1441:嫌な話を吹き込まれよう。
「しかしこのふわふわが一杯って、危なくなければちょっと魅力的ですねぇ」
「危ないわよ?」
「ですよね」
まぁ流石に、こっちも解ってて言ってるよ。
だって魔物だし。
「群れに近付いた生き物は、人も動物も魔物も全てお構いなしに襲われて、一瞬で粉々にされちゃうわ」
「……危ないってもんじゃないですね。っていうか粉々って」
どうやら予想以上にヤバい生き物だったらしい。
「うふふ。その子たち、主食が生き物の血液でね?」
「何笑ってんですか」
えぇ……って思う以上にツッコミが先に来てしまった。
普通の肉食かと思ったら、吸血生物なのか。
なんか現実にも一応、吸血する鳥なんてのが居るんだっけ?
「鋭い嘴で獲物の体を削り取って、破片から血液だけ吸い取って残りをペッて吐き出しちゃうの」
「……それを集団で?」
なるほど、粉々ってそういう事ね。
「そうねぇ。大きめの群れだと千羽を超える事も有るわ」
「うわぁ……」
いくら一羽が小さくても、数で攻められると……
っていうか一瞬って言ってたし、単純に一羽ずつの攻撃も速いんだろうな。
それが無数に襲い掛かって来る、と。
「ちなみに名前のカーマインっていうのは、その時に返り血を浴びて染まった姿が由来よ」
「だろうとは思いました」
「紅くなったままだと重くて飛びづらくなるから、食後には仲間同士でデザートがてらに毛繕いをしあう習性が有るわね」
「……動作だけなら可愛いんでしょうね」
動作だけなら。
というか血で染まった綿毛を元に戻すって、何気にお掃除性能高いな。
吸水性の高そうなもこもこだから、普通の水だったとしても大変だろうに。
「その子たち、厄介なのは防具の意味が殆ど無いって事ねぇ」
「ん? あー、小さいからですか?」
「そうね。硬い鎧は隙間から潜り込まれてしまうし、柔らかいと一緒にバラバラになるだけね」
それだとむしろ、金属鎧なんて着てたら逆効果になりそうだな。
内側に入られたらもう急いで脱ぐしか無さそうだけど、そう簡単に着脱できるものでもないだろうし。
「もっと厄介なのは……」
「何です?」
まだ有るのか。
詳しく訊こうと思ったらいくらでも出てきそうだけど。
「解り易く言うなら、『物理攻撃無効』かしらね」
「……性質が悪すぎません?」
それ、パーティー構成によっては詰む要素じゃないの。
まぁ脳筋パーティーを組むなら、そういう相手への対抗手段は持っておけって話だけどさ。
「うふふ。正確には『ほぼ』無効なのだけど」
「ほぼ?」
「無効化の理由が、『小さすぎる事』と『軽すぎる事』だから」
「……あー、当たらないし当たっても、って事ですか」
確かにあの軽さだと、切ろうと思って剣を振ってみても、その動作が起こす風でふわっと避けちゃいそうだ。
でっかいハンマーとかで叩き潰そうとしたら、空気と一緒にするりと抜けていきそうだし。
もし何かが当たったとしても、軽さともふもふのせいでろくな衝撃も受けずに終わりそうだな。
摘まんだり掴んだりできれば少しは倒せるかもしれないけど、そんな事やってる間に残りの子たちにミンチにされておしまいなんだろう。
「だけど、火はとぉっても良く効くわよ?」
……うふふって言いながら触手の先にポッと灯すのはやめたげて?
箱で大人しくしてたふわふわが、ちょっと身構えちゃってるからさ。




