978:一歩目に躊躇しよう。
「さて……」
「いつでもどうぞ」
シャルロットさんが動く床の手前で立ち止まった。
レティさんの「どうぞ」っていうのは、蹴らない様に気を付けますよって事かな?
あぁ、一応居る意味は無くもないのか。
人と一緒に歩いてみて、脚の動く範囲とかを体感しておいたほうが良いのかもしれないな。
うっかり近づきすぎて蹴られたり転ばれたりしたら、お互いに困るだろうし。
「むぅ、一歩目が難しいですね」
なんか長縄跳びに入れない人みたいになってない?
まぁ静止状態から走らないと流される床への移動だし、まだ走るのには慣れてないだろうからなぁ。
「まぁ行ってみるしかないんでないのー?」
「それはそうなのですが、迂闊に転ぶわけにはいきませんし……」
エリちゃん、若干無責任だな。
まぁ確かにそうなんだけどさ。
「ぴゃっ」
「はい?」
おや、なんか鳴きながら抱き着いた羽で、シャルロットさんのお腹をぽふぽふと叩いた。
頑張れって事かな?
「転んだらちゃんと巻き込まれない様に離れるから、心配するなってさー。 ……」
「ぴっ」
あ、頷いた。
なんでエリちゃん、ぴーちゃん語もきっちり理解してるんだ。
いや、最後に小さく呟いてたから、何となくで言ってるだけだろうけどさ。
「あ、そうですか。……助かりますが、一人でもあまり転びたくは無いですね」
少しホッとしながら苦笑してる。
うん、そりゃそうだよね。
……しかし微妙に薄情な気がするけど、まぁ仕方ないか。
あのサイズの胴体がすっ転ぶのを防げるほど、ぴーちゃんの馬力が有る様には見えないし。
いや、実際の所は解らないけど。
有ったとしてもくっついてるのが人部分だから、下手したらそこだけがにょいーんって伸びた挙句に、限界を迎える危険も有るか。
うん、大人しく離れた方が、お互いに安全なんだな。
「まぁそんなことも言ってられませんし、頑張ってみるとしましょう」
ペチッと自分の頬を叩いて気合いを入れる。
まぁせっかく用意してもらってレティさんにも歩いてもらったんだし、やってみないと申し訳ないってのも有るんだろう。
偉い人も待たせてる事だしね。
まぁジェイさんの事だから、転んでも痛くない様に、ちゃんと受け止めてくれるだろう。




