985:台車から降りよう。
「お、動く」
もう一度ボタンを押したのか、機械の音と共にロックが外れたらしい。
ワンタッチで操作可能なのは便利だなぁ。
……逆に便利過ぎて、変な持ち方してるとうっかり移動中にロックとかやらかしそうで怖いけど。
「とりあえず、移動手段として使えそうな事は解ったねー」
「はい。では、一旦降りますね」
「ういー」
多少の問題は有っても無視出来る程度だし、良い手では有りそうだ。
これで運べるって事は普通に抱っことかでも運べるって事だろうけど、犬や猫ならともかく馬ってどう抱けば良いのかって問題が有るか。
しかも普通の馬…… 百歩譲って普通のケンタウロスならまだしも、シャルロットさんって人の部分が極端に小さくて脆いから、余計に難しそうだ。
やっぱり何かに乗ってもらうのが無難な方法だろうな。
「はっ!」
「ほっ!」
……シャルロットさんが台車からジャンプしたと思ったら、エリちゃんが素早く着地点に台車を差し込み直した。
なにやってんの、あの熊さんは。
「っと、っとっと……」
「ごめんなさい」
振り向いたシャルロットさんにじーっと見られて、素直に謝ってる。
最初からやらなきゃ良いんじゃないかな。
っていうか今の、普通にちょっと危なかったでしょ。
着地の高さとタイミングが予定からずれたせいで、ちょっとバランス崩しかけてたじゃないの。
「もー、危ないよ?」
「いやー、ついつい。あ、ちゃんと反省してますはい」
お姉ちゃんの注意に軽いノリで返してから、一応と言った感じで補足していく。
うん、まぁそういう人だってのは解ってるから、言わなくても大丈夫だとは思う。
「で、どうしよっか。シャルロットさん、自力で頑張ってみる?」
「そうですね…… とりあえず訓練も兼ねて走ってみて、何か問題が有ればその時はお願いさせてもらって良いですか?」
「あいよー」
実際にやってみてないから、速度以外にも何か有るかもしれないしね。
とりあえず有りそうなのが持続力の問題か。
石畳の上を走るとなると、蹄とか関節の負担もどうなんだろう。
その辺は良く知らないけど、まぁやってみれば解るか。
というか、押すのはエリちゃんで決まりなんだ。
……でも多分、なんやかんやあって途中でアリア様に奪われるんだろうなぁ。
「遠慮するな」の一言で諦めさせられるシャルロットさんの姿が、容易に想像できるな。




