キャラクターは増やしていい。ただし、役割や個性は被らせない
そう思った直後に、
「この展開なら、もう一人くらい必要だな」
と考えてしまうのが、作者というものなのだが。
だから、完全に増やさないことを目標にするのは、たぶん無理だと思う。
少なくとも私には無理だ。
物語を書いていると、新しい展開が生まれる。
学園モノなら同じクラスになる、同じクラブに所属する、同じバイト先で働くなど。
ファンタジーだと役割が増える。
新しい土地へ行く。
新しい組織が登場する。
主人公が新しい事業を始める。
すると当然、
「この場所にはどんな人がいるんだろう?」
ということを考える。
そして、その土地で主人公と関わる人物を考える。
名前が決まる。
性格が決まる。
気が付けば、新しいキャラクターが一人完成している。
もう、こうなると止められない。
だからこそ大切なのは、
「キャラクターを増やさない」
ではなく、
「増やしたキャラクターをどう扱うか」
「そしてキャラクターに目立った個性をどうつけるか」
「そのキャラクターをずっと出し続ける必要がないようにする」
なのかもしれない。
新しく登場した人物を、必ずしも物語の主要人物にする必要はない。
一度だけ活躍して、その後は舞台の背景に戻ってもいい。
名前があってもいい。
設定があってもいい。
しかし、すべての設定を読者に見せる必要はない。
作者が知っていることと、読者に伝えることは別なのだ。
これは意外と忘れがちだと思う。
作者としては、そのキャラクターについて色々と考えている。
生まれ育った場所。
家族。
過去の失敗。
好きな食べ物。
苦手なもの。
将来の夢。
細かく考えれば考えるほど、そのキャラクターに愛着が湧いてくる。
だが、それを全部出してしまえば、当然ながら物語は重くなる。
だから、
「作者だけが知っている設定」
があってもいい。
むしろ、そのくらいのほうがちょうどいいのかもしれない。
読者には、
「腕のいい職人」
としてしか見えない人物でも、作者の中では、
「実は若い頃に故郷を飛び出して、十年かけて技術を身につけた」
という過去があってもいい。
ただし、その過去が本編に必要ないなら書かない。
書かないからといって、設定が無駄になるわけではない。
その設定を知っていることで、作者はその人物らしい台詞や行動を書けるからだ。
つまり、
「キャラクターを作り込むこと」
と、
「そのキャラクターに出番を与えること」
は、別に考えたほうがいいのだと思う。
これは、今後の自分への戒めでもある。
新しいキャラクターを作ったからといって、必ず活躍させなければならないわけではない。
名前を付けたからといって、主人公の仲間にする必要もない。
一度登場したからといって、何度も再登場させる必要もない。
必要なときに登場し、役目を果たし、物語から去る。
それもまた、立派なキャラクターの役割なのだと思う。
そして本当に重要なのは、作者が好きなキャラクターを増やすことよりも、
「読者が誰を好きになってくれるのか」
を意識することなのかもしれない。
読者が覚えているキャラクター。
また登場してほしいと思っているキャラクター。
主人公との会話をもっと見たいと思っているキャラクター。
そうした人物がいるなら、そちらを掘り下げたほうが、物語は面白くなる可能性がある。
新しいキャラクターを一人追加するより、すでにいるキャラクター同士の関係を一歩進める。
それだけでも、十分に新しい展開になる。
私自身、キャラクターを増やしすぎる癖がある。
おそらく、これからも増える。
間違いなく増える。
たぶん、
「今後はキャラクターを厳選しよう」
と書いた次の章で、新キャラクターを登場させる。
その可能性はかなり高い。
だが、せめて。
新しいキャラクターを出す前に、一度だけ考えてみようと思う。
この人物は、本当に新しく作る必要があるのか。
既存のキャラクターでは駄目なのか。
そして、新しく登場するなら、この人物にしかできないことは何なのか。
その答えがあるなら、増やしてもいい。
むしろ、積極的に増やすべきだ。
物語の世界が広がれば、そこには当然、多くの人間がいる。
主人公だけでは世界は作れない。
仲間がいて。
敵がいて。
協力者がいて。
時には、一度しか会わない人がいる。
多くのキャラクターがいるからこそ、世界は生きているように見える。
だから、キャラクターを増やすことを恐れる必要はない。
ただし。
増やした一人ひとりに、
「この人がいる意味」
を持たせる。
それだけは忘れないようにしたい。
……さて。
そう考えると、今書いている作品にも、
「このキャラクター、既存の誰かに役割をまとめられないかな?」
と思う人物が何人かいる。
逆に、
「いや、この人は絶対に必要だ」
と思う人物もいる。
しばらくは、登場人物一覧とにらめっこすることになりそうだ。
そして、たぶん。
一覧を整理している途中で、
「この役割なら、こういうキャラクターがいたら面白いんじゃないか?」
という新しいアイデアが浮かぶ。
……うん。
やっぱりキャラクターを増やしすぎないようにするのは、難しそうである。




