第4章 君を殺せば3億円
三日目。
朝。
母親が朝食を作っていた。
「今日は遅くなるの?」
「……たぶん」
「気をつけてね」
「うん」
母親の横に、
**¥200,000,000**
と浮かんでいる。
この数字を見た瞬間、胸が苦しくなった。
二億円。
俺が母親を殺せば、二億円。
足りない。
あと一億。
そんな計算が頭に浮かんだ自分が嫌になった。
「母さん」
「ん?」
「……何でもない」
「変なの」
母親は笑った。
いつも通りの笑顔だった。
それが、怖かった。
---
夜。
残り時間は一時間を切っていた。
**00:48:12**
俺は指定された場所へ向かった。
親友が待っている。
街灯の下。
一人で。
「来たか」
「ああ」
親友の横には、数字が浮かんでいる。
**+¥300,000,000**
何度見ても同じだった。
「……お前」
親友が言う。
「見えてるんだろ?」
「……何が」
「俺の数字」
沈黙。
親友は苦笑した。
「俺も見えてる」
「……いつから?」
「昨日」
俺の心臓が跳ねた。
「昨日?」
「うん」
親友は空を見上げた。
「昨日、変な夢を見たんだ」
俺は何も言えなかった。
「黒い服を着た奴らが、俺の部屋を囲んでた」
聞きたくなかった。
「そいつらが言ったんだ」
親友が俺を見る。
「国の借金を返済しないと、三日後には殺されますって」
「……」
「目が覚めたら、普通の日常だった」
親友は笑う。
「だから夢だと思った」
そして、自分の横に浮かぶ数字を見る。
「でも、数字が見えた」
俺は俯いた。
「俺はさ」
親友が続ける。
「お前の数字も見えてる」
俺は顔を上げた。
「……俺の?」
「三億」
親友は静かに言った。
「だから、分かってる」
「何を……」
「俺を殺せば、お前は助かる。俺がお前を殺しても.....」
何も言えなかった。
親友は一歩近づいた。
「殺せよ」
「……無理だ」
「三億だぞ」
「無理だ」
「お前が死ぬんだぞ」
「それでも無理だ!」
声が響いた。
親友は黙った。
しばらくして、笑った。
「……そっか」
そして。
「やっぱり、お前はそう言うと思った」
「……何で」
「親友だから」
俺の目から涙が落ちた。
「馬鹿……」
「うん」
「本当に馬鹿だよ」
「知ってる」
二人で笑った。
そして、最後に親友は言った。
「ごめんな。」
その時僕の視界は真っ暗になった。




