怒りまかせの神頼み(1)
手紙を読み、謎は解けた。私の卵好きを知っていたのも、私のしてほしいことを先回りして叶えてくれる理解力も、すべては二回目の人生による賜物。でも、釈然としない。
「はあ……。いちどめの人生で私が何に怒ったか、ちょっとわかるかも」
君は無理を言っている自覚がない。
運よく君を忘れられたとして、愛された日々まで消去できるわけがない。
そんな未来、私が病気になる。脱け殻のように生きるはめになる。それは実質の死だ。そのことを理解した上で、君が、いちど死んだ君が忘れて幸せになれと言うのは悪質、いや、悪そのものである。私はすでに、君に依存している。なかったことになんてできない。
救いがあるとすれば、その選択がよくないと君も理解していることだ。手紙にも、そう書いてある。
「君に会わないと……。このままじゃ納得いかん」
とにかく、君の頼みは聞かない。
聞いたら私が不幸になると知ってもなお望むなら殴り飛ばす。
「ムカつくけど、今はだめ。東真がしてくれたように、私も変わらないといけない」
私は押し花の栞と手紙をブレザーの胸ポケットにしまった。そして立ち上がり、災害用に入れていた硬貨を賽銭箱に投げ入れた。
「神様、私とあの人をどうか引き合わせてください。私は東真に怒らないといけません。そうしないと気が済みません。あの人の居場所だけでもわかるようにしてください。さもないと神様のお家うちを壊してしまうかもしれません」
――その願い、聞き届けた。
誰かの声が頭に響いた途端、目の前が真っ暗になるのだった。
イグサの香りが刺激となって目を開ける。暗くて何も見えなかったが、見つめ続けていると月明かりが辺りを照らし始めた。
縁側の向こうは雪が積もり、銀世界となっていた。寒さは不思議と感じない。
室内のほうに視線を移せば、広い和室でひとり眠っていたようだった。ふすまには松ノ木が描かれている。つまるところ、知らない屋敷にやってきたらしい。
もう少し観察しようと寝返りを打つと、人影があった。私は半身を起こす。
「誰ですか?」
「星奈、久しぶり」
「その声は、東真?」




