1436:自慢をされよう。
うーむ。
解ってた事ではあるんだけど、こっちの用事は早々に終わってしまったぞ。
あっちは色々見せてもらったりしてる訳だからまだまだ時間がかかるだろうけど、どうしたものかな。
「あぁ、そうそう」
ん?
せっかくだし研究用の粉や糸を追加で渡しておこうかなーとか思ってたら、ジェイさんが何か思い出したらしくぷょっと手を打った。
なにその音。感触が気になるんだけど。
「白雪ちゃん、ふわふわした生き物は好きよね?」
「ん? あ、はい」
普通に答えちゃったけど、実験用に飼ってる生き物に大人しくて可愛い子でも居るんだろうか。
もふもふさせてくれるなら素直に喜ぶぞ。
……でも出してくるのがジェイさんだしなぁ。
保険に「大体は」とか付けておいた方が良かっただろうか。
「実験用に色々と飼育してるとね、たまに面白い子が生まれたりするの」
「はぁ」
若干警戒してるから、生返事気味になってしまった。
突然変異とか、そういうやつだろうか?
「うふふ。危なくないから大丈夫よ?」
「まぁ本気で心配してる訳じゃないですけど……」
襲ってくる様な生き物は出さない事くらいは判るし、もし襲われたとしても出した人の責任として自分で止めてくれるだろうし。
その生き物の息の根も止まるだろうけど。
「一応は魔物なんだけど、他の子と違ってとっても大人しくて賢い子が出てきてね。こっちの言っている事も、なんとなくだけど理解してるみたいなの」
「へぇ…… って魔物も飼ってるんですね」
「うふふ」
まぁ実験された後の生き物ももはや魔物と言って良いとは思うけど。
……いや、犠牲者かな?
「とっても小さい子なんだけど、見てみるかしら?」
「まぁ気にはなりますし、せっかくですからお言葉に甘えて」
というか、面白い物を手に入れたから見せたいって感じでグイグイ来てるから、断る選択肢が非常に選びづらいぞ。
いや、まぁふわふわって言われたら気になるのは本当だけど。
「はぁい、お待たせ」
「待ってないですよ」
さっきまで無かったドアから、もう一人のジェイさんが小さい箱を持って入って来たけどさ。
お待たせって言われても、私が「甘えて」って言ってから三秒も経ってないよ。
しかし「とっても小さい」って言葉通り、本当に小さそうだな。
持ってきた箱、人の手の平に収まるくらいの大きさしか無いぞ。
まぁ持ってる人には手の平が無いけど。
ん?
開けて見せるのかと思ったら、そのまま机に置いたな。
「箱の蓋は軽いから、白雪ちゃんでも開けられるはずよ」
え、私が開けるの?
「自分で開けるのはちょっと怖いですね……」
中に入ってるのが生き物だって判ってるから、余計にさ。
大人しいとはいえ魔物らしいしね。
まぁ本当に安全だからやらせるんだろうけどさ。
箱の蓋だって、鍵が無いどころか普通に上に被せてあるだけの物だし。
なにか危険が有る生き物なら、ここまで無警戒な入れ物で出してこないだろう。
ええい、ままよ。
恐れてても仕方ないんだから、パッと開けちゃえば良いのだ。
とぃやっ。
「……んん?」
あれ、何も居なくない?
私から見ても一メートルも無いくらいの箱だし、特に死角も…… ん?
「え、何ですかこれ」
箱と同じ色だから見落としたけど、なんかすみっこの方に真っ白い綿毛みたいなふわふわした何かが居た。
確かに小さいとは言ったけど、小さいにもほどがあるでしょ。
私から見ても五センチくらいしか無いじゃないか。
「その子はカーマインフラッフィンチっていう、鳥の魔物なの。小さくて可愛いでしょう?」
あ、このサイズで鳥なんだ。
普通サイズから見たら蟻とかみたいなサイズだろうに。
あぁ、背景と同化してて見づらいけど、確かに小鳥だな。
似た鳥で例えるなら、冬場のシマエナガってところだろうか。
あのちっこくてふわふわした可愛いの。
「フラッフ」って綿毛みたいな意味だったと思うけど、確かに名前通りの見た目だな。
ちょっとふわふわの密度が高いけど、サイズも相まって綿毛に混ざって飛んでたら気付かないかもしれないぞ。
……というかジェイさん、なんで同じ色の箱で出してきたんだ。
最初に気付くまでの反応を見る為の、一種のいたずらか?




