1329:軽快に跳ぼう。
さてこの状況、どうしたものか。
正直なところ、このままスィーっとフェードアウトしてしまいたいよ。
別に踏むって行為だけなら何も難しくないんだけどさ。
普通に役場の入り口の横の方でやってるから、いつも通り見物人が居るんだよね。
遊んでないでお仕事とか訓練とかやっててくれないものだろうか。
……パネル弄ってる人も居るし、多分おねーさまの時点で掲示板は賑わっちゃってるんだろうなぁ。
勘弁してくれとは思うけど、まぁそれも今更だ。
でもこのまま放っとくのも流石に可哀想……だけど、こういう人達にしてみれば、それはそれでアリなのか?
まぁうん、悪評というか「また流されて変な事やってる」ってのが広まるのはいつもの事だし、諦めるかぁ……
「あー、うん…… それじゃ、じっとしててね」
「はい!」
……人が喜んでくれることをやるっていうのは良い事なんだろうけどさ。
これは多分、ちょっと違うよね。
「というかカトリーヌさんは、なんでそんな笑顔なの」
「これは『やはり白雪さんはとてもお優しい方ですわ』という顔ですわね」
やかましいわって感じの答えが返ってきた。
まぁ普通に考えたら説得して立ってもらうよねとは思うけどさ。
っていうかなんでいつも私なんだ。
カトリーヌさんでも良いじゃないか。
そっちの方が多分許容範囲広いし、文句言わずに色々やってくれると思うんだよ。
まぁそんな事を考えてても仕方ないので、諦めてノーラちゃんの後頭部にぷにっと降り立つ。
馬耳が横に有るからか、微妙にもふっとした感触が髪の中に混ざってるな。
しかしこれ、着地したは良いものの、ここからどうすれば良いんだろうか。
……いや、乗っただけで十分っぽいな。
声こそ出してないけど、なんか下の方からふすーっふすーって音が聞こえてくるし。
なんでこう、一癖も二癖もある人ばっかり寄って来るんだ。
口に出したら絶対にお前が言うなって言われるだろうから黙っておくけどさ。
まぁ長居したい状況じゃないし、さっさと済ませてしまうとしよう。
流石にげしげしと踏みつけるのは……望んでそうだけど気が引けるので、その場で軽く足踏みしてからぴょんっと飛び立って離脱。
……両足で踏み切ってる時点で大差ない気がするけど、まぁ気にしないでおこう。
「ほぁー……」
下の方から幸せそうなため息が聞こえてきた。
うん、喜んでくれたならまぁ……良いとはあんまり言えないけど仕方ない。
ん?
遊んでたシェラがぱっぱかぱっぱか走って来て、横を向いたノーラちゃんに近付いていく。
「んぅ? する、くれる、です? ねがう、です。うれしい、です」
顔の前でしゅっしゅっと素振りをするシェラを見て、心底嬉しそうな顔になるノーラちゃん。
……あぁ、お手伝いしにきてくれたのね。
出来れば最初から代わってほしかったけどね。
おお、遠慮なく後頭部に飛び乗った……
私と違って蹄の硬さが有るし体重も私に比べれば十分だから、今乗られてるんだってはっきり解るだろうな。
というか素振りしたのにペチペチしたりはしないんだな。
別に良いけど。
あ、頭の上から背中に向かって走り出し……て、のけ反った状態の背中を駆け上がり、お尻を蹴って大ジャンプ。
なに人の身体をジャンプ台にしてるんだ、あの子は。
……でも当のノーラちゃんがその雑な扱いにすっごい満足げだから、あれはあれで正解なんだろうな。
別にシェラのサイズなら、身体の上でバタバタしても痛くは無いだろうし。
いや、まぁ痛くても良いんだろうけどさ。




