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147 ベル

 ブラックマンバを取り上げられ、錆の浮いた鉄の檻の中に入れられてから取り調べが始まった。

 保安官は詰所の机に行儀悪く足を乗せると、俺というより檻に向かって話すように声をあげた。

「丸耳がここで何の用だったんだ?何故あの男を殺した。」

「宇宙港でトラブルがあって、俺の船が出港できなくてね。町をぶらついてたら男に絡まれた挙げ句、銃の早撃ちを試してきたんで応じただけだ。」

「あいつは飲んだくれで手に負えない奴だった。それでも殺人は殺人だ。俺の権限で縛り首になる前に、何か釈明はあるか?」

「奴は俺を撃つつもりだった。正当防衛だ。弁護士を呼んでくれ。」

「弁護士?」

 保安官は笑いながら口髭をなぞった。

 エルフは体毛が薄い。髭は年長者の証だった。

「口だけは一丁前だな。外星人。」

「それはどうも。」


 俺は地べたに座り、欠伸あくびをすると、電脳を起動させネットサーフィンの準備を始めた。

 どんなに離れていても、規制されてない限りネットには繋がるものだ。

 弁護士派遣サイトを眺めていると、一人のガンマンが詰所の中に入ってきた。


 くすんだカウボーイハットに皮のジャケット、ジーンズを履いており、ガンベルトにはウェーブ銃らしきリボルバーを下げている。


 初めは長髪の男だと思った。

 だが、豊かな黒髪はやがて、ガンマンが女であることを俺に気づかせてくれた。


「ベル。何しに来た?」

 保安官が座り直した。

「囚人を引き取りたい。」

「こいつは俺の町につくなり銃の撃ち合いを始めたイカれたヤローだ。保安官権限で縛り首にする。」

「検索してないのか?」

「何をだ?」

「こいつはスペースニートだ。」

 女が俺を見た。

「スペースニート?」

渦巻うずまき銀河の有名人さ。海賊同盟を崩壊させた立役者らしい。」

「その有名人をどうするってんだ?…まさか。」

「アタシの手伝いをしてもらう。保釈金は幾らだ。」

 女は保安官が提示した額をプラスチック紙のキャッシュの机の上に置くと、俺の檻の前に来た。

「ここから出たいか?」

「出たいが、俺に何の用だ?」

「アタシはベル。あるギャングに夫を殺され、息子が攫われた。あんたには息子を取り戻す手助けをしてもらいたい。」

「分かった。後で詳しいことを教えてくれ。」

 ベルは鼻白むような表情を浮かべた。

「ヤケに素直だな。」

「助けて貰うんだから、そりゃ協力するよ。スペースニートの肩書にかけて、君の後ろを撃たないことも誓わせてもらおうか。」

 おどけて肩をすくめた俺に、ベルはニコリともしなかった。


 仮保釈された俺は、ベルと共に馬らしきものに乗った。線が細く、馬というより小枝で編んだ木馬といった感がある。

 知能が高く人間に従順。宇宙ではそういう動物が溢れている。

「どこへ向かうんだ?ギャングの住処を襲いに行くのか?」

「それは後だ。まずはキャンプで協力者達と合流する。」

「協力者?『仲間』じゃなくてか?」

「そうだ。」


 馬上で舌を噛むのに気をつけながら、俺はベルの言葉に耳を傾けた。


 ベルは凄腕の元賞金稼ぎで、農家のヘクター・パターソンと結婚し息子のジョンが生まれてからは、前時代的だが良き妻であろうと決心したらしく、銃を地面に埋めたのだという。

 ある日、血の赤で十字に塗られたズタ袋を被ったイカれたギャングたちがベルのいる村を襲い、金品を奪った後ヘクターを殺害した。

 銃を持たないベルの必死の抵抗も虚しく、まだ8歳に満たない息子のジョンを攫っていったという。

 ベルは前職のコネと経験という名の嗅覚を頼りにギャング団ブラッドクルスのアジトを見つけたが、悲しいかな、彼らの規模から一人では戦いにならないと悟った彼女は、各地を回って腕の立つ奴らをかき集めたのだという。

「協力者ってのは何人いる?」

「私やお前を合わせて8人だ。」

「荒野の七人とはいかなかったか。」

「数が少ない方がいいとでも言うのか。」

「いや、地球の映画さ。」

 俺は片目を閉じた。

「で、そのブラッドクルスってのは何人くらいいるんだ?」

「規模にして50はいる。20人くらいに散らばって住処にいる。そのうち一つを見つけた。」

「息子さんはそこにいるのか?」

「それをこれから確かめるつもりだ。」

「オーケー。ベルさん。息子のジョンくんを取り戻した時点で契約終了でいいな?」

「ブラッドクルスを皆殺しにするのを忘れるな。」

「分かった。」


 やれやれ。縛り首にならずに済んだのは良かったが、骨が折れそうだ。


 荒野から草地へと馬を走らせると、岩向こうに人がいた。

 俺は気合を入れるために、ほっそりした馬型生物の腹を軽く蹴り、速度を上げた。

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