862:足を上げよう。
とりあえず、一応聞いておくとしよう。
お姉ちゃんも大丈夫なのかみたいな顔してるし。
「えーと、大丈夫?」
「ではないだろ」
「ですよね」
うん、まぁ解ってた。
というか聞いておいてなんだけど、この状態でもやっぱり喋れるんだな。
声の振動なのかは解らないけど、少しくすぐったくて力が入りそうになった。
別に今更って感じはするけど、これ以上伸ばすのも悪いだろう。
「ラキ、これで良いのかな?」
一応合ってたのか確認してみたら、頷きが返ってきた。
「そっか。それじゃ、治療して元に戻そうか」
「あー、ちょっと待った」
「ん?」
あれ、思いもよらぬところからストップがかかった。
なんでアヤメさんが戻すのに反対するんだ?
「足を上げるのは、少しお待ちになった方がよろしいかと思いますわ」
「うわビックリした」
後ろから来るのはともかく、なんでお皿の上を這って登場してくるんだよ。
普通に来なさい、普通に。
……まぁそれは良いとして、カトリーヌさんも止めるのか。
「えっと、なんで?」
「恐らく、一般的な感性の方が見たいと思う状況にはなっていないかと」
「まぁ平たく言うとグロいからだな。ギャグマンガみたいにペラペラになってるわけじゃないだろうし」
「あぁ……」
カトリーヌさんの返答に、アヤメさんが補足の形で答えてくれた。
確かにいくら血や中身が出ないとは言っても、酷い変形の仕方はしてるだろうしなぁ。
うん、あんまり見たいものではなさそうだ。
「まぁ、そいつならそういうのも大丈夫だろ?」
「カトリーヌさんなら大丈夫だろってアヤメさんが言ってるけど」
「ええ、自分の体で慣れておりますので。ささ、こういった事は私にお任せくださいな」
得意気に言うのはどうかと思うけど、まぁ確かに大丈夫そうな人ではあるな。
「えーと…… それじゃお願いしようかな」
「はい。では失礼して…… あら?」
「ん?」
そっと私の足を持ち上げたカトリーヌさんが、なんか疑問符を浮かべた。
どうしたんだろう?
「おやおや、そちらにおいででしたか」
「ふぉっ」
……唐突に足の裏を触られて変な声が出た。
アヤメさん、私の足の裏にくっついて来てたのか……




