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リクルーター  作者: 海星
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十六話

 「恐らく純粋な『迷い人』とは違うんですよ。

 多分『勇者』とかって、世界を救う使命を帯びてこの世界へ『転移』『転生』してきた人らだとおもうんですよ。

 俺は違う。

 言ってみればこの世界に旅行しに来たんです。

 ・・・で、帰りたくなったら元の世界へ帰ります」

 「・・・にわかには信じられない話だな。

 で、この世界へは何で旅行しに来たんだ?」

 「向こうの世界で知り合った人が『霊媒体質』で、霊体に生命力を吸われて死ぬ寸前だったんです。

 だからこの世界へ、その『霊媒体質』の娘を連れて来ました。

 この世界には『霊媒体質』をコントロール出来る『ネクロマンサー』ってジョブがあるらしいから」

 「誰から聞いたんだ?」

 「・・・と言うと?」

 「お嬢ちゃんはこの世界の事は知らないんだろう?

 で、お嬢ちゃんがいた世界には『ネクロマンサー』なんて存在しない。

 この世界でも『ネクロマンサー』を知ってる人間は限られてる。

 『ネクロマンサー』は表にはあまり出てこないからな。

 この世界に来たばかりのお嬢ちゃんが『ネクロマンサー』の存在を知ってる訳がない。

 ましてや『霊媒体質』をコントロールするために『ネクロマンサー』になるしかない、なんてこの世界の住人じゃないはずのお嬢ちゃんが知っているのは変な話なのさ」

 「『ネクロマンサー』の話はこの世界の住人から聞きました」

 「ほう、それは一体誰だ?」

 「俺は『世界旅行』という世界を自由に行き来出来るスキルを持っています。

 それをまだ自覚していなかった頃、俺は半死半生でこの世界の森へ辿り着きました。

 そこで俺を看病してくれた『薬師』、ベガという女性から聞きました」

 「『ベガ』だって!?

 ベガと言えば悪名高い毒婦じゃないか!

 森と一緒に死体も燃えて炭になったと言われている!」

 「誰が『毒婦』よ。

 失礼な話よね!

 私は毒なんて作った事は一度もないわよ!」とナオミさんに抱かれている幼女が言う。

 「この幼子(おさなご)は?」

 「鈍いわね。

 薬で若返ってるけど、私が悪名高き『ベガ』よ。

 まぁ、だいたい悪名はでっち上げられた擦り付けなんだけどね」

 「・・・それを俺に信じろ、と言うのか?」

 「信じろ、とは言わないわよ。

 でもアンナはあんたに全てを正直に話す事にしたみたいだし。

 私も気まぐれに本当の事を言う気になったのよ。

 ・・・それに、アンタ、私らに『ネクロマンサー』を紹介する気なんてないでしょ?」

 「どうしてそう思う?」

 「受付嬢は『少し待って下さい』って言ったのよ。

 つまり『紹介するアテはある』と。

 なのに今日の時点で、冒険者ギルドからは全く音沙汰なし。

 『あぁ、こりゃ紹介する気ないんだな』って思うわよ」

 「鋭いな。

 『ネクロマンサー』は古くから『魔女狩り』の対象になってきた。

 何か天変地異が起きれば『ネクロマンサー』の仕業にされてきた。

 だから『ネクロマンサー』を簡単に仲介なんて出来ない。

 陰に潜んでいる連中を表に引っ張り出す事になるからな。

 痛くもない腹を探られる面倒臭さはアンタが一番理解出来ているんじゃないかね?」

 「わかってるわよ。

 だから、私らが真に『ネクロマンサーを求めている』とアンタに言うために私は正体を晒したのよ。

 『この娘を生かすためにはネクロマンサーにするしかない』ってね。

 ・・・で、どうなのよ?

 私らに『ネクロマンサー』を紹介してくれるの?」

 「お嬢ちゃん達には、この街の近くに巣食ってた『悪名付(ネームド)』のモンスターを狩ってもらったって『借り』が出来ちまった。

 『ネクロマンサー』を紹介せざるを得ないだろう。

 それより気になる事があるんだよ」

 「何よ?」

 「何で『悪名付(ネームド)』のオーガを殺さないで生け捕りにしてきたんだ?」

 「いや『殺さない』んじゃなくて『殺せなかった』んだ」と俺。

 「・・・と、言うと?」

 「投石を武器にしてたんだけど、全く通用しなかった。

 蹴りは効いたんだけど。

 だから殺す為の武器も手段もなかったんだ」

 「当たり前だろうが!」

 「?」

 「ある程度強いモンスターは『物理ダメージ無効』ってスキルを持ってる!

 だから武器屋が売ってる武器には魔力が付与してあるんだ!

 武器での攻撃が効くように!」

 「・・・って事は投石は全く効いてなかった、って事?」

 「その通りだ!

 逆にお嬢ちゃんの蹴りが効いたっていう話がビックリだ」

 「何でなんだろう?」と俺が首を捻る。

 「おそらくだけど、貴女は『超健康体』なのよ。

 貴女は『呪い』も『魔力』も弾き返す。

 貴女に『魔力』の防御は通用しない。

 だから貴女の蹴りには『物理ダメージ無効』を打ち消す効果があったのよ」

 そうだったのか。

 つまり投石はゴブリン程度の弱いモンスターにしか効かない。

 これから投石と棒っ切じゃどうやっても行き詰まる。

 「どうすりゃ良いんだろ?」

 「魔力が付与されてる武器を買えば良いんじゃない?」とナオミさん。

 あ、そうか。

 「別に飛び道具だって魔力が込められた弓も投げナイフだってあるわよ」とベガ。

 俺達が話している後ろでギルドマスターがオーガの首を斬り落とす。

 俺が「どうやって倒せば良いのか?」散々考えたオーガが簡単に殺されるんだから、イヤになっちまう。


 「わかった。

 お嬢ちゃん達に『ネクロマンサー』を紹介しよう。

 ・・・そしてアンタ何て名前だ?」

 「ナオミです」

 「アンタを特例でギルド員にしよう」

 「え?

 良いんですか?

 私はこの世界の人間じゃないし、身分も証明出来ないんだけど」

 「それは『ギルドマスター特権』で何とかするよ。

 お嬢ちゃんだって『記憶喪失の身元不詳』って事だったけど『冒険者をやるのにそれじゃあ不便だ』って『ギルドマスター特権』で身分証としてのギルドカードを発行しただろう?

 アンタにもギルドカードを発行してやるよ」

 それは本当に助かる。

 言ってみればナオミさんは『不法滞在』みたいなモノだ。

 それ以上に衛兵の前で、俺達一向が『本当の身分』を晒して、衛兵が聞こえないフリをしていてくれる事が何よりもデカい。

 衛兵の前でもコソコソする必要がない、つまり『街中で大きな顔をして過ごせる』と言う事だ。

 衛兵は俺達に『利用価値がある』と思ったようだ。

 そりゃ『悪名付(ネームド)』のモンスターを倒せる数少ない冒険者の一人なんだ。

 味方にしない手はないだろう。

 それにこの街の顔役である冒険者ギルドのギルドマスターが『コイツらの身分を保証する』と言っているんだ。

 衛兵がそれに逆らう事が出来る訳がない。

 「『ネクロマンサー』を紹介する。

 が、今日はもう遅い。

 今から先方に話を持って行っても、今日中に返事をもらえるかどうかはわからない。

 明日の昼以降、もう一度冒険者ギルドへ顔を出してくれないか?」とギルドマスター。

 「わかった。

 わかったんだけど・・・」

 「どうかしたのか?」

 「今日、ギルドの依頼をこなしたんだよ。

 『ゴブリンの集落殲滅』っていう。

 その依頼達成報酬を受け取るには遅すぎるかな?」

 「お、おい!

 あのベテラン冒険者でも依頼達成出来なかったあの『ゴブリンの集落殲滅』の依頼をこなしたのか!?」

 「そんな難易度の高い依頼だったの?」

 「『ゴブリンの数が多い』『何故かゴブリンが組織立った動きをする』って言うんで、どの冒険者達も途中で撤退してきていたんだ。

 まさか『悪名付(ネームド)』のオーガが裏で糸を引いてるとは思わなかったが。

 普通なら閉館時間以降は依頼達成報酬は渡せない。

 閉館時間以降に金庫は開けたくないからな。

 でも『どうしても』って言うなら今回は今からでも依頼達成報酬を支払おう。

 お嬢ちゃん達は『悪名付(ネームド)』を討伐してくれてたから依頼達成報告が遅くなったんだ。

 咎められるような事は何もない。

 ・・・でも参考までに、その『どうしても』って事情を話しちゃくれないか?

 力にお嬢ちゃんらの力になれるならなりたい」

 「今日中に大金がどうしても必要な理由は『少しでも良いモノが食いたい』んだ。

 どうしてもこの世界の食い物は質素で美味くない」

 一瞬キョトンとした表情のギルドマスターが破顔し、大声で笑い出した。

 「だったら俺のオススメの定食屋で、俺のツケで好きなだけ食えば良いぜ!」 

 その晩、俺はこの世界にも美味いモノはある事を知った。

 その晩行った定食屋はまるで日本の定食屋のようだった。

 いや『のれん』『ちょうちん』そして料理の内容・・・定食屋はあまりにも日本料理屋だった。

 それは偶然じゃない。

 日本からの迷い人が他にも結構いる事を俺は知った。

 だが定食屋の店主は迷い人じゃなかった。

 迷い人は店主の祖父で既に他界していた。

 まぁ、全ては推測でしかないが。

 しかし店主の祖父が考案した、というメニューを見るとそうとしか思いようがない。

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