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リクルーター  作者: 海星
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十七話

 気絶したように爆睡していた。

 あまりにも昨日の闘いが壮絶だったのだろう。

 細かい打撲や擦り傷はベガの薬で消えたが、どうやっても疲れは残るらしい。

 ドリンクで無理矢理疲労を消しても疲労はどこかに残っている、という事だろう。

 起きたら既に太陽は高かった。

 いや、地球から見る太陽とは違う太陽なのかな?

 異世界がどこにあるのかはわからない。

 銀河系の惑星ではないのかも知れない。

 生命が日の光を浴びないと生きていけず、この世界にも太陽のようなものがあるんだ。

 だったらもうアレは太陽で良いじゃないか。

 話は脱線してしまった。

 とにかく昼頃、冒険者ギルドへ行く約束だった。

 急いで身支度をして冒険者ギルドへ行く。

 身支度と言っても下着の上に丈夫な服を着るくらいなのだが。

武装を整えるつもりはない。

 いや、なかった。

 だいたいが異世界で生活する気がなかった。

 「ナオミさんの生命維持にネクロマンサーのスキルが必要で、ネクロマンサーには異世界でしかなれない」と言うのだから、仕方なく異世界へ来たのだ。

 で、ナオミさんにネクロマンサーの技術を教えてくれる人を探す間、冒険者の真似事をして日銭を稼いでいる。

 本当に冒険者として生計を立てる気はない。

 でも、暇で『自分の為に異世界に来たのにお荷物』という引け目を感じているナオミさんが「私も冒険者パーティに入る!」と言い出した。

 『霊媒体質』のナオミさんは魔力を霊達に吸われて体調を崩し、最悪死に至る。

 いざという時のためにレベルを上げて魔力を増やしておく事は、自分の命を守る事に繋がるだろう。

 だからナオミさんのパーティ入りを認めた。

 しかし色々間違っていた。

 生半可な準備で冒険者なんてやって良い訳がない。

 ある程度の強さのモンスターは『物理ダメージ無効』のスキルを持っていて当然なのだ。

 だから魔力でコートされている武具を初級冒険者でも準備しておかなくちゃいけない。

 いつ『物理ダメージ無効』のスキルを持った敵と出会(でくわ)すかわからないんだから。

 冒険者ギルドへ行く前に武具屋に寄る。

 魔力でコートされた武器を買うためだ。

 しかし飛び道具で闘いたいなぁ・・・。

 出来る事なら、剣とかで力比べしたくないなぁ。

 昨日のオーガみたいな、いや、それ以上の怪力モンスターなんてきっと山ほど存在するんだ。

 そんなヤツらと力で競いたくはない。


 武具屋に入る。

 「いらっしゃいませ・・・」

 愛想のない女の子が出迎える。

 こんなもんなのか?

 いや愛想は期待してなかったが、歓迎されてないように感じる。

 貧乏に見えるのか?

 失礼な!

 金ならちょっとは持ってまっせ!

 何せ、達成困難依頼を達成して、『悪名付(ネームド)』のオーガとゴブリンを山ほどの討伐報酬も手に入ったからね。

 ちょっと見栄を張りたくなる。

 「この店で一番良い武器を頼めるかな?」と俺。

 「・・・・・」女の子が壁にかかっている大剣を指差す。

 「・・・・『斬馬刀』、ドラゴンだって一刀両断出来る。

 ・・・力さえあれば・・・」

 「力がなかったら?」

 「『斬馬刀』を持ち上げる事すら出来ない・・・」

 俺は『斬馬刀』を壁から外そうとする。

 しかし『斬馬刀』はピクリともしなかった。

 俺の力では持ち上げるどころか壁から外す事すら出来ないようだ。

 うん、元々俺の身軽さを殺すような武器は望んじゃいない。

 負け惜しみじゃないぞ!

 「これじゃなくて、身軽さを活かせる武器はないかな?」

 「・・・もう少し具体的に聞かないとわからない」

 「えっと、軽くて投げれる・・・みたいな」

 「長距離攻撃、弓矢が希望?」

 「弓矢を射る技術はないんだ。

 でも投擲は得意かな?

 投げられる武器はないの?」

 「投げナイフとか・・・」

 「そう!

 そんな感じの!

 ・・・でも、投げナイフに魔力って付与されてるの?」

 「魔力は付与されてない。

 でも『魔力を付けて投げるタイプ』の投げナイフならある」

 「『魔力を付ける』?」

 「矢もパチンコの玉もそれ自体に魔力を付与していたら手間もかかるし、お金がいくらあっても足らない。

 だから、魔力が充満した入れ物の中に飛び道具を入れておく。

 それで魔力が付いている飛び道具が完成する」

 「じゃあ投げナイフ自体は?」

 「ただの投げナイフ。

 魔力が付与されているのは投げナイフ入れ。

 そこに入れておけば小石でも魔力がこびりつく」

 「そ、それをちょうだい!」

 「・・・投げナイフ20本セットが銀貨5枚、『魔力付与投げナイフ入れ』が金貨1枚」

 うーん、高いのか安いのかわからない。

 ただ言い値で買うのもなんだか良くない気がする。

 「ち、ちょっとはまからない?」

 「ムリ」女の子はにべもない。

 「じゃあオマケ付けてくれない?」

 「ムリ」

 店の奥から店主らしき恰幅の良い男が出てくる。

 「『もう少し愛想を良くしろ!』って言ってるじゃねーか!」店主が女の子に言う。

 「ムリ。

 笑えない。

 笑った事ないし。

 それに前に勝手に値段をまけたら殴ったじゃない?」

 聞き捨てならない。

 こんな女の子をオヤジは殴ったのか?

 俺はムッとしながら女の子を庇う。

 「別に良いから。

 何でオヤジはこんな女の子を殴るんだ?」

 「コイツは役立たずなんですよ。

 コイツの適職は『ビーストテイマー』なんですよ。

 それをこの武具屋で雇ってやってる、ってワケです」

 「何で『ビーストテイマー』だとお情けでこき使われなきゃいけないんだ?」

 「この世界に『(ビースト)』はいないのよ。

 もちろん『魔獣(モンスター)』ならいるわ。

 500年前にこの世界が瘴気で溢れた時に、瘴気を浴びた獣はモンスターになったと言われているわ。

 残った数少ない獣もモンスターに絶滅させられた、という言い伝えが残っているわ」

 だからウサギみたいなモンスター、ネズミみたいなモンスター、イノシシみたいなモンスターはいてもウサギもネズミもイノシシもいないのか。

 「でもモンスターだって家畜化されているし、ビーストテイマーの役割がないって言うのはおかしくない?」

 「家畜化されたモンスターに言う事を聞かせるのも、モンスターを使役して闘わせるのも『ビーストテイマー』じゃなくて『モンスターテイマー』なのよ。

 この世界で『ビーストテイマー』に与える仕事はない、と言われているのよ」

 無性に腹が立った。

 『適職』とは望んでなれるモノではない。

 ベガは『薬師』と言う適職を得たせいで、お尋ね者になった。

 ナオミさんは地球にはない『ネクロマンサー』という適職のせいで死にかけた。

 この女の子は異世界に獣がいないせいで『ビーストテイマー』が適職なばかりに、理不尽にこき使われ『笑った事がない』なんて悲しい事を当たり前のように言う。


 「オッサン、ナイフ入れと投げナイフで金貨三枚置いとくよ」

 「毎度あり!

 けど余分過ぎません?」

 「余った分はこの女の子を連れて行く『迷惑料』だよ。

 人身売買する訳じゃない。

 この女の子をこの劣悪な環境から解放したら、あとは自由にさせるよ」

 「・・・良いんですかい?

 その笑いもしない不気味な役立たずに金貨一枚以上払って」

 「関係ないよ。

 俺がそうしたいだけだから」

 「・・・そうですか。

 金貨一枚以上を余分にもらったからには余計なお節介を言わせて下さい。

 この街に限らず、この国には適職に恵まれずに親に捨てられた孤児が沢山います。

 何も酷い待遇を受けているのはコイツだけじゃない。

 むしろコイツなんてマシな部類です。

 お客様にそんな子供達を全員救えますか?

 救えないなら黙って見て見ぬフリをする事をオススメします」

 「忠告は聞いておこう。

 だが俺はスキル『適材適所』を持っている。

 必ずやこの子の輝ける職場を見つけて見せる」

 「この世界で『ビーストテイマー』の輝ける職場ですか!?」店主はバカにしたように驚いてみせる。

 俺は女の子の手を引いて、武具屋を後にする。


 「言ったら失礼かもだけど、貴女の行動はこの国じゃ『偽善』と言われる行動よ」とベガ。

 「だろうね。

 でも『獣』の居所にはアテはあるんだよ。

 そこでこの子は沢山の『獣』をテイムしてもらうつもりだよ」

 「『アテ』?

 この世界に獣はいないはずよ?

 『どこかで生きている』なんて可能性すらないのよ?

 生き残った獣達は瘴気を浴びて、漏れなく魔獣に変化したんだから」

 「『この世界には』いないかも知れないね。

 でも『地球』には獣が腐るくらいいる。

 そんな事より昼飯をサッサと食べて冒険者ギルドへ向かおうよ」

 ベガは俺の言う事を全く理解出来ていないようだ。

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