826:待遇を聞かされよう。
「……俺が食われてたらどうなってたんだろうな」
あー、そうか。
本来の捕獲対象だったんだろうし、危ないところだったのかもしれないな。
いや、食べられる時点で十二分に危ないんだけど。
「やっぱアレじゃない? こう、なんかお仕置きされたり、お仕事させられたりって感じじゃないかな」
「せめて仕事の方で頼みたいとこだな……」
うん、まぁそりゃそうだろう。
「えー、でもかなり綺麗なおねーさんだったよー?」
「いや、そういう問題じゃないだろ」
お兄さんが呆れた顔でツッコんでる。
うん、そもそもお仕置きされたくないって話だろうに。
「カッコいい系の顔立ちに落ち着いた物腰でー、こう、なんてーの? カジノのディーラーさんみたいな、スラッとした細身の服装でさー」
感じは何となく伝わるけど、人の話を聞きなさい。
「まー明らかに『さっきまでその格好で寝てましたよね』って感じに崩れてたけどねー。ちょっと寝ぐせもついてたし」
……ダメじゃん。
何なの、私が送り込まないからお仕事が無くて暇だったの?
「……そういうのは嫌いではないけど」
お兄さんも何を白状してるんだ。
出来る人がたまに見せる、ちょっとぽんこつなギャップとかが好みなのか。
別にとやかく言う事じゃないし、それはそれで良いけどさ。
「……よ」
ん?
なんか今、羊さんが呟いた様な……
「妖精収容所……」
なんだその強制収容所みたいな単語は。
ちょっと印象が悪くなりそうだから勘弁してくれないだろうか。
っていうか恥ずかしそうにするなら、なんでわざわざ言うんだ。
「それだとなんか、妖精を収容する場所っぽくない?」
「あ、確かに……」
いやお兄さん、そこはどうでも良い。
言ってる事は解るけど、ツッコミ所は多分そこじゃないよ。
「で」
あ、スルーするんだ。
まぁそんな謎の単語を掘り下げられても困るけど。
「そんな感じの施設だけど、お客さん扱いだったのかな? 結構丁寧に扱ってもらえてね」
「まぁ人違いだし、色々情報が見られるなら私の知り合いだって解っただろうしね」
「知り合いだなんてそんな遠慮しちゃってー。ゲーム内での私はユッキーの所有物だよー」
「いや、せめて配下とかそういうのに留めておいてくれないかな…… いや、あっはっはじゃなくて」
なに笑ってるんだこのクマめ。
私の下だって言うんだったら私を困らせて遊ぶんじゃないやい。
「まーそれは良いとして」
「くぅ……」
まぁ良い、話も進まないしここは諦めよう。
仕方ないんだ、うん。
ツッコみ続けても遊ばれるだけだからじゃないんだ。
「お皿に乗せられてどこに連れてかれるのかと思ってたら、おねーさんが一面だけ何も無かった壁に近付いた途端に、壁の一部が自動ドアみたいにスーッて開いてさ」
「私の体はどこまで奇妙な造りをしてるんだろう……」
いや、もうそんな空間が有る時点で何を言っても無駄ではあるんだけどさ。
情報端末とか自動ドアとか、なんで半端に近代的なんだ。
「まぁ一部って言っても、おねーさんのサイズに合わせてだから下から上までほぼ全部だったけどね」
うん、まぁそれはそうだろう。
それだけデカい人が通る為のドアなんだろうし。
「壁の向こうはおねーさんの事務所みたいな…… 兼応接室かな? でっかい仕事机と、その正面に低いテーブルを挟んでソファーが置いてあったし」
「なんて無駄そうな設備なんだろうか……」
誰が来るって言うんだ、そんな所に。
「まー何か有るんじゃない? とりあえず今はソファ、おねーさんの寝床になってたっぽいけどね」
「あ、やっぱりなんだ」
「背もたれにベストとタオルケットっぽい物に、アイマスクまで乗っかってたからねぇ」
……謎のおねーさん、ダレすぎじゃない?
いや、仕方ないのかもしれないけどさ。




