1339:細かい所を綺麗にしよう。
「まぁとりあえず、もうちょっと離れますか」
「ほい」
流石にうっかり踏まれる様な位置じゃないとはいえ、ふらついたりすると危なそうだしね。
「では、私は次の方を」
「うん」
再上昇していくカトリーヌさんを見送って、花壇の横の方に兎さんを誘導していく。
これだけ目立ってる状況で突っ込んで来る通行人なんて居ないだろうけど、一応端の方に居た方が安全だろう。
「あ、でもちょっと……」
ん?
なんか兎さん、一人で隠密さんの方に走って行ったぞ。
服ならもう綺麗に畳まれて、これまたいつの間にか用意されてる台の上に置かれてるけど。
「ちょっと近くから見上げてみても良いですかー?」
……あぁ、でっかい相手をよく見てみようって事ね。
まぁ隠密さんなら近づくのが私だったとしても問題無いだろうけど、さっきの発言の後だと若干不審者感が有るよね。
っていうか怖がりもせずに普通に近寄って行ってるけど、みんな慣れるの早いな。
まぁあの状態だと痛みも怪我も無いって知ってるからってのも有るのか。
「おー…… 迫力有るなぁ……」
隠密さんを見上げながら、すぐ近くをぐるっと一周してる。
あ、二人目が光になった。
「ひんやり……」
……って、目を離してる間に何やってんだあの人。
地面に置かれた隠密さんの右膝に、正面からぺっとりくっついてるんだけど。
そりゃ素肌だし割と冷たい部位ではあるだろうけど、初対面との距離感おかしく……いやおかしい人ばっかり会ってる気もするな……
隠密さんも困って……いや、別にそうでもなさそうだな。
お好きにどうぞって感じっぽい。
「これが私の靴かー」
隠密さんから離れて感謝なのか謝罪なのか判らないお辞儀をしてから、揃えて置かれた自分の靴に向かって走って行く兎さん。
ロングブーツって呼ぶほど長くはないけど今の身長よりは十分に高いから、見上げる感じになってるな。
初めての経験とはいえ、好奇心旺盛過ぎないか。
「何やってんの、あの子は……」
「あ、どうも」
カトリーヌさんに連れられて降りてきて早々、完全に呆れた声を上げるお姉さん。
まぁそう言うしかないよね。
「おーい。危ないし迷惑だからさっさと戻って来なー」
「待って待ってー。ちょっと気になっちゃった」
何が……って汚れか何かかな?
初期装備らしいナイフを抜いて、自分の靴の表面や溝をカリカリし始めた。
普通のサイズだと見えない様なのは、別に良いんじゃなかろうか。
「ちょっと見てきますね」
「あ、お願い出来る?」
隣のお姉さんに一応断ってから、ごそごそしてる兎さんの所へ。
あそこで作業してたら、服を片付ける隠密さんもやりづらいだろうし回収してこよう。
いや、別にその位は苦にしないだろうけど。
甲の部分によじ登ってから緩めた靴紐を足場にブーツを登って行き、やや高所で手入れをしている兎さん。
「危ないですよ?」
「だってさー」
だってさーって言われても、別にそんなに汚れてないと思うよ。
「よっ、と、もうちょい……」
「いやいや、落ちますって」
ゆるゆるな靴紐を踏んだ状態で、奥の方に手を伸ばすのはやめた方が良いと思う。
「だいじょぅぁーっ!?」
……言ったそばから、大丈夫っていう暇もなく足を滑らせて自分のブーツの中に転落していった。
ナイフだけ外に飛んで行ったけど、まぁそれは後で拾えば良いだろう。
というか兎さん落ちていっちゃったけど、この中に救助に行くのはちょっと嫌だぞ。
別に臭うとか汚れてるとか、そういう事が無いってのは解ってても、なんかちょっとね。
「ん? あぁ、うん」
近くで眺めてたシェラの離れてーって合図に従い、ちょっと上空へ。
……おおう。
えらく楽しそうな顔で、兎さん入りの靴をどかーんと体当たりで倒していった。
もうちょっと優しくした方が……って一瞬思ったけど、まぁ自業自得だし別に良いか。
なんか中からへぶって感じの声が聞こえたけど、多分気のせいだろう。




