第3章 数字
二日目。
俺は朝から、人の数字を見るようになっていた。
コンビニの店員。
**¥1,200**
駅で見かける老人。
**¥4,000**
クラスメイト。
**¥2,000**
先生。
**¥12,000**
数字は人によって違う。
年齢でもない。
収入でもない。
見た目でもない。
そして何より。
俺が昨日まで知らなかった人ほど、数字が小さい。
そこで一つの考えが浮かんだ。
――人との距離。
試してみることにした。
マンションの管理人を見る。
**¥300**
毎日顔を合わせる。
でも、それだけだ。
名前すら知らない。
学校のクラスメイト。
**¥2,000**
話すことはある。
けれど、親しいわけではない。
幼い頃から知っている幼なじみ。
**¥30,000**
数字が一気に大きくなった。
「……やっぱり」
そして。
親友の名前を思い浮かべた。
その瞬間。
視界に数字が浮かんだ。
**+¥300,000,000**
「…………」
息が止まった。
三億円。
俺の借金と同じ。
そこで、すべてがつながった。
猫の三十円。
管理人の三百円。
知り合いの数千円。
幼なじみの数万円。
母親の二億円。
そして親友の三億円。
数字は、その人間そのものの価値じゃない。
**その人間が、自分にとってどれだけ大切なのか。**
そして。
**その人を失ったとき、自分が得られる金額。**
それが数字だった。
「……殺せば」
口にした瞬間、自分で吐き気がした。
でも。
計算は合っている。
親友を殺せば三億円。
俺の借金は三億円。
つまり――。
返済できる。
俺はスマートフォンを握りしめた。
画面には親友とのメッセージが表示されている。
『明日、会える?』
昨日送られてきたメッセージ。
俺は返信した。
『ああ』
送信ボタンを押した直後。
視界に文字が浮かんだ。
**【返済方法:対象者から徴収】**
「……」
やっぱり。
あの夢は本物だった。
俺は三億円を返すために――。
誰かを殺さなければならない。




