1507:おねだりはやめておこう。
まぁ先延ばしにした事はその時に考えれば良いとして。
「そういえば今日は何にする?」
「んー? んー、ロシェさんは何か食べたい物とか有る?」
アヤメさん、どうするかなって顔したと思ったら新顔にぶん投げた。
まぁ歓迎会的な意味ではロシェさんが選ぶのが良いかもしれないけど。
「えー……? うーん、市場かー」
うん、いきなり言われても困るよね。
まぁ私の振り方も十分唐突ではあったけど。
「あ、そうだ。お菓子みたいな物でも良いかな?」
「ん? 私は良いけど」
「大歓迎だよー」
「はい、問題有りません」
お菓子か。
晩御飯としてはどうなのと思わなくもないけど、これゲームだから満腹度が満たせれば後は気分の問題だしね。
「どこか美味しい店でも知ってるのか?」
「まぁねー。おねーさんに任せなさい」
いや、一応最年長だろうけど言うほど年上でもないよね。
……というか晩御飯にお菓子を食べさせようとするおねーさんって、あんまり任せられないタイプじゃない?
まぁ着けば解るという事で、適当に雑談をしながら市場へ向かう。
「そういや、ロシェさんってなんで【妖精】なんかになろうと思ったんだ?」
「『なんか』って。いやうん、『なんか』だな……」
「だろ」
つい反射的にツッコんだけど、普段から自分でもそう思ってる様な事だったな。
アヤメさんは何も間違ってなかった。
「あぁ、空を……いや別に空じゃなくても良いんだけど、びゅんびゅん飛んでみたくてさ」
「あー、そういう需要か」
「まだ慣れてないし一緒に行動してるから控えてるけど、早くかっ飛ばしたいんだよねー」
「……スピード狂の類か?」
「うん。危ないから外じゃやめといた方が良いよって言ってある」
早くも察したアヤメさんの質問に、素直に頷いておく。
ロシェさん的には、空じゃなくてもというか空じゃない方が良いんだよね。
近くに何も無いとスピード感を味わえないから。
「それじゃ、アリア様に飛行場っていうかアスレチックみたいなのでもお願いしてみたら?」
「あ、その手が」
「いやそれはよしておいた方が良いと思うな……」
「んぇ?」
おぉ、と手を打つロシェさんに早口で待ったをかける。
お姉ちゃんは迂闊にそういう事を言うんじゃありません。
「あの人にそういう事をポロッと言っちゃったら、私の家みたいに一区画丸々使って競技場とか作り始めますよ……?」
「……あー」
「その上で土地と建物に職員と使用人までセットで、平然とした顔で『お前の物だ』って押し付けてきますからね……?」
「愛が重いね……」
「重過ぎるんですよ……」
私の時は事故で殺したお詫びとかの理由が有ったんだけど、今ではそんなの関係無しにやりそうだってイメージだからな、あの王女様。
権限の乱用で都市計画を乱さないでと言いたいところだけど、職員さん達と会議したところで「【妖精】の為の」っていう魔法の言葉が頭に付いたらどんな施設も全員賛成で可決されちゃうだろうからなぁ……
「事前に言っておいてもダメかなぁ」
「ダメですね」
「即答された……」
うん、アリア様もだけど、実際に作業する他のNPCの人達にもブレーキは無いと思った方が良いよ。
ジョージさんみたいな一部の例外は居るけどさ。
フミさんも……いや、あの人はあの人でたまになんかおかしいな。
「うちに結構高い塔有るじゃないですか」
「うん、有ったね」
「あれ私、大工さんに『作業場兼物置の小屋』を作ってくれってお願いしたんですよ」
「……なんで?」
「さぁ……」
「その指示で何がどうなったら塔が建つんだ」という質問には、私からは答えられないな。
むしろこっちが訊きたいくらいだよ。
カトリーヌさんのおかげで大工さんの好感度が異常に高くなってたのを差し引いても、あれはちょっと頑張り過ぎだろう。
まぁ一番の原因は多分、設計段階でアリア様が忍び込んだ事だろうけど。




