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第46話 結局何なの?

飛行を開始して1分もしないうちにエメル達が集まるルベリ村の北側へと俺様はやってきた。



「ふぅむ、俺様に気付いた素振りを全く見せないな。中々の手練れのようだ」



俺様が見下ろす先にはエメルとセラとケイン、それと相対するように知らない4人の女が立っていた。

これだけ近づいたのだから確実に気づいているはずなのだが、女共は仕草や表情はおろか魔力にさえ一切の揺らぎを見せる事はない。

俺様クラスの勇者ならばそんなことなど造作でもないのだが、これが案外難しいらしい。


4人の女の後ろで馬車らしきものが燃えていることから考えると、こちらから先制攻撃を仕掛けただろうがエメルがやったにしてはやけに生ぬるいな。


いつものアイツなら馬車なんぞ跡形も吹き飛ばしたはずだし、戦闘中にしてはほとんど動きがない。

かといって出方を窺っているにしても距離感が近すぎる。


状況がよく分からないので俺様は少し高度を落として、ゆっくりと背後からエメルへと近づいていくことにした。



「おいっ、戦闘中だったのか? なぜ言わん?」



そして俺様はある程度近づいた時点でそうエメルに声をかけると、エメル達の正面に立つ女共の内の3人は凄まじい衝撃を受けたような表情で固まり、なぜか残る1人は何かを探しているのかキョロキョロと辺りを見渡し始めた。


俺様のような強い人間に会った事がないので絶望している3人の反応は分からんでもないが、キョロキョロと辺りを見渡しているこいつはなんだ?


俺様が判断しかねていると女の一人がボソボソと何かを言った後、キョロキョロしていた女の視線がようやくこちらへと向いたので、とりあえず女共の正体を知るために声をかけてみる事にした。



「なんだ? お前らは? もしかしてあの駄女神が言っていた悪魔か? 思っていたイメージと違うな」



魔力のでかさからここに来るまでは悪魔の先遣隊か何かだと思っていたのだが、それにしては人間っぽすぎるように思えて俺様はそう尋ねた。


確かに弱い悪魔ほど人間からかけ離れて、中にはゲテモノのような奴もいるが、それにしてもここまで人間に近い悪魔を俺様は見たことはなかった。

せめて尻尾か羽か角くらい生えていてくれば悪魔だと確信できただろうが、見た目だけ見れば人間と全く区別が付かない程にこいつらは人間っぽすぎるのだ。


目が合った途端、キョロキョロしていた女まで俺様を見て固まってしまったので、俺の質問に答える者がいなくなってしまった。


まさか戦闘前に戦意喪失してしまったパターンなのか?


よくよく観察してみるとキョロキョロして今は固まってしまった女が魔王軍四天王を遥かに超える魔力を持つ者だと俺様は気づいた。


それにしてはこの反応はおかしい。


偉大過ぎる勇者である俺様とまともに戦って勝てるわけがない事に気付くのは分からないでもないが、それにしたってゴリゴリ魔王クラスの奴がこうも固まって動けなくなるようなものなのか?


なんかもうめんどくさいのでさくっと殺ってしまおうかと思い始めながら、ふとエメルを見るとなぜかその背中が明らかにプルプルと震えているのが見えた。


どうやら俺様のカッコよすぎる登場に感動してしまったようである。

俺様は偉大過ぎる勇者なのでエメルの反応はまったく以って当然の反応だが、残念ながら俺様はエメルのようなつるぺったんには全く興味がないので惚れられても全く期待に応えることはできない。


俺様がそんなことを思っていたその時だった。



「あひー、ひっひっー! 悪魔ぁー、悪魔ですってぇー! どこをどう見たらこの娘達が悪魔に見えんのよー! 尻尾も角も羽も生えてないじゃない! アンタの目は節穴ねー!」



勇者パーティーの女賢者とは思えない言葉を発しながらゲラゲラとその場で笑い始めたのである。

後世に俺様を主人公にした英雄譚ができた時、その英雄譚には偉大過ぎる勇者のお供として旅をした仲間は下品な笑い声を上げる守銭奴賢者とショタコンの変態聖女と記され、永遠に後世に伝わっていくことになるだろう。


まぁそんなことはどうでもいいが、こいつの反応を見るに戦闘中ではなかったということだろうか?


ていうかこいつはいつまで笑ってんだ。

先程まで固まっていた謎の女共4人が今度は別の意味で固まっているぞ。


結局、女共の正体を手下であるはずのエメルからすら引き出せず、戦闘中でもないのでさくっと殺るわけにもいかなくなって、仕方なくケインの頭を撫でまわしていたセラに尋ねようとしたらその前に頭を撫でまわされていたケインが俺様に声をかけてきた。



「師匠―」



「誰が師匠じゃ、あんなマグレ俺様は認めんからな」



「えー、ひどいですよー。契約違反ですー」



「うるさいぞ、変態女。マグレじゃないならこの場で撃ってみろ、できるもんならな」



昨日の夜、ケインは確かにファイヤーボールを撃つことに成功していた。

だが、何十回、何百回と繰り返した内のたった一発だ。

その一発を撃った後、ケインは疲れていたのかそのまますぐ眠りについたのだ。俺様がケツが痛くてまったく眠れない中な。


どうせマグレで一発撃てただけなのだから一晩すれば魔法の使い方など忘れているはずだ。

俺はそう確信し、小さな笑みを浮かべていると、ケインはおもむろに持っていた杖を謎の女共の方に向け——そして。



「ファイヤーボール!」



子供ながらに綺麗な発声と共に杖の先から出現した複数のファイヤーボールが驚いた様子の謎の女共の横を通過して、後ろで燃え盛っている馬車へと全弾着弾した。

そして小さな爆炎が次々と上がり、衝撃に耐え切れなくなったのか馬車の車輪を支えていた車軸が折れ、ズシンと車体が崩れ落ちていった。



「…………」



「どうですか、師匠! 朝からセラさんと練習して同時に5発まで撃てるようになりました!」



「……あぁ、そうか。俺様の期待通りだ。これからもしっかりエメルに教えてもらえ」



「はい!」



なんだ、こいつ? 天才か?

威力も上がってやがるし、同時に5発とかマジか?

しかも朝から練習とか優等生か!


なんぞまったく微塵もこれっぽっち思っていないが、ケインにはまぁまぁそれなりに才能はあるようだ。オマケにまぁまぁそれなりに努力家なようでもある。


輝くような笑顔のケインとそんなケインを褒めちぎりながら撫でまわすセラ、そしてますますゲラゲラと大きな笑い声をエメルに少しイライラしながら俺様は謎の女共に視線をやった。



「で、お前ら結局なんなんだ? 昼飯食ってさっさと寝てーから大した用事じゃないならさっさと帰ってくれないか?」


なんかどうでもよくなってきたアッシュ君。

さっさと帰って飯食って寝たいのです。

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