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リクルーター  作者: 海星
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二十八話

 見張りの山賊に猿轡を咬ませて縛って置いておく。

 以前にゴブリンの集落から麻紐を大量に調達しておいて良かった。

 ゴブリンもまた人間の商隊なんかを襲撃して色々な者を強奪したんだろう。

 明らかに『人間が作った物』が麻紐以外にもゴブリンの集落の中には多数存在した。

 『ゴブリンが人間から強奪して、俺がゴブリンから強奪した』と言えなくもない。

 善悪はともかくオーガを拘束する時、麻紐は役に立ったし、今、山賊を拘束するのにも役立っている。


 ルイは俺のパーティに入れている。

 戦闘ではきっと何の役にも立たない。

 でもルイがいないと山賊のアジトの作りが良くわからない。

 それくらい山賊のアジトはややこしい。

 『いざ、踏み込まれても逃げ仰せる作り』なのだ。

 逃げるのは一向に構わない。

 しかし『逃げる時、情報を握っている捕虜は殺していく』のが山賊の常套手段だろう。

 だから捕まってる女の子の安全が担保されるまで、山賊達にバレる訳にはいかない。

 「捕まったのはその女の子一人なの?」と俺。

 「私と一緒に捕まったのは一人だけ。

 でも、既に捕まってた女の子達は何人かいたわ」

 「言いにくいなら黙っていてくれても構わない。

 君らは山賊に乱暴を受けたの?」

 「売られた後の女の子達がどうなったのかはわからないわ。

 でも、山賊達は私達に乱暴な事はしなかった。

 『商品価値が下がるから触れるんじゃねえ!』とか言ってたわ」

 女の子達の家族を平気で殺す連中に倫理なんてある訳がない。

 でも奴らにも『商品を傷モノにしたらいけない』程度の分別があったらしい。

 とにかく女の子達が売り払われる前に、彼女達を助け出さなきゃいけない。


 しかしノープランだ。

 盗賊と闘う気は全くない。

 『悪を成敗しなきゃ!』なんて正義感は全くないのだ。

 でも『酷い目にあっている人達がいる』と聞いて、知っていて何とかする力があるのに放っておいたらきっと飯が不味い。

 それにベガはああ見えて『超』がつく『お人好し』で自分には何の得もないのに俺を助けたんだろう。

 付き合ってみてわかったのだが、ベガはおそらく『お人好し』が災いして何者かに利用された結果『お尋ね者』にされた。

 なのにそれを悔やんでいる様子は全くない。

 俺もあの『お人好し』に影響されてしまったんだろう。

 日本でテレビで災害が起きたのを見ても『大変だなぁ』としか思わなかった。

 でも世の中には『自分の全てを犠牲にしても、困っている人の助けになろう』なんて人間が思った以上にいると俺は知った。

 知ってしまった。

 そんなバカに命を助けられたなら、今度は自分が誰かの助けにならなきゃいけない。

 下らない考え方だ。

 でも俺は『女の子達を救出しよう』なんて考えてしまっている。


 「こっちよ!

 ここの地下牢に女の子達が閉じ込められているわ!」

 だから走るなって。

 こっそり向かうつもりなんだってば。

 倒せるかも知れない。

 でも殺したくないんだってば。

 

 やっぱりと言うべきか。

 地下に下りる階段の前に山賊がいる。

 「いっつもあそこに山賊がいるの?」と俺。

 「ううん、恐らく私が逃げたから警備が厳しくなったの」

 うーん、あそこを通らないと地下には行けない。

 地下に行かないと女の子達は助けられない。

 闘うしかないのか・・・。

 しかしどうやって闘おう?

 俺が悩んでいるとルイが言う。

 「私が囮になるわ」と。

 囮?

 一瞬意味がわからなかった。

 だが次の瞬間、ルイが飛び出して行く。

 「あ、テメーは逃げやがったクソガキじゃねえか!

 どこに消えたのかと思ってたが、こんな近くに隠れてやがったのか!」山賊がこちらに向かって叫ぶんでこちらに向かって走って来る。

 どうやら俺にはまだ気付いてないようだ。

 ルイが走って逃げてこちらへ山賊を誘導してくる。

 勘の悪い俺もようやくルイのやろうとしている事の意図に気付く。

 中々肝が据わっている。

 だからこそ一人で脱出出来たのか。

 物陰に隠れてルイを追いかけてくる山賊を待ち構える。

 目と鼻の先に山賊が来る。

 さすがに山賊も俺の存在に気付く。

 「誰だ、お前!?

 ここで何してやがる!?」

 バレたらしょうがない。

 山賊を排除しなきゃいけない。

 俺はドロップキックを山賊にした・・・つもりだった。

 だが、ぶっつけ本番でやった事のないドロップキックなんて出来る訳がない。

 ドロップキックは『超低空』になった。

 ドロップキックは山賊の揃えた両足首に決まった。

 飛び蹴りは山賊の足元を払う結果となり、山賊は顔から地面に勢い良く突っ込んだ。

 ・・・これ、歯が折れて大変な事になってんじゃないの?

 と一瞬心配したが「殺してない事を安心すべきかも知れない」と、気絶する山賊を放置する事にした。


 階段を降りるとそこは石造りの頑丈そうな地下牢だった。

 そこに閉じ込められていたのが◯人の女の子達だった。

 牢屋には格子がハマッている。

 ケンシロウなら力ずくで格子を曲げて女の子達を救出するんだろうが、俺にそんな事が出来るとは思わない。

 「救出するには『牢屋の鍵』が必要だな。

 誰が持ってるかわかる?」と俺はルイに聞く。

 「わからない。

 多分、見張りの山賊は鍵は持ってない」とルイ。

 ルイ達は山賊にとって商品で、ある程度清潔であることが求められたらしい。

 だから3日に一回水浴びに近くの泉に連れて行かれたらしい。

 その時には女の山賊が女の子達を牢屋から連れ出していたが、その女山賊も牢屋には鍵は常時は持っていなかったとの事だ。

 ならず者の男の山賊に鍵を渡してしまったら、欲情の赴くままに『商品』である女の子達を襲いかねない・・・そう思われていたんだろう。

 泉に連れていかれた時、ルイはモンスターが出たどさくさに紛れて逃げたらしい。


 困った。

 『誰が牢屋の鍵を持っているか?』『どこに牢屋の鍵があるか?』ヒントすらない。

 全員山賊を倒して、拷問して鍵のありかを聞き出すしかないのか?

 いや拷問なんてやった事もないし、ガラじゃない。


 ふと見ると、鉄格子の向こう側の少女とルイが手を握り合っている。

 彼女がルイと一緒に山賊に襲われ、拐われた少女なんだろう。


 ・・・待てよ?

 鉄格子はあっても手は握れる。

 手が握れればワープは何人でも出来る。

 試してみる価値はあるはずだ。

 俺は牢屋の中の女の子達に言う。

 「みんな一列になって手を繋いで!」

 女の子達は突然現れた俺を信用しかねているらしい。

 『どうしよう?』と考えているのがアリアリと表情に浮かぶ。

 一から説明すべきか。

 しかし口で説明して、納得させられるんだろうか?

 『今からワープします』って言って『わーい、じゃあ言われた通りにします!』って展開になるのか?

 なる訳がない。

 説明に時間をかけて、じっくりと信頼を得ていく・・・そんな悠長な事をやっている暇がある訳がない。


 「説明は後でするわ!

 とにかく今は一列になって手を繋いで!

 私を信じて!」とルイ。

 女の子達は一瞬考えたようだが、頷き合ってルイに言われた通り手を繋いだ。

 ルイが鉄格子ごしに端の女の子と手を繋ぐ。

 そして俺はルイと手を繋いだ。

 「絶対に握った手を離さないでね!」

 次の瞬間、視界が暗転し冒険者ギルドのギルドマスターの部屋にいた。

 「随分、大人数だな!?」

 ギルドマスターは突然の訪問に少し驚いたようだ。

 見るとギルドマスターとケイとが昼ごはんを食べている。

 相変わらずこの異世界の料理は質素で不味そうだ。

 「まぁ話は後だ。

 メシを食わせてくれ。

 お嬢ちゃん達も食うか?」とギルドマスター。

 『遠慮する』と言おうとしたが、女の子達が「食べたい!」と言ったので、ご馳走になる事にした。

 山賊達のところでは商品になる女の子は『痩せすぎないように』芋みたいなモノを家畜のように与えられていたらしい。

 だからちゃんとした料理を見るのは久しぶりとの事。

 これがちゃんとした料理ねぇ・・・異世界で料理店やればかなり儲かりそう。

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