855:忘れず付けよう。
さて、それじゃ戻るとしようか。
……ってちょっと待った。
「そうだぴーちゃん、ちょっといい?」
「ぴ?」
振り向いたぴーちゃんに、おいでおいでと手招きしながら近付いていく。
我ながら良く解らない動きだけど、まぁ良いだろう。
「どしたの?」って顔をしたぴーちゃんの首にかかってる目隠しを、両手でにょいっと伸ばして顔につけてあげる。
「はい、おっけー」
「ぴぅ」
目は隠れてるけど、これは忘れてたって顔だな。
私も半ば忘れてたけど。
アヤメさんが小さいままだから、ぴーちゃんがそのままで戻ったら怯えさせちゃうからね。
お互いに解ってても改めて言われるとしょんぼりするだろうから、口には出さないでおこう。
「……ぴぁー」
ぴーちゃんが悲し気な声を出しつつ、羽の先を目隠しの下に差し込んでごそごそし始めた。
「あ、ごめんごめん。うっかりしてた」
どうやら目隠しの内側に、ちょっと土が付いてたらしい。
申し訳ないので払ってあげようかと思ったけど、私が手で撫でるよりもこのまま羽で掃った方が綺麗になりそうだな。
羽にもちょっと付いてた気がするけど、差し込む前に羽同士をぽふぽふしてたから、問題無いだろう。
とりあえず、代わりに【妖精吐息】で癒してあげるとしようか。
私が付ける前に気付いてれば、ザラザラした不快感を味わう事も無かっただろうしね。
「ふすぴゃー」
……なんか気持ち良くて力が抜けてるのか、レアな鳴き声が出た。
ああ、カトリーヌさんを落とさない様に足の力は維持しようとしてて、変な感じになってるのか。
まぁ離しても別に落ちない…… と思ったけど、カトリーヌさんの事だし【浮遊】は切ってそうだな。
というかさっきからだらーんって垂れ下がってるし、多分切ってるな。
「それじゃ行こうか」
「ぴ」
カトリーヌさんが無言だけど、荷物になりきってるんだろうか。
普通は顔を掴まれてると話しづらいだろうけど、この人はそのくらいの障害は苦にしないだろうしね。
まぁこの人がこの程度でダウンするわけは無いし、気にしなくても大丈夫だろう。
むしろ大丈夫じゃなければ、迷惑をかけない様に自分で何とかするだろうし。
この流れで大怪我したり死に戻りしたりしたら、ぴーちゃんが気にするだろうからね。
さてさて、ラキは…… というよりアヤメさんは頑張ってるかな?
いや、というかアヤメさんは無事かなって方が正解か……?




