991:ぽりぽり食べよう。
まぁ流石に、遊びであんな体にしたりしたらアリア様に叱られるって思うだろうし、それは無いか。
というかむしろここって、馬に限らずまともな生き物が居るかどうかすら怪しいな。
入ってきた次の日くらいには、まとも「だった」生き物に変えられてそうな場所だし。
「……ふぅ」
「無事に脱出できそうですわね」
「いやいや、口に出すなよ」
カトリーヌさんがアヤメさんの心境を代弁して、慌て気味に止められてる。
うん、まぁ……
「うふふ。果たしてそうかしらぁ?」
「ふぅぉっ!?」
遊ばれるもんね。
シルクの背後から伸びてきた触手の先端が、小っちゃいジェイさんになってアヤメさんの脇腹をトスッと突っつき、アヤメさんに奇声を上げさせる。
というかそれ触手のままでも出来ると思うけど、変形する必要有った?
まぁ多分、カトリーヌさんが言わなくてもダメだったと思うけどね。
ふぅって言った時点で察せられてたのか、下からにょろって出てきてたし。
「あら?」
あ、シルクが「めっ」て感じで、小さいジェイさんを上からぺちっと叩いた。
……叩いたっていうか、叩き潰した、かな。
サイズがアヤメさんの半分くらいしか無いからか、単に強度を持たせてなかったのか、シルクが軽く叩いただけで上半身が無くなってただの触手になってしまった。
「うふふ、ごめんなさいね?」
「こっちにも言ってほしいとこなんだけどな……」
体を再生成して保護者に謝るジェイさんに対して、ボヤく様にツッコむアヤメさん。
「そうねぇ。このままじゃラキちゃんに嫌われちゃいそうだし、きちんとしないとね」
アヤメさんの頭上でキシャーと威嚇しているラキを見て、ジェイさんがうふふと笑って頭を下げる。
ただラキからの好感度に関しては、割と最初からマイナス寄りだと思うよ。
「はい、お詫びにどうぞ」
「いや野菜って」
ジェイさんの手からニュルッとレタスの欠片らしきものが出てきた。
欠片っていうか、手に乗るくらいの長さに細長く切った物か。
「ちゃんと味が付いてるから大丈夫よ?」
「そういう話じゃないんだけど……」
「はい、ラキちゃんにはこっちね」
人の話を聞かないジェイさんの手から、ラキに丁度良さげなサイズの欠片も出てきた。
あっちにも味が付いてるのか、ペット用に素材そのままなのか。
いや、そこはどうでも良いな。
ラキが素直に受け取ったのを見て、仕方ないって感じでアヤメさんも手に取った。
まぁどうなのかとは思っても、頑なに断るって程の理由も無いもんね。
あ、ラキがもぐもぐ齧りながら、アヤメさんの頭に足踏みで合図を送ってる。
アヤメさんも食べなよーって事かね。
「はいはい、解ったよ。 ……ん、いやこれ普通に美味しいな」
「うふふ。そうでしょう?」
「素直に認めるのはなんか嫌だけど、嘘は吐けないな」
別にそこは認めて良いんじゃないかな。
生産地とか生産方法とかはスルーして良いのか微妙な所だけど。
しかしいつもの事な気もするけど、出口まで来て足を止めて、何やってんだろうね。
「しかしやはり兎の耳を備えているからか、ぽりぽりと野菜を食べている姿が実に可愛らしいな」
「アヤメちゃんかーわいー」
……まぁアリア様も面白がってるから別に良いか。
言ってる事も解らなくもないし。
でもお姉ちゃんは、そう思ったとしても黙ってた方が良いと思うんだ。
あんまり調子に乗ってると、アヤメさんが戻ってから酷い目に遭うだろうから。
「姫様のご要望であれば従いますが、やはりあの様に、小さな体でというのが重要な点かと思われます」
「うむ」
同じウサ耳持ちとしてアリア様にチラッと見られて、生真面目にお返事するコレットさん。
まぁうん、アリア様の嗜好的にも、ちっこいって事は重要だよね。
でもコレットさんの場合はそのままやっても、普段とのギャップで余分に可愛さがプラスされるかもしれない。
いや、見せろとは言わないけどさ。
【妖精】がお願いしたら、本当にやってくれそうだし。
妙な借りを増やさない為にも、迂闊に変な事を言わない方が良いだろう。




