1627:諦めて引かれよう。
「正直これ、無かった事にしたいんだけどね…… まぁそんな事言ってても仕方ないし、口で言うより見た方が早いんでどうぞ」
「うむ」
何度目かも判らない逃避発言をしてから、諦めて拡大した【お人形遊び】のパネルをアリア様へ。
「……ふむ」
「……いやいや、これは無いわ」
「雪ちゃんこわーい」
「だからこんなもの、好きで覚える訳無いでしょ」
私だってこういうおかしな魔法は習得したくないんだよ。
知らない内に勝手に生えてくるんだから仕方ないじゃないの。
「口吻ってあれだよね? ちょうちょのくるくるしてるやつとかの」
「単語の意味としては口元や話しぶりという意味も有りますが、この場合はそちらでしょうね」
「むしろそっちの用法の方は、普段はそんなに使わないと思うぞ」
うん、大抵はお姉ちゃんが言った方の意味だよね。
もしくはわんことかの……マズルだっけ。
口先が前の方に出てる形のやつ。
「雪ちゃんそんなの生えてたっけ?」
「それ覚えたタイミングで生えたっていうか、出せる様になったっぽい。こんな感じで」
「おー……」
舌先から出した針を摘まんで、にゅいーっと前に伸ばして見せてみる。
「なんか卵とか産みつけそうだな」
「うっさいやい」
人を何だと思ってるんだ、アヤメさんは。
って言いたいところだけど、正直自分でもちょっと思うし、そのうち似た様な事やらかしそうで怖いからあんまり言わないでほしい。
「ふむ、自由に動かせるのか。中々に興味深い」
「そうですね。どうも魔力で出来てるっぽくて、おかげで慣れれば簡単でした」
こんな風に、とにゅいにゅい動かしてみる。
あんまり食いつかれても困るんだけど、事実は事実として報告した方が良いだろうしね。
「結構伸びるんだな……」
「雪ちゃん雪ちゃん、ハートマーク作ってみてー」
「やだ」
「けちー」
唐突に変な要求をしてくるんじゃないよ。
ハートとかいうガラじゃないでしょ、私はさ。
いくら今は【妖精】だからって、可愛らしい方向に行くにも限度が有るってもんだよ。




