011 これは女の子が乗るモノですか? ~how the ladies ride?~ 5
フィリアはねぇ~頑張ったよ。うん、すっごく頑張って抵抗したんだよ!
その甲斐あって透け透けとか極細ヒモみたいな際どいモノは回避出来た。
最終的に妥協してくれたホノカが薦めたモノをフィリアは選び……いや強引に選ばされて、着用させられたのだった。
それはフリルとリボンとレースがふんだんに華美に装飾された、途轍もなく可愛らしい乙女チックな一品だった……しかも桃色の、だ……って、あれ? おかしいな? 果たしてこの選択は本当に正しかったのだろうか?
可愛いらしい下着姿になったフィリアが映る鏡を見つめながら、『男として大事ななにか』をまた一つ失ってしまった気がして、オレは心の中でしくしくと泣いた……。
因みにブラジャーについてだが――
齢三十九歳になるタリア家長女のフィリアさんの身体は、とある問題を抱えていました。
その問題とは……ケースナンバーXXX『未発育ボディの絶望的な貧乳』――
フィリアさんが長年に渡って悩まされてきた貧乳は、これまで胸パッドで虚飾して誤魔化していましたがそれもそろそろ限界……。
そこで今回、その貧乳をどうにかすべく立ち上がったのがホノカだったのです。
匠の手でその絶壁は大改造されました。ぐいぐいっと押し上げられて、ぎゅぎゅっと寄せられて、ぐぐぐっとカップの中に押し込んで着用させられるという無謀な手間を掛けた結果……。
まあ、なんということでしょう! 寄せ集めた自前の余り肉を使い、そのちっぱいにパンケーキ二枚分の厚みが増して、見事に膨らみが出来上がっていたのです!!
これでもうフィリアさんはヒンヌーに苦しめられることなく、明るい未来を生きていけることでしょう。末永くお幸せに――あかん、思わずサ●エさんボイスで脳内ナレーターしちまったよ……。
ああ、フィリアよ……お前はこんな涙ぐましい努力をしていたんだな。流石にちょっと心が痛むぞ。ひんぬーだのちっぱいだの絶壁だのペチャパイだのと散々ディスってしまってスマン。
でもな……だからと言って、この胸の痛みは我慢出来るものではない。なんなのこの圧迫感? すっげぇ締め付けられて痛いんですけど!!
あとパンツの方も――布地面積が狭いローライズで半ケツ晒して寒々とするわ、下腹部への圧迫感が強いわで、なんか気持ちが落ち着かない……。
さて晴れて無事に下着姿となったフィリアは――ソファにその身を投げ出して、ぐでーんと手足を伸ばして脱力しきっていた。鏡に映るフィリアも弛みきって呆けている……っていうかやさぐれていた。
可憐で怜悧な風貌を誇る美少女にあるまじき、残念な姿である……最早、オレにはフィリアの体裁を守ろうなんて当初抱いていた気概も完全に失せていた。
これだけフィリアがアホっぽい醜態を晒しているにも拘わらず、ホノカを始めメイドたちは誰も見咎めないのは何故なのだろうか。
「ふふふふ、今度のフィリア様もなかなか愉か……とても個性的な方みたいですね。実におちょく……お世話のし甲斐があるというものです」
「ん? ホノカなにか言ったー?」
「いいえー。なにも」
なおフィリアがソファでだらしなく脱力している今も、メイドたちによるお世話が現在進行中であったりする。手足の爪にマニキュアを塗っている最中なのだ。
因みに色は無色であり、ネイルアートまではされない模様。
オレのライフは風呂の時点でとっくにゼロになっていたが、今はマイナスといっていい状態である。もう褥台に戻って寝たいよ……。
だが残念ながらフィリアの試練は終わっていない。お着替えのミッションはまだ未完成なのだから。
目の前に現れたのは豪華な漆黒のドレス一式――最後の刺客はゴスロリだった。
★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★
そこには完璧なゴシックロリータの美少女が佇んでいた――
フリル》とレースがふんだんに遇われた、そんな素敵な漆黒のドレスを身に纏った可憐で妖艶なゴスロリが鏡を見つめている――まあ、要するにフィリアのことなんだけどさ。
このドレスを着せられている間のことは、それはもう下着以上に大変だった……だが、常に肉体的刺激を加えられていた風呂の時とは違い、着替えの最中はずっと無心でいられた分、マシだったかも知れない。
無機なる球体関節人形だと自分に言い聞かせるオレを、ちょっとエロいキャミソールを着せられるところから始まって、文字通り着せ替え人形のように為されるがまま、レッツラ着せ着せされていったのである。
ワンピース構造となっているドレスの、そのフリルいっぱいなスカート部分は――下穿きのパニエを穿いてふっくら仕上げ。
あれ? そう言えばゴスロリってパニエとセットで、ドロワ……所謂かぼちゃパンツを穿くのが正式スタイルじゃなかったっけ?
その疑問をホノカにぶつけてみたところ――「だって色気がないじゃないですか。それに……私の趣味じゃありませんし」っていけしゃあしゃあと宣いやがった……っていうか、なんでお前の趣味に合わせなきゃいけないんだよ!
そもそも下着の時もそうだった。ゴスロリと言えば普通その下着も黒っぽいイメージがあるよな(実際用意されていた物の中にもその系統が多かった)。
だが実際にフィリアが着せられたのは、白っぽい桃色の下着だった訳だ。
これについても「そのギャップが堪らなくいいんです。萌えるんです。そそられるんです!」とか熱弁して、押し通しやがったのだ。
あの駄蛇っ子メイドはいつか絶対シメてやる!――そう心に固く誓う……褥台の上でひぃひぃ啼かしてやるからな今に見てろよ、くっくくく……。
話をドレスに戻そう――スカートの裾と膝丈で重なる形で履いているのは、フリル付きでレース仕立ての白いハイソックス……残念! 絶対領域なんて無かったんや。
一応断っておくが、別にオレは絶対領域をしたかった訳じゃないからな。ゴスロリを着せられている時点で今更な話かも知れんけど、このフィリアがそんな男に媚びるような恰好をすることは未来永劫ないと断言しておく……。
ハイソックスを包む上履きは、パンプス仕様のワンストラップシューズで色は黒。白いハイソックスと合わせることで視覚対比効果を高めている。
因みにハイソックスの方は、パンツの上に穿く形で腰に装着されたガーターベルトで吊るされていた。
余談だがガーターベルト姿と言えば、パンツの上から穿くイメージがあるけど……それはあくまで『異性に魅せて脱ぐ』ことを目的としたスタイル――つまりこれは娼婦の正装であるらしい。
なおサキュバスと娼婦って似たようなもんじゃね? なんていう野暮なツッコミは却下する……もしそんな意地悪なこと言ったら、ち●こもいじゃうから☆ね? お兄ちゃん!
なので正式かつ一般的には上に穿くのはパンツの方らしい。これはガーターベルトを上にしてパンツを下に穿く形にしてしまうと、御不浄で用を足す際にベルトが途中で引っ掛かってパンツを下せないからって言う、非常に生々しい理由からだ。
ところがフィリアの場合、その『魅せる』方でガーターベルトの下にパンツを穿いている訳だな。これは穿いているパンツが腰で結ぶ紐パン仕様だからってことらしい……因みにこれもホノカの趣味である。
でもどっちにしても構造上、パンツの穿き下ろしが面倒なことに変わりがない気がする。よし、取り敢えず後で隙を見てパンツが上側になるように穿き直しておこう……。
ん?……はて? 今なにか凄く重大なことを見落としてしまったような気がするのだが……ま、いっか。
因みにマイサン二世こと淫魔尾針は、サ●ヤ人みたいに腰にベルトのようにして巻き付けているぞ。これ伸縮自在とはいえ先端が尖っているから、そのまま突き出した状態で腰を掛けたりとかすると、お尻への違和感? 異物感?……がハンパないのだとか。
とは言え……この尻尾をずっと腰に巻いたままにすると、腰や尻尾そのものに負荷が掛かるものらしい。なので適度に尻尾を解放して、外に伸ばさなくてはいけないようだ。
その為、淫魔の服、例えばスカートやズボンの臀部に当たる箇所には、旧スク水の水抜き穴のような隠し穴を設けた構造となっているらしい。
で実はフィリアが着せられたこのドレスにも、その隠し穴が付いているワケだよ……。
おっとまた話が逸れたな。残りの部分を説明する――ドレスの上半身は、幅の広い長袖に、上着として紫色のボレロを着用。
フィリア自慢の青みががかった銀髪が輝く頭部には、フリル付きのヘッドドレスを装着。
そして最後に――胸元には赤玉が嵌め込まれたブローチを装着し、同じく両耳にも赤玉のピアスを一対揃えて嵌めていた。
これはお洒落としての意味合いもあるが、それ以上に必然に迫られて装着している物である。
実はこれ全てが魔道具の一種であり、その用途はフィリアの制御困難な魅了の効力を抑えること。つまりこれは拘束具のようなモノなのだ。
つい先程も体臭を抑える為の香油を体に塗ったばかりであるが、それだけではまだ効果が不十分なので、さらにアクセサリーも加えて二重掛けしている訳である。
仕上げとして軽く化粧が施された――瞼と唇と頬に薄紅を射して完成。
――説明は以上だ。
『輝く絶望を抱きしめて……みんなを癒す、淫魔姫フィオリトゥーラ=ノッテ、出っ来上がりー!』――ってな訳で、これがゴシックロリータをフル装備した、今のフィリアの姿なのだ。
しかし、だ――入浴といい、下着といい、ドレスといい……これから毎日こんな苦行に繰り返し見舞われるのかと思うと、マジ憂鬱だよ……。
★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★
「フィリア様。そろそろお時間です――」
どれくらいの時間が経っていたのだろうか。どうやらフィリアはしばらくの間、ゴシックロリータで着飾ったフィリアのあまりの可愛さに見惚れてしまっていたらしい……この後に予定されているのは、食事である。
ホノカに促されてソファから立ち上がろうとして……っと足元がふらついてホノカが受け止めてくれた。
しばらく寝たきりだったから、体力が落ちているのは確かなのだろうが、この異常な身体の頑健さは流石は魔族と言うべきか。これがもし普通の人間であれば、五〇日間も眠った後では筋力と体力が衰えてしまい、歩行どころか立つことも難しかったに違いない。
「フィリア様。抱っこしましょうか?」
「――絶ッ対、しなくていいから!」
「……くすっ――我が姫君の仰せのままに!」
この時、ふとあることに気が付いた。オレが目覚めてから、まだ二時限くらいしか経っていない。
先程はうっかり聞きそびれたけど、そもそも今っていつ頃なんだろう? いや窓の外は明るいので今が日中であり、夜じゃないのは確かなのだろうけど――で早速その疑問を……時間をホノカに尋ねてみた。
「あと四刻ほどで五時限が終わります――」
ほう……つまり六時限になる訳だな。オレが目覚めたのが朝で、それからちょうど正午を迎えた頃になった訳だ――っていうか一日がまだ半分以上残されているのかよ……ったく、やれやれ一日がまだまだ終わりそうにないな。
そして――
先導したホノカがドアを開いた。
こうしてオレは新しい世界への第一歩を……いやしつこい締め括りでスマン。
今度こそ本当に自分の足で第一歩を踏み出したのだった――
以上。ゴスロリ解説回でした(笑)




