901:救出してみよう。
「たすけてー?」
「いや、私に言われても……」
なんでこっちを見て言うんだ。
他にもっと適任が居る…… っていうか、ジェイさんに上げてって言えば済むでしょうに。
「うふふ。せっかくのリクエストだし、白雪ちゃんに任せようかしら」
「のわわー。……いやこれマジで早めにお願いヤバいこれ」
ジェイさんが面白そうに笑いながら、再度シャルロットさんの足を下ろし始めた。
さっきまでよりかなり遅いけど、もう既に余裕が無かったんだから危ないだろうに。
エリちゃん、未だにふざけてはいるけどちょっと本気で焦ってるな。
まぁあの状況、一気に押し潰されるよりキツそうだし当たり前か。
しかし【妖精】の私にどうしろって…… いや、むしろ【妖精】だからこそ簡単な事なのか。
「ほいっ」
「のあぁっ!?」
「危なっ!?」
割とギリギリな姿勢になってるエリちゃんを【追放】で柱の外に跳ばしてあげたら、うずくまった姿勢から一気にのけ反って私の方に吹っ飛んできた。
ちょっと逸れてたから良かったけど、危うく巻き込まれるところだった……
……あー、曲げられる体を全力で伸ばそうとしてる状況で、一気に抵抗を取り去ったらそうもなるか。
「うごゃー……」
吹っ飛ぶことを予想してたらしいジェイさんが柔らかく着地を受け止めたとはいえ、無茶な動きのせいで体中の筋を痛めたのか、うめきながらモゾモゾ動いてる。
ていうか何その声。
「あらあら、大丈夫?」
あ、倒れたエリちゃんの横から、新しいジェイさんが生えてきた。
よく複数同時に制御できるよなぁ。
「ふぉぁー…… あんま大丈夫じゃなかったけど、ありがとーございまーす」
おー、やっぱり専門じゃないって言っても【魔人】の強いNPCの人?だけあって、回復魔法も強力だな。
うめいてたのが一瞬で立てる様になって、お礼を言いながらぽふっと抱き着いた。
……しかし初対面の人だしとか言ってた割に、めっちゃ馴れ馴れしいな。
でもジェイさんはあらあらーって言いながら触手で撫で回してるし、別に問題は無いみたいだから良いんだろう。
まぁうん、馴れ馴れしいというかやたらとフレンドリーなのは今更だし、エリちゃんって割と誰にでもそんな感じの距離感みたいだもんね。
アリア様相手ですら、どこまで行けるか試してたくらいだし。
本人は気にしなくても、周りの人が許してくれなかったけど。
「やっぱ無理だったかー」
「やるまでも無いレベルだよね」
「ま、何であれ挑戦してみるというのは良い事だろうな」
うん、まぁそれはそうかもしれないけどね。
お姉ちゃんの言う通り、これは流石にやる前から結果が判り切ってるよね。
「しかし、やはりこの体を持ち上げようというのは無謀だと思いますよ」
「うん」
上から聞こえてくるシャルロットさんの言葉に、エリちゃんが素直に頷いてる。
本当にただやってみたかっただけなんだな……
「今の私って大体四十トンくらいあるみたいですから、そうそう持ち上がるものじゃないですしね」
「そうそうっていうか……」
「上げられる人は居るんでしょうか?」
……というかもし居たとして、それはもう人って言って良いんだろうか?
大型トラックでも乗せられない様な存在だぞ。
「居るぞ?」
「えぇ……」
いやアリア様、当然だろうみたいに言われても困る。
「ジーならばなんとか上げるくらいは出来るだろうし」
あー、うん、人間やめてそうなおじいちゃんね。
「ライカも上げるとまでは行かずとも、魔法で強化さえしていれば、踏まれたとしても人の形を保つ事くらいは出来るであろうな」
「流石にあの婆さんでも、無傷とはいかんでしょうがね」
「刺されるぞ?」
ライカさんもそこまでの力が有るのか……
まぁ突然変異みたいな人らしいし、有り得なくもないのか?
というかライカさんっていくら何でもおばあさんって年じゃないでしょ。
ジョージさんの口が悪いのは今に始まった事じゃないけどさ。
……というかその辺の例外クラスの人じゃないと、上に乗るだけで即死攻撃になるってとんでもないな。
いや、まぁこれだけデカければ不思議では無いけどさ。
大きさはパワーだもんね。
それにまぁそこまで硬い人じゃなくても、まず踏まれなきゃ良いだけの話か。
避けるなり軌道を逸らすなりなら、そんな異常なまでの能力は必要無いだろう。
私だって人間に踏まれたらプチュって潰れちゃうけど、踏みに来た人を消滅させる事は簡単に出来ちゃうわけだしね。
……【妖精】は例に上がった人たち以上に異常な存在って気はするけど、まぁそれは置いておこう。




