1638:引っ張られてみよう。
しかしコレットさんが静か……いやあの人はいつも静かか。
アリア様に何か言われなきゃ、存在感を消して控えててくれる人だし。
言われたら何でもやる人でもあるけど、まぁそこはメイドさんだし仕方ないって事で。
……仕方ないか? まぁ良いか。
「試しに少し引っ張ってみても良いかな?」
「んん? あぁ、良いですけど痛くない程度にお願いしますね」
「うむ、当然だ」
一瞬何をかと思ったけど、今掴んでる物っていったら翅しかないよね。
ちょっと引っ張るくらいで折れたり抜けたりはしないだろうし、断るほどの事でも無いだろう。
「ふぅむ」
「どうしました?」
両手で掴んでグッと引っ張ってみたアリア様、何やら不本意って感じの呟きを漏らしてる。
「ヌルッと出てきて伸びれば面白いなと思ったのだが、特にそういう事はなかったな」
「人を何だと思ってるんですか……」
面白生物か何かじゃ……なくはないな、うん。
その点はあんまり責められない。
でも流石にそれは無い……って言いたいけど、さっき引いたらヌルっと伸びる物見せたばっかりだった。
うん、文句が言える生き物ではないな。
「しかしこの翅、当然ながらそれなりの強度は有る様だな」
「まぁ飛び出してる部分ですから、そうじゃないと困りますしね」
流石に半分サイズの人に引っ張られたくらいで千切れたりしちゃう様じゃ、【妖精】だけで暮らしてても事故が頻発しそうだよ。
いや、それならそれで気を付けて生活するだけだろうけどさ。
「痛くは無いのだな?」
「んー、痛いって程ではないですね」
今のアリア様の腕力だと、思いっきり引っ張られたら少し痛いかもってくらいだろうか。
少々力を入れて引くくらいだと、程よい刺激で逆にちょっと気持ち良いかもしれない。
「ふむふむ」
「……齧らないでもらえます?」
「うむ、甘い」
なに人の翅をもぐもぐ甘噛みしてるんだ、このお姫様は。
そりゃ鱗粉ついてるから甘いでしょうよ。
というかなんで触る時に訊いておいて齧るのは無断なんだ。
……先に訊いたらいやですよって言うのは判りきってるし、やっちゃっても別に怒らないのも判ってるからか。
実際なにやってんですか……って程度で済んでるし。




