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第66話 猛攻

い、いやいや、無理! 無理ですよ!



目の前には怒りに満ちた神獣ドラゴンが私達を見下ろしています。

とてもではありませんが、私達に勝ち目などあるわけがありません。


私は後ろから攻撃されるのも覚悟でアッシュ達の元へと走り出しました。



「おい、危ないぞ」



アッシュはそんな私に忠告するように言いましたが、どのみちこのままでは私達はドラゴンに殺されてしまいます。

王国の為に命を捨てると言うなら私も本望ですが、こんな所で死んでしまえば只の無駄死にです。


こうなればアッシュを盾にするしかありません。

流石のこの男もそうなれば戦うしかないでしょう。



そう思って私がアッシュの後ろに回り込もうとしたその時でした。



「きゃ!」



走っていた私はアッシュの2mほど手前で何かにぶつかったような衝撃を受け、その場で倒れ込んでしまいました。



「「エリシア様!」」



えっ、なに、壁?



私はアッシュとの間の空間に手を出しますが、そこには見えない壁のようなものがあります。

見えない壁に気付いた私は手でたたいてみますが、壁はびくともしません。


そんな私にセラさんが申し訳なさそうな表情をしながら言いました。



「えっと、すいません。村とケイン君を守るために魔法障壁を張っていますから、申し訳ないのですが……頑張ってください」



……魔法障壁? 



アッシュが言っていたのはこのことだったのでしょうか?



「おいおい、逃げるな、みっともない。俺様に戦えと言っておいてお前はこんな雑魚相手に逃げ出すのか? 国を救いたいと言ったのはお前だろう。覚悟を決めろ」



「王国は救いたいです! ですが、こんなことに何の意味があるのです!? 私だって力さえあったら——!」



母上を殺した帝国と戦いたいです。


レイや父上に任せっきりにしたりせずに。


ですが、力がないのですから仕方がないではありませんか。



「——あるわよ」



エメルさんがそう呟いた後、更に私に言いました。



「少なくとも、そこのドラゴン2体を倒すくらいにはね。私からしたらコイツに剣を向けた時の方がヒヤヒヤしたわよ。大丈夫、勝てるわ、戦いなさい」



勝てる? 私達が?



あまりにも信じられませんが、エメルさんができもしないことをできるというとも思えません。

そもそもこの状況でアッシュやケインはともかくとしてエメルさんやセラさんが止めに入らないというのもおかしいです。



「話は終わったか? そろそろいいか? 人間」



流石に神獣ドラゴンも待ちきれなくなったようです。

逆にここまで待ってくれた事が奇跡かもしれません。

脆弱な私達を後ろから不意打ちする事などプライドが許さなかっただけかもしれませんが……。



「エリシア様……」



エミュラ達が次の行動をどうするか求めるように私を見つめています。

そんなエミュラの言葉に答えるように私はエミュラ達の方へと向かいます。



「エミュラ、カレン、アイル、私に力を貸してくれますか?」



「「もちろんです」」



エミュラ達ははっきりとした声で答えました。

どうやらこの場で覚悟が足りていなかったのは私一人だったようです。



「来なさい。神獣ドラゴン! あなた達などに我が王国は屈っしません!」



私の宣言と同時にエミュラ達は神獣ドラゴンへと剣を構えました。

そんな私達を見て、2体の神獣ドラゴンは大きく口を開けて——。



「そうか、悪いが、これで終わりだ。消し炭にしてやる!」



そう言い終えて、神獣ドラゴンは大きく広げた口から燃え盛る火炎を吐き出しました。



……って、えっ?



見る見るうちに火炎は私達を飲み込もうとこちらへと迫ってきます。



……避けれない。



……死んだ?



攻撃に備えてエミュラ達の後ろに陣取っていた私ですが、これでは位置関係などほぼ意味がありませんでした。



2体の神獣ドラゴンから吐き出された火炎は一瞬にして私達を飲み込んでいきました。

あまりもの迫力に私は目を瞑ってしまった私ですが、いつまで経っても熱さはやってきません。


私は恐る恐る目を開けると、そこには驚きの光景が広がっていました。



……えっ?



私達を飲み込んだかと思われた火炎は私達を避けるように見えない球状の壁に遮られ、内部の空間にいた私達を火炎から守っていたのです。



……セラさんが守ってくれた?



先程のアッシュとの間に張り巡らされていた見えない壁のようなモノを思い出し、セラさんが私達を守ってくれたのだと思いました。



……でもなんで? 私達の力だけで戦えという事ではなかったのでしょうか?



ですが、それならそれで好都合です。

神獣ドラゴンの大きな武器の一つである火炎攻撃を気にすることなく戦う事が出来るのですから。



「エミュラ、カレン、アイル! 火炎が止んだらすぐに斬りかかりなさい! 油断している今なら攻撃が届くかもしれません!」



「「はい」」



私の指示にエミュラ達が頷くと、次第に火炎が見えない壁の外の火炎が収まっていくのが見えました。



そして、視界がクリアになった瞬間を見計らったエミュラ達は私の指示通りに神獣ドラゴンへと攻撃を仕掛けに走り出しました。



「「な、なんだと!」」



自らが吐いた火炎が止み、私達が生きていた事に衝撃を受けたのか神獣ドラゴン2体が驚きの声を上げています。

その所為か、一瞬飛び上がるのが遅れた隙を突き、エミュラ達が神獣ドラゴンへと飛びかかります。



「「はぁぁぁ!」」



「「ぐぉぉぉ!」」



エミュラが一体をカレンとアイルがもう一体へと斬撃を浴びせかけ、神獣ドラゴンが大きな叫び声を上げています。



……効いている? ミスリル製の剣じゃないのに?



聞いた話ではエミュラ達の持つ剣では神獣ドラゴンの硬い鱗に効果的なダメージを与える事が難しいと聞いていたのですが、神獣ドラゴンの鱗は大きく裂け、内側の筋肉まで剣の刃が到達しています。


レイくらいの腕前ならそんな事も可能なのかもしれませんが、エミュラ達が?


私が知らない内に、エミュラ達も腕を上げていたのでしょうか?



ダメージを受けつつも、再度空へと逃げようとする神獣ドラゴンにエミュラ達はそれを超える速度で上空へと飛び上がり、上空から剣を叩きつけています。

そんなエミュラ達に抵抗するように、鋭く尖った爪を振り回し応戦していますが、その全てをエミュラ達は目にも止まらない速度で避け、一撃たりともエミュラ達を捕らえる事が出来ていません。



は? えっ?



エミュラ達ってこんなに強かったの?



これではまるで……。



レイのようではありませんか。



神獣ドラゴンは上空に逃げる事もエミュラ達に攻撃を当てる事も出来ず、ただ一方的に嬲られています。



アッシュとエメルさん達はエミュラ達の強さを見抜いていた?



これなら勝てるかもしれません。



私はエミュラ達の勝利を信じ、ただ後ろから見守る事にしました。

強いと思っていたドラゴンとなぜか普通に戦えているエミュラ達。


このまま得エリシア達はドラゴンを打ち倒す事はできるのか!?

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