1534:生贄に送り出されよう。
「おー、誰かと思えばまっちゃんじゃーん」
「誰かも何も、アンタさっきこっち見てたでしょうに」
あ、この人もエリちゃんの知り合いなんだ。
顔が広い…… いや、私の基準が狭すぎるだけか。
現実側だと友達ゼロだし。
「いやー、ちょうど良かったよー」
「やめろ、くっつくんじゃない」
あ、捕まってる。
正面から抱き着いて軽々と持ち上げてる辺り、エリちゃんもやっぱり熊さんパワーの持ち主だよなぁ。
というか兎のお姉さん、耳を除いても結構背が高いな。
足が浮いてるから判り辛いけど、百七十ちょっとはあるんじゃなかろうか。
「まっちゃん、今日はこれで終わりだよね?」
「あ? あー、リアルの話?」
「そそ。明日はちゃんと学校行くんでしょ?」
「いや普段から行ってるよ。勝手にサボり常習犯にするんじゃない」
エリちゃん、グイグイ行き過ぎなんじゃないか?
いや、でも兎のお姉さんも慣れたものなのか、別段そんなに嫌そうではないな。
あ、エリちゃんがお姉さんを持ち上げたままこっちに向いて戻って来た。
それ、前見えてないよね?
戻る距離を間違えて突っ込んで来ないでね?
いや、こっちが避ければ済む話だけどさ。
「おいこら、人を勝手に連れて…… いや頑張れよーじゃねーだろ! 助けろよ!」
……お姉さん、パーティーメンバーに速攻で見捨てられてるな。
見た感じみんな良い人っぽいけど、なんか面白そうってのが上回ったんだろうな……
「んでねー」
「いや、とりあえず降ろそうよ」
「はーい」
持ち上げた状態のまま話をするのは、自分も兎さんも大変だろうに。
「助かるよ…… 逃げないから離せって」
「えー」
「ふんっ」
「んぶっ、あだだだだ」
しがみついたままのエリちゃんの頭部……というか耳の後ろ辺りに、両側からお姉さんの拳がめり込んだ。
あそこをグリグリ締め付けられるのは、なんだかかなり痛そうだな。
というかエリちゃんの声が割と本気っぽいので、実際に痛いんだろう。
「んもー、まっちゃんは過激なんだからー」
「悪いのはアンタだ」
「まぁうん、そうだよね」
「うらぎりものー」
いや、最初からお姉さん側だったよ。
この件に関してはエリちゃんの味方をした覚えは無いよ。
「あ、そうそう。このウサちゃんはまっちゃんだよ」
「いや待て、せめて名前くらいちゃんと言えよ…… マツリだよ、よろしくね」
「あ、はい、よろしくお願いします。私は……」
「あ、そっちは大丈夫。白雪とロシェとカトリーヌだよね」
「誰がアホかー!」
妖精さんも名前ではないと言いたいところだけど、知ってはいるっぽいから気にしないでおこう。
カトリーヌさんのはまぁうん、もう称号みたいなもんだよね。
あ、ロシェさんが物理攻撃で抗議に行った。
「っおぉぅぁー…… 足首グネってなったー……」
「そりゃそうでしょ……」
「食らう側もプニって肉球みたいな感触があるだけで、逆にちょっと気持ち良いくらいだしなぁ……」
人間にぶつかっていっても攻撃としての意味は無い上に、足に返って来る負担は地面に着地するのとそう変わらないぞ。
とりあえず、効果は薄いけど【妖精吐息】で治療しておこう。




