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三番目の淫魔姫  作者: 素浪臼
CHAPTER Ⅰ Day One
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010 これは女の子が乗るモノですか? ~how the ladies ride?~ 4

 『枕元に小皿一杯のミルクを置いて寝る』


 ……という風習が中世欧州(ヨーロッパ)にはあったとかなかっとか――


 この風習は『真夜中に男性の精液を狙うサキュバスが、眠っている時に襲ってくる』――という迷信が信じられていたことがその由来になっており、『ミルクを置くことで、サキュバスがそれを精液と間違えて持って行く』っていう理屈らしい……そんなウンチクをネットだか本だかで読んだ記憶がある。


 突然そんなことを思い出してしまったのは、オレの目の前に差し出された、その濃厚な白濁液を見たからだった――



 香油を全身に塗られて(コーティングされて)テカテカになった体に、バスローブを着せられた。

 胸の上からのタオル巻きスタイル(ラッピング)じゃなかったのは、流石は上流階級に相応しい優雅な振る舞いといったところか。

 ここまでのことを振り返ると、オレが目覚めてから殆どずっと真っ裸だったんだよな――なのでベビードールを脱いで以来、初めての着衣姿となった訳である。


 バスローブを羽織ったフィリア(オレ)は、壁に設置された化粧台の前に移動していた――しかもただの化粧台ではなかった。鏡の四辺に魔道具マギア・パルムの照明が配置されたそれは、まるっきりハリウッド・ミラーだったのだ……。


 化粧台の前に置かれていた柔らかいソファに座り、一先ず落ち着くことが出来た訳だけど、単に寛ぐ為だけにソファに座ったのではない。

 フィリア(オレ)の背後ではホノカがドライヤーと櫛を手にして、長い髪を乾かしながら梳いているのだ。


 おおう、ドライヤーから放出される温風が気持ちいい。多分オレは行ったことがないと思うんだけど、これはちょっとした美容室気分ってヤツだな……っていうかこの髪ってば長過ぎじゃね。

 シャンプーとリンスの時もそうだったけど、洗うにしても乾かしたり梳いたり……いちいち時間と手間が掛かるんだよなぁ。

 そう言えば『真夏なんかは蒸せて暑い』って友達の▲▲や●●も言ってたなぁ……もういっそバッサリ切って、ホノカみたいなボブカットにした方が手入れが楽で良くね?


(駄目よ!)


(ぜったいダメ!!)


 お、おう――ん? また何か聞こえたような? ま、取り敢えずはこのままでもいっか。この綺麗な髪には長い方が似合っているのも確かだしな……。



 ホノカに髪を梳かれながら――冷房(クーラー)が送り出す涼風に火照った体を冷ましつつ、フィリア(オレ)はソファで脱力して寛ぎまくってリラックスしていた。

 因みに今使用されているドライヤーも冷房(クーラー)も照明も、その全てが魔道具マギア・パルムである。

 この世界……いや魔界では魔道文明技術が生み出した、多くの便利な道具が日常の生活に浸透しており、魔界の住人たちは文明の利器の恩恵を享受しているらしい。

 『これでこのソファがマッサージチェアだったらもう完璧だったのだが、この世界には無いのだろうか? そーいえばアレって日本で生まれた発明品なんだっけ? 日本と言えばカラオケも……』などと他愛の無いことを考えていた時だった――

 

「フィリア様、ミルクです。お召し上がり下さい」


 メイドから銀製のトレーが差し出された。

 そこに載せられていたのは、白い液体の入った器――ビールジョッキみたいに取っ手が付いた形状で、また大きさは中生ちゅうなまくらいのグラスだった。

 飲み物か――考えてみればオレが目覚めてから、まだ一度も飲食していない。しかも湯上がりでちょうど喉がカラカラに渇いていたところだ。早速頂くとしようか。

 その中身はミルクだと言ったか。ほほう、奇遇だなオレも風呂上りは牛乳派だったんだよな……ん?――


 ちょっと待て……ミルク? 白い、液体……だと!?――


 血を糧とする吸血鬼にとって、血液の代用品はトマトジュースだと言われている――らしい。

 そんでサキュバスの糧は男性のアレであり、その代用品がミルクで?――そして今のオレは正真正銘のサキュバスであり……。

 いやいや待て待て、考え方が逆だろ。そもそも今目の前にあるそれ・・は男性のアレではなく、本当にただのミルクなのかが問題なのであって……しかもフィリアの記憶には、その辺りの情報が全然無いとか、肝心な時に役に立たないし。


 落ち着けオレ!――いやまさか、そんな訳ないよな……?


「これ、牛のミルク……?」


「はい、そうですけど?」


 ほれ見ろ!――そうだよ。分からない時は素直に聞くに限るのだよ。

 ハハハハハッ……そっか、これってアレじゃなかったのかぁ、これで一安心。

 とか思っていたら、髪を梳く作業をしていたホノカが――


「フィリア様――ひょっとしてお飲みになりたかったのはミルクじゃなくて、ザー……」


「わーーわーー! ミルクでいい、これでいいの。これでいいから……!!」


 若い女の子がザー●ンなんて言っちゃいけません!(前世のオレより年上で、しかも三十前後(アラサー)だけどな)――オレはトレーに載った、とても冷えたグラスの取っ手を掴むと、それを鼻の下に移動させた。

 中に入っているのは乳白色で、オレが良く知るミルクそのもの……に見える。


「くんくん――」


 ふむ。匂いも牛乳っぽいし、イカ臭くはない……と思う。


 ええい、ままよ!――コンパでの飲み会のことを思い出しながら、グラスを口元に運ぶと、フィリア(オレ)は意を決してグラスを傾けて――一気に喉の奥へと流し込んだ!


 くぴ、くぴ、くぴ、くぴ……――ん? これって美味い? いや凄く美味い! 

 確かに味はオレが良く知っている牛乳みたいなのだが?……特殊なフィリア(この体)の体質故か、好みや味覚が前世のオレとは異なっているのだろうか。

 ごきゅごきゅごきゅん……とあまりの美味さに一気に飲み干してしまった。


「ぷはーーーーっ」


 マジで美味い!――

 喉が渇いていたからか、空腹だからなのか分からないが、五臓六腑に染み渡る……のだけれども――何故だろうか、ミルクはこんなにも美味いと言うのに、この体が物足りなさを訴え、もっと違うモノを本能が求めているように感じる。

 だがこの件に関して深く考えてしまったら、とてもヤバイ気がする。一先ず気のせいってことにして……今はこの喉の渇きを潤してくれるミルクの味だけを存分に堪能しておこう。


「もう一杯!」


 フィリア(オレ)は空になったグラスをメイドに突き出して、お代わりを所望した。 

 グラスを受け取ったメイドは、手押しワゴンに置かれていたピッチャーを手にするとそれを傾け、中身をグラスに注ぐ。

 メイドからミルクで満たされたグラスを受け取ると――

 ごきゅごきゅごきゅん……とフィリア(オレ)はそれを再び一気に飲み干したのだった。


「ぷはーーーーーーっ……もう一杯!」


 とさらにお代わりを所望しようと、空けたグラスをメイドに突き出すと――


「駄目です――いきなりそんなに飲んだら、お腹(ポンポン)を壊してしまいますよ?」


 そう言ってホノカに手で遮られた。それどころか――


「フィリア様ったら、もう……お口の回りにおヒゲが出来ていますよー。ああんもう、首筋と胸元にも零れちゃって。ちょっとじっとしてて下さいね……チロリッ――」


 と口元を拭ってくれた――蛇舌(スネークタン)で……続けて素早くフィリア(オレ)の首筋にそれを蛇ならぬ蛞蝓なめくじのように、ヌメヌメと這わせて行き……さらにその二つに裂けた蛇舌(スネークタン)の先端がちっぱいにまで達し、そしてサクランボに――


「……ってさせるかーっ!」


「シュルシュルッ――チッ!」 


 フィリア(オレ)は咄嗟に蠅を払うように、その蛇舌(スネークタン)を手で払いのけていた……っていうか今の舌打ちはなんなのさ!? まったくこの駄蛇っ子め、油断も隙もならないヤツだよ……。



 ホノカのドサクサ紛れの性的悪戯(セクハラ)行為は兎も角――まあ確かにこれはちょっと飲み過ぎだったか……中生ちゅうなまサイズで二杯って大体一リットルくらいだよな。考えてみれば前世のオレも流石に牛乳パック一本なんて、一度に飲んだりしなかった。

 あれ? そういえばミルクと言えば……前世のオレが牛乳をよく飲んでいたのは、あくまで健康の為だった訳だが――


(はあ~っ……またしれっと嘘を……)


(しんちょー伸ばすためだよね~?)


 おっほん! そ・れ・で・だ・な!――牛乳はバストアップに効果のある飲み物だって話を、誰かに聞いたことがあるのを思い出したんだよ。まさかとは思うがフィリアがこれを飲んでいる理由って……あかん、涙が……。


 

 とまあ、こんな感じで湯上り後の寛ぎ時間(リラックスタイム)を終えて、フィリア(オレ)が次に迎えたミッションは……お着替え(ドレスアップ)だった――



    ★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★



 「お召し物を選んでください」と言って目の前に、どどーんっと並べられたのは――


 透けパンツ、ローライズパンツ、紐パンツ、穴空きパンツ……さらにそれらに色やデザインに合わせた、オープンブラ、透けブラ、穴空きブラなどのブラジャー類……あとキャミソールやビスチェなんかも揃った、それら布地面積が極端に少なく実用性に疑問のある代物の数々。

 所謂、官能的下着類(セクシーランジェリー)ってヤツである。


 そのどれもこれもが全ていかがわしいデザインの下着類――それが人型を模したハンガーに上下セットで奇麗に掛けられている。

 それを十人以上いるメイドたちが一組ずつ手に持って、今フィリア(オレ)の目の前に横並びで整列しているのだ。

 しかもそれだけではない。彼女たちの背後にはハンガーラックがあり、そこにはまだまだ沢山の下着セットが掛けられている有様なのである。


 ほう、なるほど。つまりこの中から一つ、身に付けたいモノをオレに選べというワケだな。

 わーーいっ、ちょーうれしぃー、エロかわいー下着がいっぱいだぁー、フィリア迷っちゃうよぉ! ど・れ・に・し・よ・お・か・な!……って選べるかーー!!


 そりゃオレとしてもエロい下着は見るのは好きだし、可愛い女の子がそれを着ている姿を見るのも大好きだし、目覚めた時に着用していたベビードールも凄くエロっちくて似合っていたけどさ……だからってこんなナリになった今も、オレの男子心は健在なんだ。よって自分が着るのはノーサンキューなのだ。

 ……っていうかさ、そもそもフィリア(コイツ)のこの貧相な体に――ちっぱいにブラジャーなんているのか? スポブラで十分だろ、スポブラで! 

 いやそれどころかブラも不要で、いっそのこと絆創膏でもいいんじゃね……って逆にエロくなるだと!?


 とかなんとか文句を言って拒絶出来る筈もなく、りとて――『ボクサーパンツない? トランクスでもいいんだけど? いやブリーフでも我慢するから!』だなんて場違いなことも言える訳もなく。

 因みにパンツがどれもローライズばかりなのは、尻の上に尻尾が付いているからっていう合理的かつ真っ当な理由が一応あるのだが……。

 

 さて、どうしたものか――っていうかホノカを始めメイドの皆さん、なんでそんな期待に満ちた(キラキラした)目でフィリア(オレ)を見つめるワケ?

 しかもメイドたちは「これはどうですか?」「これがいいですよね?」って感じで口々に自身が持っている下着をしきりに薦めてくる始末……。


(因みにわたくしは透けパンが好みよ)


(あたしは極細紐パン派だよ!)


「さあ、フィリア様――どれがいいですか?」


  ああー、もうっ雑音ノイズが五月蠅い!――兎に角せめて布地面積が極端に少ないのや透け透けなモノだけは、全力でご遠慮願いたいところ。そう思ってダメもとで「ドロワーズってないかな?」と聞いてみたら、「ありません」のつれない一言。


「さあさあ……フィリア様!」


 あれれ~? おっかしいな~? どうしてフィリア(オレ)は壁際に追い詰められているんだろう?

 ねえホノカ――ホノカさん、その素敵な笑顔はなんなのさ……?


「さあさあさあ……フィリア様!!――」

今回は某TS小説のオマージュ回でした…っていうかミルク飲んで終わっただけとか酷過ぎる(汗)


>血を糧とする吸血鬼にとって、血液の代用品は番茄汁(トマトジュース)だと言われている

余談ですがこれの元ネタは、おそらく藤子不二雄Aの「怪物くん」のドラキュラだと思う……。

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