981:足場から降りよう。
「とりあえっ、ずっ、とぉっ!?」
……喋りづらいからか一旦普通の床に移動するためにレティさんの後ろを横切ろうとして、踵にぶつかりそうになってる。
サイズの違いに慣れてないと、いまいち距離感が掴みづらいよね。
「大丈夫ですか?」
「ほっ、っとっと。……はい。ギリギリでしたがぶつかりはしなかったので、問題は有りません」
動く床の端っこから斜め前方にジャンプして、立ち止まってから返事をするシャルロットさん。
足下が止まるからピタッと着地すれば良いはずなんだけど、前に進んでたって意識からか、ついブレーキをかける動作になりかけてたな。
「とりあえず、付いていくだけなら何とかなりそうですね」
確かに、スピード自体には思ったより余裕が有りそうだったな。
……あ、そうか。
人間部分は普通の十分の一でも、馬の部分はもうちょっと大きいんだから、そっちを基準に考えればそこまでの速度でも無いのか。
その分、今見た通りに上が凄い揺さぶられ方をするんだけど。
「問題は、走ってたらまともに喋れないって事かな?」
あ、お姉ちゃんがようやく立ち上がった。
「まぁ…… そこは気合で何とか」
なるのか?
というか、今まさにならなくて止まった所だと思うんだけど。
「あっちまで行くとなると、距離も有るしねー。あ、ディーさんディーさん」
「何かな?」
おや、エリちゃんが唐突に立ち上がってディーさんの所に歩いて行った。
「ああ、用意してみよう」
……なんで他に聞こえない様に隣まで行って囁くんだ。
いや、意味なんて無いんだろうけどさ。
どうせコレットさんやジョージさんは、当然の様に聞き取れてるだろうし。
っていうかエリちゃん、何を頼んだんだ?
「用意するって言うけど、持ってくるのは私でしょう?」
「あぁ、頼むよ」
どうやら改めて作ったりしなくても、既に有る物らしい。
お、エリちゃんの前の床が盛り上がって……
「じゃーん」
……え、台車?
何を頼んだのかと思ったら、頑張れば人が一人座れるくらいの手押し台車が出てきた。
下じゃなくて横に付いてるタイヤが妙に大きいのは、あまり台が揺れない様になんだろうか。
あとどうでも良いけど、「じゃーん」って言うけど用意したのエリちゃんじゃないよね。
「とーぅ」
ゴロゴロと台車を押して元気にシャルロットさんに駆け寄るエリちゃん。
いや、相手のサイズを考えようね。
止まってくれるって解ってても、怖いものは怖いからね?
「さ、乗って乗って」
「えっ、あっ、は、はい」
突撃されて動揺してるのもあって、エリちゃんの要求に素直に従ってしまってる。
流石にバックでは乗れないらしく、一度乗ってから反転したな。
……というか、あれはシャルロットさん的にオッケーなのかな?
まぁもう乗っちゃってるし、嫌なら後からでも断るだろうから大丈夫か。




