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第2章 +¥30
学校へ向かうため、マンションを出た。
エントランスに管理人がいる。
「おはようございます」
「おう、おはよう」
その横には、
¥300
と浮かんでいた。
母親は二億。
管理人は三百。
自分はマイナス三億。
何の数字なのか分からない。
ただ、見る人によって違う。
それだけは分かった。
考えながら歩いていると――。
「ニャッ!」
突然、猫が道路へ飛び出してきた。
「危ない!」
驚いて身体を避ける。
その拍子に、猫がさらに道路の中央へ走った。
直後。
車のブレーキ音が響いた。
短い音だった。
それだけだった。
俺は立ち尽くした。
道路の向こうで、猫が動かなくなっている。
「…………」
何も考えられなかった。
俺が驚かなければ。
俺が動かなければ。
あの猫は――。
視界の端が光った。
+¥30
「……え?」
俺は数字を見た。
自分の数字が、
−¥300,000,000
から、
−¥299,999,970
に変わっていた。
たった三十円。
でも確かに、増えた。
猫が死んだ。
そして俺の借金が、三十円減った。
「……嘘だろ」
その日、授業の内容は何一つ頭に入らなかった。




