866:サイズを戻そう。
「それじゃ、流すよー」
「はいよー」
アヤメさんがバランスの崩れにくい姿勢を取ったのを確認して、ゆっくりと魔力を流し込み始める。
出来る限り少ない量にして様子を見つつ、あんまり遅ければ少し増やすくらいで良いだろう。
「おー、相変わらず変な感じだなぁ」
「まぁそうだろうねぇ。っていうかラキ、危ないから少し離れた方が良いよ?」
楽しそうにアヤメさんを観察しているラキに、一応釘を刺しておこう。
というか、指の上でカサカサされるとちょっとくすぐったいよ。
「まぁ良いんじゃないか? 【妖精】サイズの相手に踏まれたとしても、ラキにとっちゃ大した重さじゃないんだろ?」
「そりゃそうだろうけどさ」
ラキを踏んづけたりしたら、むしろ逆にこっちの足が痛そうではあるけども。
尖ってる部分はあんまり無いとはいえ、クモ脚とかは細くて頑丈だし。
「魔力の方を心配してるんだろうけど、ヤバそうだったら察知して離れるだろうしな」
「あー、それはそうかも」
正直な所、少なくとも私に比べれば段違いに危険を察知する能力は高いだろうしね。
……まぁ、結界に気付かずにぴゅーんって飛んで行って激突死する奴より危機管理能力の無い召喚獣はいないよね。
うん、比較対象が悪いな。
「それじゃ、言わなくても大丈夫だと思うけど、アヤメさんの邪魔にならない様にするのと、危なそうならすぐに離れるんだよ?」
おお、両手を上げて解りやすく喜んでる。
一緒に遊んであげたからか凄く懐かれてるな、アヤメさん。
「おっと。流石にまだちょっと重いな」
少し狭くなったのか、アヤメさんが私の足にまたがる姿勢に変えた所でラキに飛びつかれた。
今のサイズ差だと、大きい猫くらいの感じかな?
「うおぉぉ」
……正面に飛びついたラキが、ガサゴソとクモ脚を動かして素早く背後に回った。
くすぐったいっていうか、変な感触だろうなぁ……
あ、後頭部にくっついて腕を頭に回した。
アヤメさんの頭にあごを乗っけて脱力してるし、こっちからは見えないけど、多分むふーって満足げな顔してるんだろうな。
「しがみ付くのは良いんだけど、ちゃんと緩めていってくれよ?」
アヤメさんの要請に、抱き着いた手で頭をぽふぽふしてお返事してる。
クモの足が肩や胸の辺りをがしっと確保してるし、膨らむのに合わせて緩めてもらわないと体がえらい事になるもんね。
アヤメさんが大きくなっていくにつれて、ラキがどんどん頭の上側に寄って行ってる。
あ、流石に顔をクモ脚でホールドするのは遠慮するんだ。
「よっ、と」
私の足に座ってたアヤメさんが、お尻の横に手をついてから私の足を押さえる様な姿勢に反転した。
流石に狭かったか。
お、ラキが手を振ってる。
やほー。
「このサイズならもう手を出しても大丈夫だよね」
「ああ、頼む」
「このまま進めますと、床に跪く事になりますしね」
「いや、それはそれで膝とかに手を置いていけば良いだけじゃないかな……」
カトリーヌさん、どこからでも出せるって知ってるでしょうに。
わざわざ足にこだわる必要は何も無いでしょ。




