1502:アピールをスルーしよう。
「もがっ」
「……何をやってるんですか」
ロシェさんの奇声で振り向くと、抱っこしてた筈のアリア様が全身を使って顔面にしがみついてた。
なんかあれ、ホラー映画で卵を産み付けてくる生き物みたいだな。
「白雪」
「はい?」
「この状況、やってみたは良いのだが」
「はい」
「自力で降りられんな、これは」
「……でしょうね」
まぁうん、サイズ的に頭にしがみつくのもギリギリな手足の長さだもんね。
離したら落ちるよね。
別に私に頼まなくても、ロシェさん自身に降ろしてもらえば良いんじゃないかなーとか思いつつ、背後からアリア様の胴体を掴んで引きはがす。
「なんか誤解されそうだけど一つ良いかな」
「はい?」
大人しくしててくださいよとアリア様を机に降ろしてたら、なんか真顔のロシェさんが声をかけてきた。
なんだなんだ、今度はなんなんだ。
「アリア様、めっちゃ良い匂いするね」
「私に言われても……」
どういう反応を求めてるんだ、この人は。
同意しろと言われても、別にそんなに深く嗅いだことなんて無いよ。
「こう見えて、私は一国の王女だからな!」
褒められたアリア様、胸を張って宣言してる。
うん、そうなんだよね。めっちゃ偉いんだよね、この人。
「まぁ確かに、色々と気を遣ってそうですね」
「うむ! ……というか、コレットがだな……」
「あぁ……」
なんか大体想像がついた。
これ、本人が別に良いんじゃないかって言ってもコレットさんが熱心過ぎるパターンだ。
まぁ私とシルクとは違って、アリア様自身も十分って言える程度には気を遣ってるんだろう。
私は元々がアレだから、別に最低限で良いでしょって考えだもんなぁ。
まぁ一応身綺麗にしてれば身内は喜んでくれるから、全くの無意味ではないんだけどさ。
仕方ないんだけど、身内だけなんだよね。
っていうかさっきからアリア様が腰に手を当てて仁王立ちしたままだけど、嗅いでみろって事なんだろうか。
よし、直接そうとは言われてないし気付かなかった事にしてスルーしておこう。
もしかしたら勘違いかもしれないし、そうだったら恥ずかし過ぎる。
「ぬぅ」
……うん、勘違いじゃなかったな、これは。
クリスは何してるかなーって玄関の方に向き直ったら、斜め下の方から失敗かぁって感じの声が聞こえて来たし。
私は別に、積極的に変な事をしてる訳じゃないんですよ。
自分で言うのもなんだけど、まぁ仕方ないかーって流されてるだけなんで、やらせたいならやれって言わないとダメですよ。
なので言わないでくださいね、と心の中で願っておこう。
……大丈夫かな。
この人達、さらっと人の心を読んでくる気がするけど、聞こえてないよね?




