十一話
「ねえ、何か私に出来る事はない?」とナオミさん。
ベガと二人で草むらに隠れていてもお互い言葉が通じない。
気が張っているウチは良かったけれど、だんだん退屈になってきたんだろう。
油断は大敵だ。
『好奇心、猫を殺す』なんて諺もある。
俺が闘っている最中、ベガとナオミさんはひたすら薬草を摘んでいる。
「モンスターと闘うのは危険だよ?」
「子供でも小遣い稼ぎで街の外に出るんでしょう?」
「でも子供はモンスターとは闘わないよ?
薬草を摘むだけで」
「私もモンスターとは闘わないわよ。
ただ『杏奈のパーティに入れて』ってだけで」
「『パーティ』?」
「『パーティ』って知らない?
良くネットゲームなんかで、一緒に冒険する仲間を『パーティ』なんて言うのよ」
それは知ってるよ。
そこまでゲーム音痴じゃない。
ただ、この異世界で本当にゲームと同じようにパーティなんてモノがあるかどうかがわからない。
「ベガ、ナオミさんが俺のパーティに入りたいんだってさ。
それって可能?」
「へー。
向こうの世界にも『パーティ』の概念があるのね。
貴女が承認すれば『パーティ』にナオミを入れるのはワケないわよ。
でも良いの?
ナオミ、多分全く闘えないわよ?
持ってるスキル『愛想笑い』と『ため息』だけだし、あ、パッシブスキルで『霊媒体質』っていうのがあるけど」
「しかし社会人って大変なんだな。
19歳で『愛想笑い』を覚えるのか。
それはともかく『パッシブスキル』って何だ?」
「使おうとするんじゃなくても、いつも発動してるスキルの事ね。
例えば踊り子なんかの『魅了』ってパッシブスキルなんかは魅了しようとしてスキルを発動させてるワケじゃないでしょ?
踊り子の躍りを見たらいつだって『魅了』される可能性があるじゃない」
なるほど。
つまりナオミさんはナオミさんが意識しなくても霊を呼び寄せてしまう、と。
でも、ナオミさんが俺のパーティに入ってくれるのは正直助かる。
・・・というのも、最近レベルが上がってパラメーターが上がってきたせいか、モンスターが俺を見ると逃げ出す事が増えてきたのだ。
もっと強いモンスターと闘いたい。
しかしベガとナオミさんを連れて危険な場所に行きたくない。
ベガは大丈夫だろう。
ベガは元々危険な森の中に住んでいた。
危険を回避する術をおそらく沢山持っている。
しかしナオミさんは全く身を守る術を持っていない。
しかもこの世界で一番、この世界の知識がないだろう。
ハンディ・オブ・ハンディ、足枷・オブ・足枷だ。
そのナオミさんが『自分も闘いたい』と言い出した。
俺らが敵の強いところに行く上で、ナオミさんのレベルアップは必至だった。
せめて自分の身を護れるくらいにはなって欲しい。
大丈夫、後ろで防御を固めておいてくれれば俺が遠くから『レーザービーム』でモンスターに石を投げつけて戦闘が終わる。
「わかった。
パーティ加入を承認するよ。
でも絶対に前に出ないでね。
俺の後ろに隠れていてね!」
こうしてナオミさんがパーティメンバーに加わった。
「私もパーティに加わった方が良い」とベガ。
「闘えるなら。
闘えないならやめて?
二人を護りながらモンスターと闘う余裕はない」
「わかったわ。
草むらに隠れてるわね」
闘えないんかい!
ウェアウルフがナオミさん目掛けて走ってくる。
『弱点を狙う』という作戦の定石はモンスターも同様みたいだ。
しかしナオミさんは囮だ。
ウェアウルフとナオミさんの間には俺が隠れている。
俺は遠くから走って来るウェアウルフ目掛けて小石を投げる。
小石はウェアウルフの眉間にめり込み、そのままウェアウルフは動かなくなる。
この戦法は凄い効率的だ!今までの逃げるウェアウルフを追いかけ回すのよりよっぽど良い。
しかしナオミさんはモンスターから見て本当に『弱者』なんだな。
凄い勢いで標的になる。
そして俺はナオミさん目掛けて突っ込んで来たモンスターを狩りまくる。
これまで一日に十匹モンスターを狩れば上出来だった。
逃げるし現れないし。
でもモンスターはナオミさんを囮にしている限り次から次へ現れる。
今日既に百匹以上はモンスターを狩っているだろう。
ナオミさんも俺のパーティに入って経験値を得ているならかなりレベルが上がっているはずだ。
なのにいまだにモンスターがナオミさん目掛けて飛びかかってくる。
どれだけ弱いねん!
これはあと一日ナオミさんを囮にすれば冒険者ギルドに依頼を出す目標額が貯まりそうだ。




