836:部屋を満たそう。
「……で、それから?」
まぁ良いやって顔でお兄さんが続きを促した。
うん、エリちゃんの言動の細かいところまでツッコんでたらキリが無いからな。
エリちゃんも承知の上でボケてるんだろうし。
「染み出すって言っても結構な勢いで出てきてて、どんどん溜まっていって一分も経たないうちに天井まで全部とろとろに沈んだよ」
「空気は……まぁどっかから抜いてるんだろうな。つーか柔らかい蓋って、めっちゃ膨らんだんじゃないのか?」
気になるのはそこなのか。
まぁ押したら伸びるって言ってたし、風船みたいになってそうだけど。
「あー、なんかそこは大丈夫だった。私も不思議に思って途中で触ってみたんだけど、かなり硬いっていうか張りつめてる感じになってたよ」
「一応対策はされてるんだな」
……相変わらず変な所で変な仕様だな。
「まぁそれはともかく、それから五秒くらいしたら今度は水位が下がり始めてね」
「水責め完了ってか」
「まぁそんな感じだけど、窒息させるわけじゃないねぇ」
「ん?」
「だってあれ、とんでもなく強力な消化液だったし」
「……まぁうん、体内だしな」
いや、それなら天井まで一杯にする意味は有るの?
逃げ場を無くすためだとしても、その前段階で眠らせてるはずなのに。
……まぁ相手がどういう生き物か解らないし、寝てても天井付近に浮いてるかもしれないか。
いや、それがどういう状況かは解らないけど。
「つーか、『とんでもなく強力』ってのは何なんだ。自分がやる前に試したのか?」
「当たり前じゃーん」
「いや、それは当たり前ではない」
うん。
それはエリちゃんとかカトリーヌさんみたいな人に限った常識だよね。
……下にいるカトリーヌさん、『ですわよね?』みたいな顔してる。
ではないよ。
「まぁとりあえず先に排水の話するけど」
「おう」
「とはいえそんなに言うほどの事は無いけどね。お風呂の床の排水溝に全部抜けていって、残りは床や壁にそのまま吸収されて綺麗さっぱり元通りって感じだったし」
「中に居た生き物だけが消え去ってるって訳か」
「そゆことだね。まぁ所持品もだろうけど」
それ、何か持ち込んでたら全部ロストしちゃうんだろうか。
……あー、そもそも持ち込めないのかな?
元々、そこに入る時点で一回食べられてるんだしね。
「んで、おねーさんに『今のって消化液みたいなやつですか?』って聞いてみたら、頷いて桶に用意してくれたよ」
「妙な親切心だな……」
そこは頷くだけにしておいて、そのまま部屋に放り込んでしまえば良いと思うよ。
「試しに手を入れてみたんだけど」
「どうだった?」
「二秒くらいで私の右手は無くなっちゃったね」
「強すぎる……」
いや、何平然と体を失った話してんのさ。
……まぁエリちゃんの場合、今更過ぎる話か。
すぐ元に戻ってるんだし。




