダムなのか。

 「だから『西の泉』には冒険者達も長居は出来ないらしいです」

 冒険者達を差し向けられないから、俺をここに来させたのか。

 「強い、ってどの程度の強さのモンスターがここに来るの?」

 「わかりません」

 「『わからない』ってどういう事?」

 「言ってみればここは人間社会で言う『中立地帯』なんです。

 モンスターを刺激しなければ、強いも弱いもなくどんな生き物も水を手に入れる事が出来るんです」

 なるほど。

 アフリカのオアシス?みたいなもんか。

 ライオンとシマウマが並んで水飲んでる光景テレビで見るもんな。

 そこで一つの疑問が頭に浮かぶ。

 『確かに水を求めて泉に来た生き物の間で争いがご法度なのはわかった。

 でも泉に肉食のモンスターは住み着いていないのか?』それに関する疑問に少女は答えをくれる。

 「意志疎通が出来るモンスターもいます。

 ペットになるモンスターも、家畜になるモンスターもいます。

 でも絶対人間に懐かないモンスターが大概です。

 そんなモンスターを使役出来るのがモンスターテイマーなんですが・・・」と一人の少女。

 「モンスターに詳しいんだな」と俺。

 俺は何の気なしに少女のステータスを見てみる。

 『名前:カナ』

 カナって名前なのか。

 『適職:モンスターテイマー』

 モンスターテイマー?

 レベルが上がって『適職』が発現したのか。

 しかし「モンスターテイマーやります!」と言って直ぐにモンスターテイマーになれるだろうか?

 名乗った瞬間、転職出来るジョブもある。

 『歌姫』や『踊り子』がそうだ。

 でも『料理人』や『ネクロマンサー』のように『見習い』から始めるジョブもある。

 『モンスターテイマー』がそのどちらかは知らない。

 でも『ビーストテイマー』がそうだったように『モンスターテイマー』も見習い期間を経なくてもなれるんじゃなかろうか?

 日本でも『芸人』みたいになった後に下積みが始まる職業がある。

 『名乗る』のは簡単だ。

 しかしその中で大成するのは数%だ。

 『モンスターテイマー』もそういったジョブの可能性が高い。


 「カナちゃん、だよね?

 モンスターに詳しいみたいだし『モンスターテイマー』になってみない?」と俺。

 「『モンスターテイマー』ですか?

 昔はなれなかったジョブですが、少しはレベルが上がったでしょうしもう一度チャレンジしてみましょうか。

 ・・・でもテイムするのは泉を出てからです」

 「何で?

 今すぐ『モンスターテイマー』になりたくないの?」

 「いえ、そういう事じゃありません。

 泉の周りは『中立地帯』、戦闘が禁じられていると同時に『テイム』も禁じられているのです」

 「それは何で?」

 「『戦闘』と『モンスターテイム』はセットなんですよ。

 戦闘が終わった後モンスターが『仲間になりたそうにこちらを見ている』って」

 なるほど。

 ドラクエⅤでも仲間にするモンスターは一旦倒すもんな。

 「でも泉の周辺にはその法則を無視するモンスターがいます。

 ・・・と言うか、その種族のモンスターは一切『モンスターテイム』に応じません」

 「そのモンスターは中立地帯を守らないの?」

 「そうです」

 「気をつけようにもそのモンスターの特徴がわからないから話にならないよね?」

 「それなら大丈夫です。

 見間違えようがないし。

 それに相手が『泉のルールは守らない』とは言え他のモンスターより理性的、理知的で『世間のルールを守る』モンスターだからです」

 「『理知的なモンスター』?

 それは一体?」

 「『竜』です。

 泉に住んでいるのは『水龍』ですね。

 大きさも特徴も見ればわかると思います」

 やっぱり竜いるんだ。

 さすが、ファンタジーの世界。

 やっぱり竜は特別感あるなあ。

 「ふーん、竜はテイム出来ないんだ」

 「『亜竜』はテイム出来ますよ」

 「亜竜?」

 「小型の飛竜やワイバーンなどですね。

 テイム出来ないのは『古龍』と言われる種類のモンスターです。

 テイム出来ない種類の竜の方が少ないんです」

 「わかった。

 気を付けるけど『気を付ける』って具体的に何をすれば良いのさ?」

 「私の場合ですが『失せろ』と言われて、言われた通りその場から立ち去れば何もされないと思います」

 「竜を倒せば良いんじゃないの?」

 「古龍を倒せるのは伝説クラスの英雄です!

 そういった英雄達は『ドラゴンバスター』の称号を手に入れています!」

 「倒した人いるんじゃん」

 「『ドラゴンバスター』は大体建国していますね」

 「?

 何でよ?」

 「民衆に望まれるからです。

 『古龍を倒せるほどの猛者は人々の希望だ』と。

 でも本当に古龍を倒したかどうかは眉唾モノです」

 「なんで?」

 「書物にも残ってない大昔だからです。

 『古龍を倒した』という言い伝えのみが残っているだけです。

 そもそも古龍を倒す方法自体が失伝している現在では、古龍を倒そうなんて事を夢にも思う者はいません。

 だから泉に現れる水龍も泉の主として崇められています」

 「ふーん、とりあえず泉の周りで行方不明者を捜索しようか?」

 「そうですね」


 泉の周りにはありとあらゆるモンスター達がいた。

 でも泉の周辺は中立地帯、モンスターに手を出しちゃいけない。

 もし規則を破れば、その場にいる全ての者に粛清される、と。

 「さすがにモンスター以外には襲われないよね?」と俺。

 「いや、規則を破った者を攻撃しない者はモンスターにリンチされるから、人間にも攻撃されるそうですよ?」

 「マジかよ・・・」

 そんな事を言いながら泉の周りを探索した。


 「おかしくない?」と俺。

 「何が?」とケイ。

 「ここは『中立地帯』で『非戦区域』なんでしょ?

 ここでトラブルがあればここにいる全ての存在が黙ってない。

 ・・・なのに何でここで人が行方不明になるのさ?」

 「そう言われてみれば・・・」

 「ここでトラブルを恐れず人を拐う存在なんて一つじゃない?」

 「その存在ってもしや・・・」

 「水龍しかいないじゃん。

 やっぱりギルドマスターに騙されてたんだよ。

 『この依頼を受ける冒険者がいない』とか言って。

 水龍さえ相手にしないなら、この上なく安全な依頼じゃん。

 何せ『中立地帯』の『非戦区域』なんだから。

 俺らにわざわざ依頼してきたのなんて、水龍と敵対しなきゃダメだからだよ。

 あのクソオヤジ!」

 「ど、どうするつもり!?」

 「どうもこうもないよ。

 『ここに来ました』って証拠になる物を採取してサッサと帰ろう。

 何かないの?

 『泉に来ましたまんじゅう』みたいなモノは」

 「なら泉の畔に生えてる『ヒカリダケ』ってキノコを持って帰れば良いですよ。

 泉の名産品です。

 けっこう高い値段で売れるんですよ?」


 俺と少女達が話をしていると山神さんが暇そうにしている。

 そりゃそうか。

 言葉が一人だけわからないんだから。

 暇を持て余した山神さんは靴を脱いで泉に入る。

 泉は膝位の深さがあり、ヒンヤリして心地よい。

 水遊びしている山神さんに気づいたカナが慌てて叫ぶ。

 「そこで水に入っちゃダメです!

 そこは水龍の縄張りです!」

 カナの警告は時既に遅かった。

 泉の水が渦巻く。山神さんがいるところは膝程度の深さしかないが、渦巻いているところはかなりの深さがあるみたいだ。

 何故そんな事がわかったか?

 渦巻きの中心から巨大な水龍が登場したからだ。

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