十二話
目標額が貯まった。
早速冒険者ギルドに依頼を出す。
いつも掲示板から『薬草採取』の依頼のチラシを探して請け負っていたが、今度は『依頼のチラシを貼る側』になった訳だ。
「では依頼を請け負ってくれる冒険者が現れるまでお待ち下さい」と受付嬢。
「どれくらい待てば良いの?」
「受付嬢から『依頼を受けられそうな冒険者』に話を持っていきますので、全く受けてくれる冒険者がいない、という事はないでしょう。
勿論、不人気な依頼はあります。
①危険な依頼。
②依頼料が安い依頼。
③依頼主が信用ならない依頼。
④受ける事で悪評が立つ依頼。
等々、今回の依頼はそのどれにも当てはまりません。
確かにアンナさんは今回出す依頼が初めてで信用はありませんが、依頼料を前金で支払っているんでお金をもらいそびれる可能性はありません。
しかしネクロマンサーというジョブはそんなに多いワケじゃありません。
ですので依頼を出して、すぐに請け負ってくれる人が出てくる訳じゃありません。
・・・そうですね。
一週間程度を目安に待ってもらえないでしょうか?」
『イヤです。そんなに待てません』なんて言えるワケがない。
宿泊先の宿の連絡先を受付嬢に伝えて、冒険者ギルドを後にする・・・前に、貯まりまくったモンスターの討伐証明部位をギルドの受付嬢とは違う別の窓口へ提出する。
やたらナオミさんが「私が討伐したんだ」と自慢気な顔だが、ナオミさんは一匹たりともモンスターを倒してはいない。
確かにナオミさんは俺と同じパーティに所属していたが、ドラクエⅢでレベル上げるために、レベル1のヤツをパーティの中に1人いれたりしたじゃん?
あんな感じ。
ただパーティの中にいただけ。
でも戦闘には全く役に立たない『翻訳スキル』を覚えて、この世界の人達とコミニュケーションがとれるようになって嬉しそうだ。
『翻訳スキル』って別にユニークスキルじゃないのか。
ベガが言うには「ユニークスキルじゃないけど取得する人は本当に珍しい」との事だ。
日本の人達とコミニュケーションが取れないベガはちょっと悔しそうだ。
それはそうと戦闘に役立つスキルを俺としてはナオミさんに覚えてもらいたい。
戦闘の時、キャーキャー逃げ回るナオミさんは正直ウザい。
それに攻撃は出来ないが、守備力が上がったナオミさんはハッキリ言って弱いモンスターにダメージは受けない。
キャーキャー言ってるのも『カマトトぶって』いてイラつく。
早くネクロマンサーとして一人立ちして欲しい。
囮になってくれているウチはまだ良かった。
中途半端にレベルが上がって「いるだけ」になってからのニートっぷりが半端じゃない。
「この依頼なんてどうかしら?」
翻訳スキルで文字が読めるようになってから「この依頼はイヤだ」「この依頼を受けたい」なんて受ける依頼に口を挟んで来るようになった。
ウザさ倍増だ。
ナオミさんが選んだ依頼は『ゴブリン集落の殲滅』だ。
そりゃ刺激的な依頼だろう。
その上自分は逃げ回っているだけで危険性はない。
今までもゴブリンは何回か討伐した。
ゴブリンの攻撃力ならナオミさんにとって危険性は少ない。
また、ゴブリンの『速さ』ならナオミさんは逃げきれる。
対して俺はゴブリンを相手にしたくはない。
人間型のモンスターを殺すのにはまだ抵抗がある。
それにゴブリンには拙いながらも知恵がある。
ゴブリンは簡単な罠を仕掛けていたりする。
致命的な罠は仕掛けて来ない。
しかし『ゴブリンの罠にハマッた』という事実は屈辱的だ。
『ゴブリンの罠』は『三才児のイタズラ』に似ている。
子供が「うんこ、うんこ」言うようにゴブリンの罠は汚物関連の罠が多い。
敵を誘い込んだゴブリンを追いかけて行ったら狼のウンコを踏む。
ウンコを踏んだ俺を見て、ゴブリンがバカにしたように集団で笑う。
イヤなんだよ!
ゴブリンを相手にしたくないんだよ!
ナオミさんの方を見ると、大真面目に言っているようだ。
「杏奈のレベルはもう弱いモンスターを倒してても上がらなくなってる。
だからこの中で杏奈のレベルが上がる可能性がある依頼って『ゴブリン討伐』だけじゃない?
私もレベル上がらなくなってきてるし」
そうは言うけど、ナオミさんはウンコ踏んでゴブリンに笑われた事がないから・・・ナオミさんもベガもこの依頼オススメなのね。
多数決でこの依頼を受けるしかないみたいだ。
しかし、ゴブリンと闘うのもウンコを踏むのも俺だぞ!?
おかしくないか!?
何で俺の意見が尊重されない!?
俺は仕方なく依頼書を壁から剥がすと、ギルドを受付嬢のところに持って行った。
この時、ゴブリンが遥か上級モンスターに操られているとは・・・。




