975:召喚獣に挨拶しよう。
特に抵抗する様子もなく、大人しく撫でられてる。
あれ、妙に気持ち良いもんなぁ。
「なるほど……」
いや、何が?
まぁ、怖い相手ではないって認識にはなったっぽいから、何でも良いか。
おや、アヤメさんの頭の上でラキがアピールしてる。
せっかくだから挨拶したいのかな?
「あ、はい。クモさんもよろしくお願いします…… おや?」
小さく丁寧に頭を下げてくれたけど、何やらラキはご不満の様子。
あ、アヤメさんの頭をてしてし叩いて、何かを要求し始めた。
「ん、何だ?」
「納得がいかない様子で、首を振られてしまいました」
「……あー、名前か? 『私はクモさんじゃなくてラキさんだ』って言いたいんじゃないかな」
あぁ、そういう事ね。
ラキが良くやったとばかりに頷いて足下の頭を撫でてるし、アヤメさんの推測で合ってたんだろう。
ぴーちゃんもだったけど、召喚者に付けてもらった名前に拘るものなのかな。
好いてもらってるっぽい感じで悪い気はしないけど、名前を知らなかった事にまで抗議するのは行き過ぎじゃない?
ネームプレート付けとけとか言われちゃうよ?
……どうでも良いけど、訂正の方にまでさん付けだと、ちょっと偉そうに聞こえなくもないな。
「さん」は付けろって言ってるみたいで。
「なるほど、それは失礼しました。では改めて…… よろしくお願いします、ラキさん」
お、シャルロットさんの再度の挨拶に、今度は笑顔でお辞儀を返した。
……真面目にやると優雅な礼も出来るんだな、あの子。
顔がにぱーって感じのままだから、あんまりお嬢様感は無いけど。
「あぁそうだ、一応他も。このデカい子がシルクで」
アヤメさんが親指で背後のシルクを示す。
大きいって言っても、普通のサイズに比べれば二割ちょっとしか無いけどね。
「あっちでアホを仕留めたハーピーの子がぴーちゃんだ」
「ひどい」
……お姉ちゃんの抗議に元気が無いと思ったら、追いかけ回されて疲れたのか、床にぐでーっと伸びてた。
汚……くはないだろうけど、どうかと思うよ?
「ぴゃっ」
呼ばれたのに気付いたぴーちゃんが、お返事しつつこっちに戻ってきた。
「ええと、ちゃんまで含めてのお名前なんでしょうか?」
「あぁ、そうそう。省いたら不機嫌になるから気を付けてな」
「はい」
自分で付けておいて何だけど、やっぱり罠みたいな名前だよなぁ。
まぁ目隠しを付けてさえいれば、むすっとされたって程度で済むからまだマシなのか。
流石に、怒って自分で外して睨んだりまではしないだろうしね。
というか、やったら叱らないといけなくなるし。
その前に多分、私が飼い主としての責任で叱られるだろうけど。
「あ、はい」
ん?
あー、ラキが握手を要求したのか。
差し出された人差し指を、両手で掴んでぶんぶん上下に揺さぶってる。
「おお、お強いのですね」
「とんでもなくな……」
実感がこもってるなぁ。
まぁ消し飛ばされたの、ついさっきの事だもんね。
「ぴっ」
ラキが手を離すと同時に、私もとばかりにぴーちゃんが声をかけてきた。
「ぴーちゃんさんも、よろしくお願いします」
「ぴぅ」
……やっぱり「ちゃんさん」なんだ。
「ぴぴっ」
「はい? ……えーと、こうですか?」
「ぴ」
なんか気を付けの姿勢にさせられてる。
何をするつもりだ。
「ぴゃーぃ」
「むぶっ」
……なんで抱き着くんだ。
胸元に顔を抱えて羽で包んだから、シャルロットさんの上半身がほぼすっぽり隠れちゃったぞ。
っていうか、なんか小さく「んむー」って聞こえてくるんだけど、ちゃんと息出来てる?
あ、大丈夫っぽい。
少し落ち着いたのか、シャルロットさんの側もぴーちゃんの背中に手を回してる。
……背面の羽毛部分を撫でたと思ったら、なんか小さく「ふかふかです……」って聞こえてきた。
確かに羽毛は気持ち良いけれど、シャルロットさん、順応性が高すぎやしないかな?
いや、良い事だとは思うけどさ。




