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7/8

キャラクター、増やしすぎ問題

 キャラクターを増やしすぎるのは良くない。


 頭では分かっている。


 特に長編小説では、登場人物が増えれば増えるほど、一人ひとりの存在感が薄くなってしまう。


 読者からすれば、


「この人、誰だっけ?」


 となりかねない。


 しかし、自分の作品は登場人物が増えやすい傾向がある。


 特にいま書いている『ゲーム開発者だった私だけが都市管理システムを起動できる~滅びた文明を復興して最強国家を築く~』では、それが顕著だ。


 他の作品でも、ヒロインが増えすぎて、差別化できていないのではないかという懸念がある。


 主人公とヒロイン一人、それに物語の中心となる数人くらいなら覚えてもらいやすい。


 しかし、そこに仲間が増え、敵が増え、協力者が増え、各地の領主や商人、兵士、職人、役人などまで名前を付け始めると、あっという間に登場人物の一覧が膨れ上がる。


 作者としては、一人ひとりにちゃんと役割がある。


 この人物は主人公の理解者。


 この人物は対立する相手。


 この人物は情報を伝える役。


 この人物は後々重要になる。


 そんなふうに考えている。


 だから、ついつい名前を付けたくなる。


 そして、名前を付けると今度は、


「せっかく名前を付けたんだから、もう少し出番を増やそう」


 となる。


 これが危ない。


 気が付けば、脇役だったはずのキャラクターが主人公と一緒に行動している。


 さらに会話をさせる。


 過去を設定する。


 性格を考える。


 家族関係まで作る。


 そうしているうちに、いつの間にか一人のキャラクターとして完成してしまう。


 作者としては楽しい。


 ものすごく楽しい。


 だが、読者にとってはどうなのか。


 ここは冷静に考えないといけない。


 作者が十人のキャラクターを覚えていても、読者も十人全員を同じ熱量で覚えてくれるとは限らない。


 むしろ、重要人物が埋もれてしまう可能性がある。


 ただし、だからといって「キャラクターが多い作品は駄目」というわけでもない。


 実際、キャラクターがかなり多い作品でも、それぞれを上手く立たせている作品はある。


 例えば『ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を〈はじめから〉プレイする~』、通称『ダン活』だ。


 私が『ダン活』を読んでいて感じるのは、キャラクターを増やしていくうえで、もう一つ重要なことがあるということだ。


 それは、


「同じような役割のキャラクターを増やすと、二番手以降はどうしても影が薄くなりやすい」


 ということだ。


 特にジョブが同じ場合は、それが分かりやすい。


 アタッカーならゼフィルス、タンクならシェラ、ヒーラーならラナ、スカウトならカルア、錬金術師ならハンナとどうしても最初からいるメンバーが目立ってしまう。


 あ、ロリ好きのシェリアとか、ゼフィルス大好きなリーナ&アイギスなどは出番があるので、別の意味で目立ってますが。


 ジョブが同じなら、どうしても戦闘で担う役割も似てくるからだ。


 同じ系統のジョブを持つキャラクターが何人もいると、読者からすれば、


「この二人は何が違うんだ?」


 となりやすい。


 もちろん、細かく見れば性格も違うし、装備も違うし、戦い方も違う。


 作者の中では明確に別のキャラクターとして作っている。


 しかし、それが読者にも同じように伝わるとは限らない。


 特にアタッカー系のキャラクターは、この問題が起こりやすい。


 攻撃力が高い。


 敵を倒す。


 強力なスキルを使う。


 ボスに大ダメージを与える。


 もちろん一人なら十分に魅力的なのだが、同じような役割のキャラクターが増えてくると、どうしても比較される。


 実際、必殺技の名前を叫ばれても、正直なところ、ほとんどのキャラクターがどんな攻撃をしているのか、読者には想像しづらい。


 技そのものに強烈な個性があれば別だが、名前だけでは、


「強力な攻撃をした」


 というところまでしか伝わらないこともある。


 そうなると、一番目立つキャラクターが強く印象に残り、その後に登場したアタッカーは、


「この人も強い人」


 くらいの認識になってしまう。


 つまり、単純に人数を増やすだけでは駄目なのだ。


 同じジョブなら、戦い方を大きく変える。


 性格を変える。


 立場を変える。


 主人公との関係を変える。


 あるいは、戦闘以外の部分で強烈な個性を持たせる。


 そうしないと、どうしても先に登場したキャラクターの影に隠れてしまう。


 これは『ダン活』に限った話ではない。


 パーティーものの作品なら、かなり普遍的な問題だと思う。


 例えば、


「剣で戦うキャラA」


「剣で戦うキャラB」


「剣で戦うキャラC」


 と並べた場合、三人全員に強い個性を与えるのは意外と難しい。


 一方で、


「剣士」


「魔法使い」


「回復役」


「盾役」


「商人」


 というように役割が違えば、それだけでも読者は区別しやすい。


 つまり、キャラクターを増やすときには、


「人数」


 だけではなく、


「役割の重複」


 も考えなければならない。


 もう一つ、方向性は違うが参考になるのが『お嬢様バズ』だ。


 そもそも、こちらは登場人物がさほど多くない。


 役割の被りも比較的少なく、それぞれのキャラクターの個性が際立っている。


 だからこそ、一人ひとりのキャラクターや、キャラクター同士の関係性に焦点を当てやすい。


 単純な能力ではなく、


「このキャラクターは誰とどういう関係なのか」


 という部分そのものが個性になる。


 そのため、少ない人数でもキャラクター同士の掛け合いや関係性を使って、十分に物語を動かすことができる。


 つまり、


「キャラクターを増やして世界を広げる」


 という方法もあれば、


「キャラクターを絞って、一人ひとりを深く描く」


 という方法もあるわけだ。


 どちらが正しいという話ではない。


 作品に合ったやり方を選ぶ必要がある。


 結局のところ、重要なのは単純な人数ではない。


 キャラクターが増えたとしても、読者がその人物を認識できる「目印」があればいい。


 口調。


 性格。


 立場。


 主人公との関係。


 得意分野。


 戦い方。


 あるいは、そのキャラクターが登場したときに必ず起こる出来事。


 こうした特徴があれば、読者は名前を完全に覚えていなくても、


「ああ、この人か」


 と認識できる。


 逆に言えば、キャラクターを増やすときに怖いのは、人数そのものではない。


 似たような立場。


 似たような性格。


 似たような口調。


 似たような役割。


 そんなキャラクターを大量に投入してしまうことだ。


 これは本当に覚えにくい。


 特に長編になると、


「この人は前に出てきたあの人と何が違うんだ?」


 となってしまう。


 だから、キャラクターを増やすのであれば、一人ひとりに「この人物ならではの役割」を持たせる必要がある。


 私の場合、物語の舞台が広がっていくと、それに合わせて新しい勢力や地域が登場する。


 政治の話をすれば政治家が必要になる。


 商売の話をすれば商人が必要になる。


 軍事の話をすれば武将や兵士が必要になる。


 農業の話をすれば農民や技術者が必要になる。


 主人公が何か新しいことを始めるたびに、


「それなら、この分野を担当するキャラクターを一人出そう」


 と考えてしまう。


 結果。


 キャラクターが増える。


 増える。


 さらに増える。


 そして最終的には、


「……この人、誰だっけ?」


 と作者自身がなりかねない。


 いや、本当に危ない。


 だから、キャラクターを増やす前に、


「この人物は本当に必要なのか?」


 と、一度考える必要がある。


 既存のキャラクターに兼任させられないか。


 名前のない役人や兵士、店員として処理できないか。


 あるいは、すでに登場しているキャラクターに新しい役割を持たせることはできないか。


 そして、もし新しいキャラクターを追加するなら、


「既存のキャラクターと何が違うのか」


 を考えたほうがいい。


 特に同じジョブや同じ役割のキャラクターを追加する場合は、なおさらだ。


 単に、


「もう一人、強いアタッカーを増やそう」


 では、先にいるキャラクターの影に埋もれてしまう可能性が高い。


 だったら、


「同じアタッカーでも、この人にしかできないことは何か?」


 を考える。


 それがキャラクターの個性になる。


 キャラクターを増やすことそのものが悪いわけではない。


 『ダン活』のように多くのキャラクターを登場させる作品もあれば、『お嬢様バズ』のように人数を絞ってキャラクター同士の関係性を深く描く作品もある。


 問題なのは、増やした結果として、物語の焦点がぼやけることだ。


 新しいキャラクターを出すなら、その人物が登場することで物語が面白くなる必要がある。


 主人公との関係が変わる。


 新しい情報が出る。


 対立が生まれる。


 物語の世界が広がる。


 あるいは、読者がその人物を好きになれる。


 そういう明確な理由が欲しい。


 単純に、


「この設定を説明するには、このキャラクターがいたほうが便利だから」


 だけでは、少し弱い。


 便利な説明役を増やしていくと、物語がどんどん「説明するための人」で埋まってしまうからだ。


 とはいえ。


 キャラクターを作るのが楽しいのも事実である。


 設定を考えていると、


「この人物ならこういうことを言うだろうな」


 とか、


「この人と主人公を会わせたら面白そうだな」


 とか、次々とアイデアが出てくる。


 だからこそ難しい。


 増やしたくなる気持ちを抑えつつ、必要なところでは思い切って増やす。


 そして増やすなら、既存キャラクターと役割が被らないようにする。


 結局のところ大切なのは、


「キャラクターの人数」ではなく、


「そのキャラクターが物語の中で何をしているのか」


 なのだと思う。


 十人のキャラクターが全員似たような役割をしているより、五人しかいなくても、それぞれが違う立場や目的を持って動いているほうが面白い。


 逆に、二十人、三十人とキャラクターが増えても、それぞれに明確な役割があり、読者が見分けられるなら、それは作品の武器になる。


 だから今後は、新しいキャラクターを思いついたときほど慎重になろうと思う。


 ――まあ。


 そう思った直後に、


「この展開なら、もう一人くらい必要だな」


 と考えてしまうのが、作者というものなのだが。

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