1512:砲撃されよう。
一口サイズに切り取られたカステラを、もふりと口に押し込まれる。
うん、サイズがサイズだからちょっともそもそするけど、普通に美味しいな。
「あ、だめ? はい」
ロシェさんが手で受け取ろうとして、ダメですって顔されてる。
諦めて大人しく『あーん』されようね。
「あぁ、せやった」
ん?
ワッフルの生地を流し込んでむにっと挟んだお姉さんが、何かを思い出したらしくカステラの生地に何かの粉を入れてまぜまぜし始めた。
別の味付けとかかな?
私達三人とぴーちゃんのお世話をしつつ、頭上のラキや胸元のクリスにも手際よく分けてあげるシルク。
というかラキはそこに居て良いんだろうか。
頭の上なんだから、ポロポロ落としたりしちゃダメだよ?
お、クリスはカステラが気に入ったらしいな。
ちょっとだけにょきっと出てきて、次はまだかなって顔してる。
まだまだいっぱい有るから、好きなだけ食べると良いよ。
「ロシェー」
「ん?」
「ほいパス」
「パス? ってちょぉっ!?」
新しく作られたベビーカステラがポーンと放物線を描いてロシェさんに飛んできて、割り込んだシルクにぽふりとキャッチされる。
いくら小さいお菓子とはいえある程度の重量は有るし、通常サイズの人の投げた物だと速度もヤバいんだから気を付けてほしい。
「いや危ないなー。何考えてんのさ」
「あ、多分聞こえてないですよ」
「あー、そっか」
このお姉さんは【聴覚強化】を持ってないみたいだし。
まぁこの状況だと、聞こえなくても大体解るだろうけど。
「あっはっは。大丈夫大丈夫、その子に聞いてみ?」
うん?
その子ってのは受け止めたシルクか。
いやそれ以外に居ないな。
「シルクちゃん、どしたの?」
なんかシルクが疑問符を浮かべてる。
カステラを両手で挟んでちょっとふにふにしてから、そっとロシェさんに手渡した。
「え、なにこれ軽っ」
「はい?」
結構大きな茶色いボールを、ぶんぶんと上下に振るロシェさん。
ほら、と渡されたけど確かにえらく軽いな。
これ中身スカスカなんじゃないの?
とりあえずロシェさんにパスされた物だから返して、と。
「本当は妖精さんに食べてもらおう思ぅとってんけど、可愛いお世話係が居るけんねぇ」
可愛いって言われてぺこりと頭を下げてるシルクはまぁ良いとして、それを言うならロシェさんもお世話されてたぞ。
「小さいのがそれ両手で持ってもふもふ食べよんの、可愛ぇかな思てな」
……うん、まぁ言いたい事は解る。
なんというか、妖精っぽい絵だろうね。
やる側は大変そうだけど。
「うわ、本当にスッカスカだ」
「おー……」
ロシェさんが試しにちょっとむしってみると、内側は殆どが空洞になってた。
なんというか、微妙に弾力のあるお麩って感じだな。
後から投入してたの、膨らし粉か何かだったんだろうか。
というかよくこんなのをタコ焼き器で作れるな……
そんな無駄な技術じゃなくて、もっと意味のある技を覚えた方が良いと思うんだ。
いや、そこは人の勝手だけどさ。
あとなんかお姉さん、微妙に訛りが強くなってるのはなんなんだ。
いや、そこも人の勝手だし別に良いんだけどさ。




