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第45話 偉大過ぎる勇者の目覚め

ここからはアッシュ君視点に戻ります。

「おいっ、起きろ」



んぁ?



いい感じに眠っていた俺の耳にそんなエメルの不機嫌そうな声が聞こえ、俺様は目を覚ました。

既に俺様の繊細なケツの痛みは癒えているが、まだ少し眠り足りない気がするのは気のせいか?


起こされたということは少なくても12時間以上は寝ていたはずだ。

まぁ俺様は魔王を葬り、女神と戦い、1000の兵士と戦い、更にはオンボロ馬車のガタガタ地獄の所為で朝まで眠る事が許されなかった事を考えれば12時間ではまだ足りなかったという事だろう。

本来であれば3日3晩眠り続けてもおかしくはない偉業と拷問に俺様は耐えきったのだから。


世界を1つ救ったそんな偉大過ぎる勇者である俺様だが、世界はまだまだ俺様を必要としているらしい。


まずは偉大過ぎる勇者である俺様を必要とする大国と交渉し、愚かにも俺様の手を振り払ったドレアス王国に自らの行いを後悔させる必要がある。

そしてドレアス王国を堕とした後は世界征服……じゃなかった。世界統一を果たし、リティスリティアが言っていた悪魔共を一人残らずぶち殺す為の準備を始めるのだ。


我ながら完璧すぎる計画である。

唯一の懸念があるとすれば他の大国にルシードのような馬鹿がいないかという事くらいだが、あれほどのバカはそうそういないだろう。


それにしても眠いな。

流石の俺様でも無理をし過ぎたか?


そう思い、俺様はカーテンを開けると窓の外に予想外の光景が広がっていて、俺様は首を傾げた。



「って、おい。まだ昼じゃねぇか」



正確な時間は分からないが、俺様の寝起きの目に日の光が容赦なく襲い掛かってきたのである。

俺様はすぐにカーテンを閉め、狭い部屋を見渡して、机の上に置いてあった時計を確認すると短針と長針がちょうど真上を向いていた。



「この世界では12時を夕方と言うのか? いや、そんなわけないな」



俺様は朝眠りにつく前にエメル達に夕飯前に起こせと言っていたはずだが、どうやらまだ6時間ほどしか眠っていなかったようである。


どうりで眠いわけだ。

普段の睡眠時間と考えても6時間というのは俺様にとってはかなり短い。

世界の為に日々体を酷使する俺様が必要とする睡眠時間は最低でも8時間は必要なのである。


エメルがこの場にいないという事は先程の声は通信魔法だったのだろうが、偉大過ぎる勇者である俺様の睡眠を妨げるとはいい度胸だ。


そんな小さな怒りを覚えたその時、俺様の耳に更なるエメルの通信魔法が届いた。



「起きろや! ボケ! クソ勇者ぁぁぁー!」



ビリビリと寝起きの俺様の頭に大音量のエメルの声が響いてきた。

なんとも非常識な女だが俺様の心は大いなるアドリシア海よりも広い。

俺様はそんなエメルの声に気を止めることなく冷静な口調で返す事にした。



「……あぁ? うるさいぞ。ちんまり賢者」



「アンタがさっさと起きないからよ。もう昼よ。さっさと起きなさい」



だというのにエメルからはそんな言葉が返ってきて流石の俺様もほんのちょっぴりカチンときた。



「俺様は夕飯まで起こすなと言ったはずだが? 賢者の癖に言葉も分からんのか?」



「はぁ~? 昼までならともかく夕方まで起こすなとか馬鹿なこと言うからみんな聞き流してたのに気づかなかったの? バッカじゃない?」



……馬鹿? こいつ今、俺様の事を馬鹿と言ったのか? しかも2回も?


寝起きの頭がフリーズしかけた後、一気に覚醒していくのを感じると同時に沸々と怒りが湧いてきた。

それでも俺様は強靭な精神力を以て一瞬にして怒りを鎮めると、冷静な言葉でエメルに返答した。



「……よし、分かった。泣かす。今すぐ行くから待ってろ」



俺様はすぐさま通信魔法を一方的に切断し、そのままの格好で部屋を出て行くと、部屋の前で驚いた表情のグレイスと鉢合わせた。



「おいっ、今、エメルさんの大声が聞こえたがどうした?」



そう言いながら、グレイスは俺がいた部屋の中を覗き込んできたが、エメルは違う場所から通信をかけてきたのでこの場にエメルの姿などあるわけがない。

部屋の中にエメルがいない事に不思議そうに首をかしげるグレイスだったが説明するのも面倒なので俺様はそんなグレイスの横を突っ切って家の外へと歩き出す。



「少し出てくるから、昼飯の準備でもして待っていろ」



グレイスは何か言いかけていたようだったが、そんなことを無視して廊下を抜け家の外へ出ると、探知魔法をかけながら、飛翔魔法も同時に発動させ、北の方角へと飛び立った。



「ん? あぁ?」



俺様は探知魔法をかけた瞬間、エメルとセラ、そして分かりにくいがケインとかいうガキの魔力を瞬時に補足したが、その3人とほぼ同地点に4つの大きな魔力の存在に気付き、思わず声を出した。



いや、もう一人いるか。


やや離れた地点にゴミのような魔力も一つ感じるが、これは数に入れなくてもかまわないだろう。

問題はエメル達とは違う4つの大きな魔力の存在である。


この世界の住人とは思えないほどの大きな魔力で、俺様がいた世界の基準に当てはめると偉大すぎる勇者である俺様や俺様の手下であるエメル達を除けば最高峰に位置するA級冒険者かそれ以上の魔力を持っている事は確実に思える。



ていうかこれは3人共レイと同クラスか?


少なくても魔力自体はレイと同程度のものがあり、そこから考えればドレアス最強の剣士であるレイと同程度の魔力を持つ者が3人もドレアスにいるとは思えない。


それにも驚いたが、何より俺様が驚いたのはその3人と共にいる1つの巨大な魔力の持ち主の存在だった。



「ありえん。四天王の魔力よりも遥かに強いぞ。あのゴリゴリ魔王クラスか?」



体内に魔力を抑え込んでいるらしくその正確な魔力を掴み切る事はできないが、どう考えても俺の世界の人間を長年に渡って苦しみ続けてきた魔王軍四天王をも超える魔力を有しているのは明らかだった。


そして、空を翔けていた俺様は巨大なその魔力を感知してすぐに俺様の頭脳明晰な頭が一つの可能性に思い至る。



「あの駄女神が。来るのは3年後ではなかったのか? まだ3日と経ってはいないではないか」



リティスリティアを俺達に悪魔がやってくるのは3年後だと言っていたが、数が少ないのでもしかしたら悪魔の軍勢の先遣隊ということなのかもしれんな。

まぁ想定外だと言えば想定外だが、それはあちらも同じだろう。


俺様は運の無かった悪魔どもに同情しつつも笑いを抑える事はできなかった。



「ふはは、偉大過ぎる勇者であるこの俺様がいるとも知らずわざわざぶち殺される為にのこのこやってくるとはご苦労なこった。……それにしてもエメルもわざわざあんな風に言わんでも素直に助けを求めればいいものの意外と可愛い奴め」



状況を完璧に理解した俺様は可愛い手下どもを救うべく全速力でルベリ村の北へと急ぐのだった。



アッシュ君覚醒。

睡眠時間は全然足りてませんが悪魔の先遣隊(違います)をぶち殺す為に現場へと急行します。



作品継続のモチベーションに繋がりますので面白そうだったら構わないので評価とかブクマとか頂けると嬉しいです!


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