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リクルーター  作者: 海星
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四十五話

 「山田様の私服姿・・・何と言うか『個性的』ですね」と清明。

 「遠慮しないで『変だ』って言いなよ。

 これしか着るモノがないんだわ。

 どこの『アルプスの少女』だよ?、って話だわな」

 「そうだ!

 俺の身の回りの世話する女性達に着せている服を着ませんか!?」

 「はい、キモい。

 どうせ若い女の信者にメイド服着せてるんだろうが」

 「な、何でわかるんですか!?」

 「わからないと思ったその思考がビックリだよ。

 テメーの願望を具現化された空間に来るためにメイド喫茶に来てるヤツが金と権力持って『真っ先にやりたい事』なんて決まってるだろうが」

 「さすが、山田様!

 お見通しです!」

 なんか感銘を受けている。


 「で、何のご用ですか?」

 「そりゃこっちのセリフだ。

 バイトをばっくれて牛丼食ってたら、突然コイツに誘拐されたんだよ。

 コイツに誘拐の命令出したの、清明(おまえ)なんだろう?

 何で、俺らは誘拐されなきゃならなかったんだ?

 教団は俺らに何の恨みがあるんだ?」

 「そ、それは・・・」

 「言えねーのかよ?」

 「はい、それだけは。

 すいません」

 「テメーはメイド喫茶、出入り禁止な?」

 「はい、子供の頃から母親に『歌姫を排除しろ』といわれてました。

 父親の預言では『歌姫』が現れるのは今年、今月、今日でした。

 『その者、牛を()む』から始まる預言で『今日、牛丼屋で並と卵を一人で食べている歌姫の少女が世界を救う。歌姫に教団は導かれ共に世界を救うが、教団は世界を救いその役割を終える』と」

 しかし驚くほど簡単に白状したな。

 そんなにメイド喫茶に通えなくなるのが嫌なのか?

 「なるほど。

 テメーはその『預言の歌姫』の出現を阻止しようと」

 「はい」

 「しかし意外だな。

 テメーは日々、面白おかしく働かずにメイド喫茶に通いながら生きていけば良いんだと思ってた。

 『野望』みたいなモンもちゃんとあるんだな」

 「そりゃありますよ。

 『死ぬまで働かずに生きて行きたい』って野望が。

 だから金ヅルの教団がなかなるのは困る訳です」

 見上げたクズ野郎だ。

 『働きたくない』『メイド喫茶に通いたい』ってロクでもない願いのために俺と凛火は誘拐されそうになったのか。


 「でも何かの間違いじゃない?

 私が教団の信者達を率いて世界を救うなんて・・・。

 『歌姫』って私の事なんでしょ?

 私、宗教的な素養なんて0よ?

 ウチは確か浄土真宗だけど」

 そうなんだよな。

 凛火が世界を救える訳がないんだよ。

 カレーの事しか考えてない娘だぜ?

 ふと不思議に思う。

 『何故カレーの事しか考えていない娘が牛丼を食べていたのか?』と。

 きっとそこには深い理由があるのだろう。

 「お金があったら『カレギュウ』にしようと思ったんだけどね。

 ちょっとお金が足りなかったから牛丼にしたんだよねー」と凛火。

 深い理由なかった。

 皿のように浅かった。

 こんな『カレー大好き娘』が世界を救うのか?

 きっとアレだ。

 『シャンクスの娘』的な感じだ。

 『私は最強』的なアレだ。

 「ねえ?

 凛火さんにとって『新時代』って何?」

 「突然何よ?

 ・・・でもそうね。

 『スープカレー』かしら?

 でも本当は私、スープカレーより普通のカレーの方が好きなのよね」

 本当にこのアホが世界を救うんだろうか?

 まぁ良い。

 世界を救うか救わないかはどうでも良い。

 要は俺らをストーキングしてくる組織を解体出来れば問題ないんだ。

 

 「・・・で、今日は突然何の御用ですか?」と角栄。

 「テメー、コノヤロウ・・・。

 人を誘拐しておきながら『用事は何だ?』だと?」

 「誘拐した相手が山田様だとは思わなかったんですよ。

 ご迷惑をおかけしました。

 もう二度とこのような事がないようにいたします」

 「ちょっと待て!

 俺は元から誘拐される謂れはない。

 元を質せば『俺を『歌姫』と勘違いした』のが、俺を誘拐しようとした理由だろうが。

 俺を二度と誘拐しないのは当たり前だ。

 問題は凛火さんだ。

 凛火さんを二度と誘拐しないと誓え」

 「口約束を信用していただけるのですか?」

 「信用出来る訳ないだろうが。

 一筆書け!」

 「それは出来ません。

 我々が『誘拐した事を認める書類』をみすみす残す事は出来ないのです」

 「だったら口約束をするしかないのか?

 そんなもん何の意味もないんだろう?」

 「山田様の命令は聞きます。

 ただ、母親が雇ったならず者に言う事を聞かせるには口約束では話にならないんです」

 「ならず者?」

 「山田様も拉致仕様のワンボックスカーに乗せられたんじゃないですか?

 あんなモノ、元々教団が持ってる訳がないんですよ。

 父親は『クソ』が付くくらいの善人でしたからね。

 だから父親に取り入ろうとした母親の性悪さを見抜けなかった。

 ・・・まあそれは今回は良いとして、母親は反社会的な組織を親衛隊としたんです」

 「『反社会的な組織』?」

 「平たく言えばヤクザですね」

 「母親はどうしてヤクザなんかにコネがあったのか?」

 「元々はありませんでした。

 何故母親が愛人と駆け落ちしたか、わかりますか?

 元からいた信者は母親に何度も言いました。

 『ヤクザに関わっちゃいけない。

 一度ヤクザに関わったらおしまいだ。

 死ぬまで骨をしゃぶられる』って。

 母親はそのアドバイスを聞かなかった。

 だから教団の中をヤクザが徘徊するようになってしまった。

 その『ヤクザ』を母親は一度は排除しようとしたんです。

 でも一度ヤクザと関わった母親にヤクザはつきまといました。

 母親は駆け落ちした事になっています。

 でもそれは本当かどうかはわかりません。

 母親は今、海の底に沈んでいるのかも知れません。

 わかって下さい。

 ヤクザは排除出来ないんです。

 今回の誘拐だって『教団を利用出来なくなったら困る、なくなったら困るヤクザの仕組んだ事』なんです」

 角栄は確かにクズだ。

 でも、必要以上にクズである事を演出しているのかも知れない。

 既に教団の内部に暴力団が入り込んでいる。

 角栄は自分が必要以上に馬鹿であるフリをして、悪事と無関係でいようとした。


 ・・・だとしても、誘拐されたのは許せんわな。

 「じゃあヤクザの組事務所がどこにあるか教えてよ」と俺。

 「え?山田様、闘うつもりですか?」

 「まさか、俺らを誘拐しようとした連中を見ておきたいだけだよ」

 「・・・教える事は出来ません。

 わかって下さい。

 僕はヤツらを裏切る事は出来ないんです。

 アイツらが『歌姫を拐え』と言ったら僕はそれに従うしかないんです。

 決して逆らえません。

 アイツらは教団の泣き所を押さえてます」

 「だから角栄がバラしたってわかんなきゃ良いんだよね?

 絶対に教団には迷惑かけないって。

 俺がヤクザと闘える訳ないじゃん?」

 「・・・わかりました。

 場所だけ教えます。

 でも『組事務所の場所は僕から聞いた』とは絶対言わないで下さい」

 「わかったってば。

 じゃあちょっとアイツ借りて行って良い?」と俺は俺を誘拐した信者を指で指す。

 「なんでアイツなんですか?」

 「だってアイツ、内側からドアを開けられないワンボックスカーを運転してたんだよ?

 あの車、ヤクザから借りたんだよね?

 って事はアイツ、あの車を貸してくれたヤクザの組事務所知ってるんじゃないの?」

 「え?あの強面の人らが沢山いる家ってヤクザの組事務所だったの!?」やっぱりアホは事情が飲み込めてない。

 コイツだったらヤクザも利用しやすそうだ。

 しかしコイツを利用するのはヤクザだけじゃない。

 こちらも利用してやる。

 


 

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