つづられた鉄石心(1)
君を捜しに今すぐ飛び出したい気持ちを抱えていたが、私の体は生徒指導室に閉じこめられていた。
私と君がキスしたところを目撃した人物が、生徒指導担当の体育教師に話を盛って密告したらしかった。密告内容は嘘なのだが、体育教師が密告内容を疑いもせず、反省を促してくるのが厄介だ。
体育教師が席を立った隙にスマホを確認すると、メッセージが届いていた。行方不明になっているか確認したくて君に連絡したら、君の母から返ってきたようだ。答えは、イエス。ただし然るべき対応を進めているから待っていてほしい旨が書かれてあった。
待てば見つかるなら、いつまでも待ちます。
でも、あの夢が正夢だとしたら待っているほうが悪手だ。
スマホをプリーツスカートのポケットにしまい、再び目の前の原稿用紙に視線を落とした。
いっそのこと、密告に話をあわせてしまってもいい。別れますとでも書けば、ここから出られるだろう。
しかし、私の指は動かなかった。
――おまえの大事なものを返してもらう。
私は別れたくないし、失いたくもない。そばにいてほしい。君の温もりがほしい。しかし、言葉を尽くせば尽くすほど陳腐に感じる。君が好き。ただ、それだけを伝えたい。でないと、この命が無価値になってしまう。
体育教師は、完全下校時間になるまで何も書けずにいる私を渋々解放した。
私は学校を出た足で、神社に向かった。神主のいない、静かな神社。落ちこんだときに来ると君が言っていた、秘密基地のような場所。
スマホのライトを点ける。君か、せめて手がかりになるものでも見つけられたら……。
そう思いながら周囲を観察していると、地面を掘り起こした跡を見つけた。土の色が違うから、まだ真新しい。私はかばんの中のペットボトルを飲み干し、カッターで丁寧に切ったそれをスコップ代わりにして掘ってみることにした。
出てきたのは、カプセルトイのカプセルだった。ライトを照らすと何かが入っている。
「知らない人のタイムカプセル? でも……」
君関連かもしれない。
手についた土を払い、折り畳まれた手紙をゆっくりと開いた。
「押し花だ。枯れてるけど……。こっちは手紙?」
〈星奈へ。これを読んでいるということは、きみがぼくを捜しているんだと思います〉
間違いない。君の筆跡だ。
確信を持って手紙の続きを読む。
「この手紙を書き残しておくのは、それを止めたい、から。えっ……。捜すなってこと?」
ありえない。
私は目をこらし、君の筆跡でない証拠を探した。しかし、勉強会で何度も見てきた文字だった。
〈じつは、今のぼくは二度目の人生を送っています。理由は長くなるから割愛するけど、人生をやり直せると考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが星奈だった〉




